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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学三年生(全26話)
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曲決め

 民宿にある和室は広くもなく狭くもない。

 恐らく地域のイベントなどで使用するために作られたのだろう。

 部員だけが入ればまだ余裕があるが、琴など大きめな楽器が並ぶと圧迫感がある。


「部屋で練習とかはダメですかね」

「他の人も泊まってるみたいだし、この人数が各部屋で楽器鳴らしてたら迷惑なんじゃないかな」


 この和室も防音というわけではないが、各部屋で演奏されるよりかは一般人にも迷惑ではないだろう。

 部員達もまだ練習不足な演奏を他の宿泊している人に聞かせるのはまだ恥ずかしい。

 狭いが貸してもらっているのだから文句は言えない。


「それではこれから各自練習とお稽古になります。楽器の準備が終わった人から呼ぶので前に来てください。時間が限られているため、迅速な行動をお願いします」


 顧問の指示により、部員が指定楽器ごとに分かれて準備と練習をし始めた。

 大体どこの楽器にも上級生が1人か2人ついているので、わざわざ講師が見回りしなくても調弦、自主練習共に心配することはない。

 さくらも一応上級生なので弥生のような中学2年生や新しく入った中学1年生に調弦の仕方や弾き方を教える。

 ただ人見知りのせいで教えることはできても言葉が支離滅裂になる。

 そこは弥生にカバーしてもらった。


「後輩に通訳してもらう私って」

「人見知りは仕方ないですよ。それに私も通訳しながら自分がわからなかったところを何度も復習できるので逆にありがたいですよ」


 まだ入って数ヵ月しか経っていない中学1年生にもさくらがどういう性格か随分理解しているようで、特に誰もさくらの人見知りには言及しない。

 まずさくらの名字である「神海」は地域に住んでいる人間であれば誰でも知っている名家なので少し遠巻きにされている気にもなる。


「あ、さくら先輩呼ばれてますよ」

「本当? じゃあちょっと行ってくるね」


 三味線を使用しているのはさくら含め高校2年生が1人と後は全員後輩だ。

 早く稽古を終わらせて次に回した方がさくらとしても手間が省ける。


「よろしくお願いします先生」

「お願いします。神海さんはそうね。今回の合宿に栗山さんと石川さんがいないから好きな曲を選ぶのも難しいわね」


 文化祭では学年ごとに分かれて体育館で発表するという決まりにしている。

 中学1年生は不安もあるだろうから一つ上の2年生と合同でやるが、3年生からは学年で集まり自分たちの進度に合わせて自由に曲を選ぶことができる。

 さくらもこの合宿で自由曲を選ぶつもりだったが。


「第一旋律を担当するのが琴を担当している栗山さんと三味線の神海さん。第二が残りの3人だから。せめて栗山さんはいてほしかったんだけど」

「すみません。よく言い聞かせておきます」


 さくらが悪いわけではないのだが、責められているような気がするので一応謝罪しておく。


(帰ったらあの2人に慰謝料でも請求しようかしら)


 ストレスが溜まっているさくらは心の中で2人に悪態を吐いた。

 それも致し方ない。

 折角完全に集中をして練習できるかと思えば2人がいなければ全く先に進めない状態になってしまったのだ。


「どうしますか。確かに2人がいなければ合奏を決めることはできませんがそれだと結局中3は文化祭まで誰も練習できなくなりますよ」

「もちろんそんな意味のないことをするはずないでしょう。曲は今合宿にいる3人で決めていいし、今は通話でどうとでもなるのだから明日までに5人で決めるでもいいわ」


 和楽部の講師は演奏のことになると厳しいが、ある程度部員の自由は保証してくれる。

 中学2年までは誘導してもらえるが、今は手助けをされる必要もない。

 今回の合宿では5人中3人が参加しているわけだから意見も交わせるだろう。


「じゃあ今日の自由時間に集まって話し合おうと思います。自主練習は」

「今日は休んでいいことにします。すぐ決まるのなら練習してもいいけど今回は真面目に曲を決めてほしいので焦らなくていいですから」

「わかりました」


 伝達事項が済むとさくらは稽古に励んだ。

 母から教わっていることと被っていることも多いが、知らなかったことも少なくないので、違う講師に見てもらうというのも良い経験になるのかもしれない。

 実際さくらは母のスパルタ教育を毎日のように浴びているため、ちょっとのことでは動じない。


「はい。じゃあ今日はここまでにしましょうかね」

「ご指導ありがとうございました」


 普段は十分程かけて行う稽古だが、合宿は時間がないため、とにかく講師が新しい弾き方だけを教えて復習させる。

 わからないところは後で教え直すという計画を立てている。

 さくらは物足りない気持ちを抱えながらも同じ楽器で練習をしているところに戻った。

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