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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学二年生(全19話)
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誘導

 さくらはショックを受けながら楽器に戻った。

 その脳内には彩果のきつい言葉が残っている。


「さくらちゃん、大丈夫?」

「……うん」

「先輩のことは気にしなくていいよ。悪いのは先輩なんだから」


 有季が慰めようとするがさくらにはあまり届いていない。

 1年の頃はあんなに優しかった彩果が今日は意地の悪い先輩にしか見えなかった。

 何故あそこまで酷い言われ方をされなければならないのかわからない。


「ごめん有季君。ちょっと1人にして」

「でも」

「いいから」


 さくらはこれ以上話すこともないというように三味線を持ったまま楽譜に目を通してしまった。

 仕方ないと言う風に有季が先ほどの彩果の方に視線を移すと昨夜と何かを話している。


(あいつ。そうか、手を組んだのか)


 有季は悔しそうに唇を噛んだ。

 自分に刃向かう敵は昨夜だけだと思っていた。

 それ以外は力すらない人間ばかりだと。

 だがそれは大きな間違いだった。


(あの先輩は普通の人間だ。それは間違いない。だけどおかしい。さくらちゃんに力を加えたはずなのにあの人には効いていない)


 何はともあれ自分の計画が崩れた。

 まだ間に合うとしても予想外なことが起きてしまった。

 折角洗脳していたさくらも彩果に解かれてしまった。

 昨夜よりも先に彩果をどうにか始末しなくては計画が崩れてしまう。


(交通事故に見せかけてあの人も公演に出さなければ)


 有季は標的を彩果に変えて作戦を練り始めた。

 結果的に有季の作戦は成功には終わらなかった。

 だが失敗にもなっていない。

 結局その後さくらに接触する人間は1人もおらず、有季は彼女をまた洗脳状態にできた。

 だが問題は彩果である。

 有季が何とか彩果に接触しようと思考を巡らせていたが、彼女も中々多忙であり術をかけられるだけの時間がなかった。


(まあいい。要は本番で失敗しなければいい)


 さくらは今有季の手中にある。

 昨夜も自分の術を遠くから解く程強くもない。

 このまま本番までさくらを他人に近づかせなければ自分の計画は成功だ。

 今日は公演前日。つまり上級生に発表を見せる日だ。

 有季と欠席となったさくらは裏方にいる。

 本番に出る者は皆忙しく楽器を準備している。


(残念だったねさくらちゃん。でも明日、出られるよ。そうすれば君は思う存分演奏ができる。人を魅了することができるほど)


 虚ろな目をしているさくらを見下ろして有季は1人ほくそ笑んだ。

 そんな有季の肩を後ろから叩く者がいた。

 振り返ると彩果がいる。


「先輩?」

「ちょっとこっち来て」


 有無を言わさぬようにさくらから離すと彩果は有季の体を押して荷物持ちを頼んだ。


「ちょ、ちょっと何するんですか」

「何って雑用。入部した時に説明したでしょ。はいこれあっちに持ってって」


 更に反論しようとした有季だが、さっさと彩果は次の指示に動いてしまい結局さくらから離れて仕事をすることになってしまった。


「ちっ。こんなことしてる間に術が解ける」

「術が解けたらやっぱり嫌なんだ」

「当たり前……」


 ハッとして声のした方向を見ると彩果が楽しそうに笑いながら有季を見上げていた。

 その手には今から弾く予定の楽器がある。


「そろそろ本番だから。裏方に戻ってもいいよ。あ、部室に戻っててもいいよ。妖精ちゃんは先に行かせたから」

「え」


 驚いてさくらが立っていた方を見るが既にそこには誰もいない。

 急いで部室に帰ろうとする有季を更に彩果は追い詰める。


「イケメン君も部室に行かせたから。頑張ってね。可哀想な姫様を誑かした術者様」


 彩果が有季の耳元で冷たく囁くと、すぐに舞台の方に向かってしまった。

 有季はすぐに裏方から部室へと走っていった。




「さくらちゃん!」


 静かな部室の中で有季の声が響く。

 当たり前だがそこには1人も部員がいない。

 有季が上履きを脱いで部屋の中央まで足を運ぶ。

 目で周りを観察しながら手に呪符を持つ。

 そんな有季の背後から竹刀を振りかぶる音が聞こえた。

 有季は間一髪で受け止める。


「やっぱりお前か。未来」

「ようやく本性を現したな。現世でこそお前を倒す」


 呪符で有季に飛ばされた昨夜は体勢を立て直しながら竹刀を構え直した。


「さくらちゃんをどこにやった?」

「誰が教えるか」


 昨夜は間髪入れずに正面から竹刀を下から振り上げる。

 有季は新しく呪符を作ると一気に昨夜の方向に飛ばした。

 昨夜は何とか竹刀で受け止めるが衝撃で後ろに下がってしまう。


「付け焼刃の竹刀で僕に勝てると思ってるわけ? いいから大人しくさくらちゃんの場所を教えなよ」

「そうやってまたさくらに罪を犯させるつもりか」


 千年前。

 さくらこはその琴で屋敷の人間を皆殺しにしてしまった。

 そして今、有季は同じことをさくらにさせようとしている。


「殺そうとは思っていないよ。昔と違って今はそんな隙あるわけない。でも彼女の演奏でこの学校を洗脳することはできるだろう」

「なんだと」


 有季は昨夜に向かって暗い笑みを浮かべた


「僕はさくらちゃんの……いいや、さくらこの力を使ってこの学校の権力を手に入れたいんだよ」

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