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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学二年生(全19話)
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部活見学

 さくらは有季を連れて職員室にいる顧問の机まで向かった。

 顧問は何も聞かされていないのでさくらが来たことに珍しがっていた。


「どうしたの神海さん。あなたが来るなんて珍しい。いつもは栗山さんか石川さんじゃない」

「あ、あはは。それ全部貧血で早退の伝言ですよね」


 部活や授業では、無断で帰ることは学校自体が禁止にしている。そのためさくらが保健室からそのまま帰宅する際には大体未奈と泉が教師に報告する決まりになっている。さくらはつくづく友達2人に申し訳ない気持ちを覚えながら有季に話題を移した。


「彼が今日部活見学をしたいそうなんです。私と同じクラスの加治君です」

「そう。でも今日でいいのかしら。公演のリハーサルもあるから多分試しに弾かせてあげることはできないと思うんだけど」


 有季はそれも承知の上だと言うように頷いてからそれでも見学をしたいと申し出た。有季がもし入部したいと言うのならと顧問は机から入部届の原本を出し1枚印刷してから有季に渡した。


「いらなかったら次会った時に返してね。今日は1時間経ったくらいで部室に行くからそう伝えておいて」

「わかりました。それじゃあ失礼します」


 職員室を出た後、一番近い階段で5階まで上がって部室を目指した。


「つ、着いたよ。こ、ここ、が、部室だから」

「さくらちゃん。わかったからちょっと息整えようか」


 有季も流石に5階分上がるだけで苦しそうに息をするさくらには驚いたようで部室の方を指す彼女の背中を擦る。

 さくらが落ち着いたのを見届けてから有季は部室まで案内してもらった。


「こんにちはー」

「お邪魔します」


 さくらが戸を開けて有季を招き入れると一斉に視線が集まった。

 いや、未奈と泉は知っているので「来た来た」と言うような表情をしながら素知らぬふりをしていた。


「こ、こんにちは」

「こんにちは神海さん。彼は?」


 動じない奈子がさくらの隣にいる有季を見ながら声をかけた。


「えっと、一応入部希望ですけど今日は見学です」

「そう。はじめまして。副部長の高岡奈子です。新入生の公演があるから中々忙しくてつまらないかもしれないけど見ていってね」


 奈子に笑顔で招き入れてもらったので有季も安心したように笑って中に入っていった。

 それを見届けてからさくらも入るがその前に先輩女子に囲まれてしまった。


「神海さん。あの子って最近転校してきた子よね」

「は、はい。そうですけど何か」

「なんで相澤君といい彼といいここに入部してくるの」

「さ、さあ。偶然では」

「こんな地味な部活にイケメンが偶然入るわけないでしょ! あなたが裏で手を回してるんじゃないの?」

「そ、そんなこと」

「お嬢様だし親のコネ使えば引く手あまたでしょ」


 意地の悪い言い方で責められる。

 さくらが戸惑っていると先輩の肩に手を置く人物が1人。


「あ、先生」


 和楽を教えてくれている講師である。

 講師は先輩の方を向きながらにこやかに手の力を強めた。


「あなた達、ここの部活には向いていないようね」

「はあ? なんでですか。むしろこのお嬢様の方が」

「さっきここを地味な部活と言ったわね」


 当たり前だとでも言うように先輩が反論すると講師は呆れたように一息吐いた。


「地味でもここはれっきとした日本の伝統です。それを否定するような方に指導するほど私は優しくないので。今日は帰って頭を冷やしなさい。さあ神海さん。あなたには大事なパートを任せているのだから早く準備をしなさい」


 気まずそうに声を詰まらせる先輩とその集団をその場に放置して講師はさくらを招いてすぐに準備するよう指示した。


「ナイス先生」


 さくらの側に寄ってきた彩果がニヤニヤしながら文句を言いながら帰っていった女子集団を貶していた。

 だがさくらは少々申し訳なかった。


「どうしよう。私のせいで空気が悪く」

「妖精ちゃんのせいじゃないでしょ。それにあの人達元々素行悪かったからこの件がなくても何かイチャモンつけて退部する気だったよ」


 彩果の予想は経験上よく当たる。

 恐らくこの退部の件も近いうちに実行されるだろう。


「でも公演は」

「あの子達みんな特別重要なパートでもないし減ったとしてもどこかのパートに1人か2人だから。欠席と見れば痛手は全然ないよ」


 彩果に励まされてさくらは罪悪感に押し潰されていたのが少し和らいだ。

 元々先ほどの女子集団以外この部活にはさくらの味方か日和見主義の部員かなので責める人間はこれ以上いない。


「それより妖精ちゃん。さっきも先生言ってたけど私とのソロパート入れたから。センターね」

「地獄ですか」


 彩果は中学生の代表なので予想していたが、平和に公演を終わらせたかったさくらはこれまで以上に絶望した顔を彩果に向けた。


「ところで相澤君は?」

「あら。結局気になってるの」

「違います。私より出たのが早いのにまだいないのかなと思って」

「ああ。私早めに来たけどまだ見かけてないな。未奈ちゃん達は知ってる?」

「いいえ」


 未奈と泉も居場所を知らないという。

 まさか無断欠席だろうか。

 見た目に比べて真面目だと思っていたが結局見た目も中身も不良だったのだろうか。


「まあいいじゃない。さくらちゃんは彼がいなくて別に困ってないでしょ」

「ええもちろんです」


 意気揚々と頷くさくらに渇いた笑いを出しながら彩果も自分の準備に取り掛かった。

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