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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学二年生(全19話)
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入部希望

 帰り道も有季と一緒だった。

 これに関しては通学路が一緒だからとやかく言われることもなかった。

 道中有季がさくらに提案してきた。


「部活に入りたい?」

「うん。やっぱり部活に入った方が交流もたくさんできるから。先輩と仲良くしておくとテストとかも便利でしょ」


 人見知りのさくらにとって部活は交流を深めるためではなく単に和楽に少しでも多く触れていたいからなのだが。

 そこが有季との決定的な違いだろう。


「いいんじゃない? 何に入るの? スポーツ系?」

「和楽部に入ろうかなって思ってるんだけど」

「え」


 有季がなんの躊躇いもなく部活名を言う。

 だがさくらは信じられないとでも言うような眼差しを向ける。


「どうしたのさくらちゃん。一応僕も神海家の血筋だからちょっとは触れてみようかなと思ったんだけど」

「あ、ああそういうことなの。で、でも有季君の好きなことをすればいいんじゃない? 何も血筋で部活決めなくても」

「別に強要されてないよ。僕がやりたいと思っただけなんだ。それにさくらちゃんも入ってるんでしょ」


 教えた覚えはないのだが何故知っているのか。

 そう聞いたらさくらの性格的に学校でもどうせ和楽に触れていたいと思ってだろうからと予想したらしい。


「よ、よくわかったね」

「いや、多分さくらちゃんの実家を知っている人だったら誰でも想像つくよ。逆にこれでさくらちゃんが軽音部とかに入ってたらみんな引くよ」

「引くの!?」


 密かに憧れていたものだが有季にこう言われてしまっては仕方がない。入る気もなかったがギターやピアノなどの洋風の楽器に触れてみたいと思うことはあった。


「明日部活あるから1回見学する?」

「そうだね。じゃあお言葉に甘えて。入部届はその後もらうよ」


 先にさくらの家に着いたので明日部活を一緒に見学することを約束しておいて別れた。

 有季の姿が見えなくなるまで見送った後、さくらは重い溜息を吐いた。


「相澤君がいるのに有季君も入ったら折角落ち着いた噂が……」


 何とかして有季を部活に入れさせないようにするか、入部させて自分は赤の他人を装うか。

 いや、どちらにせよ有季を仲間外れにしようとしている。

 そんな酷いことはできない。


「……やっぱり有季君に任せよう。部活を選ぶのは自由なんだから」


 結論を1人で出して納得した後、屋敷に帰っていった。




 次の日の放課後。

 終礼が終わり、すぐに帰る生徒と掃除当番をする生徒、談笑する生徒がいる中でさくらは未奈と泉に呼ばれて顔を上げる。


「部活行こうさくら」


 一緒に部室へ行っているため、今日もいつも通り未奈達が誘ってきた。

 だが今日は前日に約束していたことがある。


「ごめん。今日有季君が部活見学するの。その前に顧問に伝えるから先に行っててくれる?」


 さくらの返事に泉はすぐ納得したように笑顔で頷いた。

 だが未奈は驚いたように目を丸くした。


「さくら、反対じゃないんだ。相澤もいるのにうちみたいなひっそりとした部活にイケメンが2人も入ったらそれこそ中心に入るのはさくらだよ」


 未奈の推論にうっと言葉を詰まらせるさくらだが昨日別れた後の心境を説明した。


「確かに目立つのは嫌だけど、有季君は単純に和楽に触れてみたいって言ってるのにその気持ちより自分のことを優先するのってなんか申し訳なくて」

「さくらがそれならいいけど。でもさくら思い詰めるとすぐ体調崩すんだからそこは気にしなよ」

「ありがとう未奈。じゃあまた後でね」


 先に行く2人を見送った後、さくらもバッグのファスナーを閉めて肩に担いだ。

 視線を感じて横を見ると昨夜が横目でさくらを見ている。


「な、なんですか。部活に行けばいいでしょう」


 有季は担任に用があるらしく教卓で話している。

 近くには掃除をしている生徒しかいない。


「お前。何も感じないのか」

「はい?」

「あの男にだ」


 あの男とは有季のことだろう。だがそれでも昨夜の意図していることがわからない。


「有季君がどうしたんですか」

「あいつは危険だ。それ以上一緒にいたら取って食われるぞ」


 さくらはいよいよ昨夜が何を言っているのか理解できなくなった。

 もしやさくらを取られたから嫉妬しているのだろうか。


(いや、でも彼も噂されてそこそこ迷惑そうだったからな)


 だが自分の従兄妹に危険人物と評して警告している姿はさくらも気に食わなかった。

 さくらがこんなに目立つようになったのも元を辿れば彼の仕業だ。

 さくらは1週間前を思い出してきつい顔で昨夜から目を逸らした。


「有季君を悪く言わないでください。彼は私のこと守ってくれるって言ってました。そうでなくても私と血のつながっている従兄妹に酷いこと言わないで」

「会ったのはつい最近だろ」

「根っから赤の他人であるあなたに言われたくありません。それじゃあ私は有季君と職員室に行くので。あなたは早く部活に行ってください」


 さくらは有季を庇うようにわざときつい口調で昨夜を貶し、昨夜の返答を待たずに有季の方へ行ってしまった。

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