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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学三年生(全26話)
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高熱の原因は?

 さくらがロビーに着いた時には既に顧問が待機しており、まばらに帰ってきた部員の点呼を行っていた。その中には昨夜と有季もいる。


「先生!」

「神海さんも来たわね。そういえば高岡さん知らない? まだ来てないのだけど」


 息を切らせながら走ってきたさくらに気づき、顧問は点呼表に丸をつける。だがさくらはそれどころではない。


「あ、あの、先輩が。彩果先輩が部屋で倒れてるんです。奈子さんが介抱してるんですけど」

「未名河さんが? わかったわ、すぐ行く」


 顧問は副部長に点呼表を渡し、役職を伝言を残すとさくらと一緒に部屋へと向かった。


「奈子さん、連れてきました」


 さくらと顧問が部屋に入ってきた時には既に布団が敷かれており、息の荒い彩果が寝かされていた。奈子の対処が早く。先ほどまでの消沈していた奈子を見ていたさくらはその対処の早さに驚きを隠せなかった。


「高岡さん、容態は?」

「今熱を測ってみました」


 所持している体温計を顧問に見せる。彩果の体温は三十九度に届きそうだった。


「救急車を呼んだ方がいいんじゃ」

「ここの近くに大型の病院はないの。全部診療所だから。救急車は呼べば来るだろうけど付き添える人もいないわ。とにかくまずは頭を冷やしましょう」


 顧問は救急箱から熱冷ましのシートを取り出し、寝ている彩果の額に貼りつけた。その後さくらと奈子の方に向き直る。


「高岡さんはここにいてもらっていいかしら。点呼が済んだらまた来るから。もし風邪ならうつると心配だし神海さんは一緒にロビーに行きましょう」

「え、あ、はい」


 顧問に指示され、さくらは後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。

 顧問は戻るとすぐに待機している部員の点呼をこなしていたが、浮かない顔で待っているさくらの元へは昨夜と有季が寄ってきた。


「さくら、何かあったのか」

「彩果先輩が熱出して倒れたって。お昼の時は元気だったのに」


 心配と無理をさせたという罪悪感でさくらの表情は曇る。その様子を見て昨夜は何かを考えるような素振りを見せる。


「あまり気にかけない方がいいよ。高岡先輩もいるんだから」


 有季が見かねて励ましにかかる。それでもさくらの不安は拭えない。


「加治」


 さくらを気にかける有季を手招きで呼ぶ。寄ってきた有季に耳打ちするように顔を寄せる。


「お前、何か感じないか。呪いとかそういうの」


 昨夜が何を意図しているのか瞬時に理解した有季だが、否定の意を込めたように首を振った。


「僕もそこまで詳しくはないからわからないよ。ただ、先輩が倒れた原因が風邪だけって可能性は限りなく低いだろうね」


 昨夜も同様のことを考えていた。だが前世が術者だった有季はともかく昨夜はほとんど呪いに関しての知識はない。感ずることもできないため有季に頼ったが、彼もわからないと言う。


「未名河先輩に近づいて直接触れられればわかるかもしれないけどまず近づくところから難しいよ」


 一応部屋への行き来は自由だが、寝込んでいる彩果に近づくにはどうしても言い訳が必要だ。さくらが説明してくれればありがたいが、彼女は元来嘘を吐くのが下手だ。


「それに、わかったとしても僕が解呪までできるとは限らない。僕ができるのはあくまで有理がさくらこ様を利用するために使っていた術だけだ」

「つまり成り行きを見ていろと」

「それが妥当だよ。それに高岡先輩が言ってただろう」


 奈子は彩果に念を押すように外に出るなと忠告していた。実際に外に出ていなかった昨日までは彩果に異変が起こったことはない。


「精露山か」

「その可能性が高いね。そしてあの精露山にまつわるものと言えば神隠しだ」

「だが何故先輩が? さくらの方が標的としては有効なはずだ」

「僕にもわからないよ。ただ今日の喧嘩も含めて確実にあの二人は何か隠している。それがさくらちゃんに被害を及ぼす可能性は高いよ」


 昨夜は腕組みをして物思いに耽る。さくらは帰ってきた弥生と合流し、話につきあっている。


「さくらに危害を加えるのなら先輩でも容赦はしない」

「……僕も協力するけど、やりすぎは良くないよ。先輩に何かあって一番悲しむのはさくらちゃんなんだから」


 既に彩果に敵意を見せている昨夜に対し、有季は呆れが混じった声音で宥めた。

 点呼が一通り終わり、顧問が伝達を始める。


「しおりに書いてある通り、今日と明日の午前までは和室使用ができないので各自自由時間です。ただし、外に出る場合は必ず私に一言言ってください。点呼も自分達で判断して戻ってくること。一人で外に出ることは原則として禁止です。まあ今日見た限りそういう人はいなさそうですけど」


 点呼が終わると夕食の時間だ。夕食が終われば本来は稽古だが、今日は自由時間が長い。とはいっても日が落ちてから外に出る部員はおらず、大体がその時間に入浴を終わらせ、宿題に取りかかる。


「私は少し用があるので席を外します。副部長の指示に従ってこれからは行動してください。解散」


 伝達事項だけ終わらせ、部員が揃って食堂に行くのを見計らってから顧問は奈子達のいる部屋へと向かっていった。

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