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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学一年生(全17話)
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お披露目会

 話を聞き終わった後、彩果は考え込むような仕草を見せた。


「確かにわかっていることは少ないけど不思議ね。壁から琴が出てきたり音の違いが明確だったり」

「ていうかただ琴があるだけでも不思議なのに神海みたいな名門から出るなんて」

「さくらの家は和楽器をどこよりも大切にしてるもんね」


 3人が口々にそう言う。

 不思議そうにしているがさくらの話をしっかり聞いて信じているところ、この3人は優しいのだろう。


「話だけじゃ何とも言いようがないね。実物を見てみないとどうしようもなくない?」


 琴を見に行くべきか、それともこの話題はここで終わらせておくべきか。

 4人で悩んでいると、不意に頭上から声が聞こえた。


「そこまで話したのなら行ってしまいましょうよ。神海さんの家に」


 さくらの後ろに立っていたのは眼鏡をかけた少しきつめの顔つきをした年上の女生徒がいた。


「奈子さん、お久しぶりです」

「久しぶり。なんだか楽しそうな話をしてたからそばで聞いてたわ」


 顔つきには似合わず優しそうな声音で4人に話しかけてくる。

 彼女は高岡(たかおか)奈子(なこ)。高校1年生で和楽部の次期部長候補である。そのきつい顔から誤解されがちだが、奈子自身は優しい姉のような存在なのだ。


「行ってしまいましょうよって。奈子さん信じてるんですか今の話」

「信じてないんですか彩果先輩!?」

「いや信じてるけど」


 軽くショックを受けたさくらに彩果は訂正する。

 だが気持ちはわからなくない。


「オカルトを信じるわけじゃないけど。和楽部として古びた琴があるのは興味が湧かないかしら」

「あ、そっち方面」


 オカルトや心霊には一切興味のない奈子が賛成したために驚いていたが、和楽方面の興味だったら納得が行く。


「ね、神海さん。部活帰りにお邪魔してもいい? あまり長居はしないから」

「いいと思いますけど」


 部活が始まる少し前に予定を決めたため、さくらは急いで使用人に連絡を入れた。




 そこから部活が終わるまでの2時間は何事もなく済んだ。


「それじゃあ行きましょうか」

「おー」


 全員の準備が終わったところで奈子が声をかけてきた。

 もう17時になるが、真夏ということで明るい。

 少し神海家に遊びに行ったところで咎まれはしないだろう。


「そのお琴ってどこにあるの?」

「私の部屋の押し入れです。楽器部屋に置いとくと処分されちゃうので」


 家に着くと使用人が何か手伝おうとついてきたが遠慮しておいた。

 さくらは元々天然な性格だから少し気味の悪い行動をとっても完全に嫌われはしないが、友達や先輩にまで同じことをすれば黙ってはいないだろう。


「どうぞ。お琴横に倒すので手前側にいてください」


 4人を座らせてさくらは荷物を机に置くと押し入れの中にある琴を慎重に取り出した。

 古いから少しでも乱暴に取り扱えばすぐに壊れてしまうと思っているのだ。


「見た目は普通の琴ね。糸は色あせてるし木材も白くなってるけどそれを抜けば全く最近のものと変わりはないわ」


 奈子が琴を観察して言う。

 最初から弾いていたさくらだったが改めて見るとホコリを被っていて見た目が汚かったので手ぬぐいで表面を拭いていた。


「ねえ妖精ちゃん。これ弾いてみてもいい? ちゃんと調弦もされてあるんだよね」

「いいですけどいつ壊れてもおかしくないくらい年季入ってるので丁寧に扱ってくださいね」

「わかってるって」


 彩果は自分の琴専用の爪を嵌めて早速弾こうとした。

 弦を1つ爪で押した瞬間。


「いった!」

「あ、先輩大切にしてって言ったのに」

「私の心配して!」


 琴柱が弦から外れ、彩果の手に思いきり当たった。

 反射的に彩果はすぐ琴から手を離したが、当たった部分はミミズ腫れになってしまっている。


「あらら。神海さん、あなたがやってみなさい。そっちの方が見てる方も安心だし」

「はい」


 大分痛かったのかまだ彩果がミミズ腫れをさすっている。

 その隙にさくらは琴柱を直して弾く準備を始めた。


「それじゃあ早速。彩果先輩いいですか」

「ふーふー。あ、いいよ」


 冷ましたところでどうにもならないだろうが息を吹きかけている彩果を呼び戻して琴に向かう。

 4人が自然と聞く体勢になったのでさくらも簡単に弾いてみた。


「ふぅ。どうですか」


 満足そうにさくらが弾き終わって顔を上げる。


「妖精ちゃん。本当に頭平気なのよね」

「へ!?」


 4人が揃って微妙な顔をしていた。

 彩果に言われたことは使用人に言われたこととほとんど一緒だった。


「うそぉ。私1人だけなの? なんで?」

「なんでと言われてもね。気味の悪い音に違いはないし」


 同い年の2人ならと思って期待を持ちながら見るが、その様子もさくらの思っていたものとは違う。

 共感を持ってくれる人が1人もいないことで、さくらは傷ついたような表情を見せる。


「ごめんね妖精ちゃん。でも不思議なことはわかったよ。妖精ちゃんは頭別におかしくないもんね」


 彩果がフォローしてくれているようだが慰めにはなっていなかった。

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