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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学三年生(全26話)
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喧嘩?

 最終日にも土産を買う時間があるということなのでさくらはとりあえず自分が欲しいものと同室の弥生と食べられるようなお菓子を買って店を後にした。


「お小遣い貯めておいてよかった。後でみんなで食べよう」

「さくらちゃんって意外とジャンクフード食べるんだ」

「お姉さまが買ってくるからちょこちょこつまんでる」


 さくらも一般女子に負けず劣らず限定という言葉に弱い。山梨限定のお菓子をいくつも買ったせいで袋が破けそうだ。有季が分けて荷物持ちをしている。


「私はこれで十分だけど他に行きたいところありますか先輩」

「ううん。私は特にないかな」


 否定する彩果に頷いてさくらは帰宅することにした。後ろを昨夜と有季がついていく。


「それで? 何か進展はあった?」


 前の二人に聞こえないくらいの小声で有季は黙っている昨夜に聞く。昨夜はすぐに有季の意図を理解し、首を振った。


「やっぱり。あの先輩に真実を言わせる人なんていないんじゃないか。さくらちゃんでも無理だと思うよ」

「ああ。さくらに害を出さないから関係ないと言われた。確かにあの先輩がさくらに危害を加えることはないだろうが」


 顔に出さない分気づかれなかったが、有季もそれなりに彩果の異変について気づいていた。それと同時に奈子との関係性を疑ったのも有季だ。三日目の今日、異変に気づかないさくらに代わって直接話をした昨夜だが、彩果は物ともせず話をはぐらかした。


「一度断られたら多分頑として話さないだろうね。そういう性格だろうから」


 昨夜は去年の騒動を思い出す。当時、陰謀を謀ろうとした有季に気づいたのもさくらが操られていることに気づいたのも、一般人であるにも関わらず彩果が一番早かった。だが彼女は恐らく昨夜達を信用していない。もしかするとさくらにも本性を隠している可能性が高い。そんな彩果が気軽に心の内を話すわけがないだろう。


「危害を加えなければいいんじゃないか? 奈子さんは不憫だけどそれは僕達みたいな赤の他人が干渉していい問題ではないだろう」

「それはそうだが」


 昨夜は彩果と話しながら楽しそうに笑っているさくらを見ながら言い淀む。


「さくらが悲しむことだけはやめてほしいだけだ」


 昨夜の返答に驚いたように数回瞬きした有季は仕方なさそうに眉を寄せて口角を上げた。その間にも昨夜はさっさと歩いていく。


(過保護なのか、それとも……)




 さくら達が旅館に着いたのは十五時頃だった。まだ点呼の時刻まで二時間ある。今日は別の団体が和室を使っているので練習もできない。何か暇潰しをしようかとさくら達三人が話し合っていると血相を変えた奈子がロビーまで走ってきた。


「あ、奈子さん」

「彩果!」


 さくら達には目もくれず奈子は彩果を叫ぶように呼び、手首を強く掴んだ。スマホに目を落としていた奈子の存在に気づかなかった彩果は眼前に奈子がいることに心底驚いたような反応を見せた。


「奈子、さん!?」


 不自然に奈子に「さん」をつけた彩果に昨夜はすぐ反応したが、さくらは奈子の血相を変えた叫びに彩果同様驚いたような表情を見せた。


「どこ行ってたの! あれほど外には出るなって言ったじゃない!」

「ち、ちょっと落ち着いてください。ここロビー……」

「体は大丈夫なの!? やっぱりすぐに帰らせて」

「一回落ち着いてって。そもそも出かけても大して心配いらないから」

「心配しないわけないでしょ! またいつ襲われるかわからないのよ。それにあなたは奴隷紋を……」


 奈子が声を張り上げた途端彩果が容赦なく奈子の頬を叩いた。先ほどまでの笑顔が嘘のように鬼のように目を吊り上げて奈子に怒りを露わにした。その豹変さに奈子はもちろんのこと、後ろで成り行きを見ていたさくらも肩を飛び上がらせた。


「あや……」

「それは言うなって言ったでしょ! 何度も何度もしつこいのよ! もう放っておいて!」


 奈子が何か言う前に彩果が聞いたことのない怒声を上げ、そのまま自室へと戻ってしまった。慌ててさくらが彩果を追いかけようとしたが、昨夜に遮られる。


「相澤君?」

「今はそっとしておけ。あの人に何か言っても今は癪に触るだけだ。それより」


 さくらの手首から手を離した昨夜の視線を辿る。そこには呆然と顔を俯かせた奈子がいた。横から見ると彩果に叩かれた頬が赤く腫れている。


「奈子さん、大丈夫ですか」


 さくらに声をかけられた奈子は今気づいたという風にさくらの方を振り向いた。その後無理に作ったような笑みを向けてくる。


「ああ、ごめんなさい。ちょっと喧嘩しちゃったの。大丈夫よ。たまにあるから」


 そのまま戻ろうとする奈子だが部屋には彩果がいることに気づき、迷ったように歩みを止めた。


「そ、そうだ。奈子さん、私の部屋に来ますか? そのほっぺも冷やした方がいいですし。そうしましょう。じゃあね二人とも、また後で」


 戸惑う奈子の背中を押してさくらは自分の部屋に誘導した。

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