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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学一年生(全17話)
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成仏

 未来の体が透け始めている。

 いや、未来だけではない。

 気づいたら琴も淡い光を放ちながら端が消えかけている。


「何を驚いている。俺は言ったはずだぞ。成仏できると」

「い、言ってたけど、突然すぎて」


 さくらの動揺に逆に疑問を抱いているような未来は既に下半身が見えなくなるくらい消えかけている。琴も同様だ。


「お前にとっては突然のことだろうが俺にとってはようやくと言ったところだ。1000年もこの時を待っていたんだ」


 さくらがあの時偶然蔵の中で琴を見つけなければ未来は今もあの琴と共に独りで閉じ込められていた。

 確かにさくらにはほんの2週間前の出来事だ。

 だが未来の言葉を聞けば納得もできる。


「これで終わりでいいのよね。これ以上寿命を縮められるのは勘弁よ」

「ああ。世話になったなさくら。これでさくらこ様を追うことができる。お前は長生きしろよ」


 未来はそう遺した後、跡形もなくその場から消えていった。

 琴も既にそこには存在していなかった。




 1週間後。

 夏休みも残すところ数日になったある日、未奈と泉がさくらの部屋に遊びに来ていた。


「やっぱり本当のことだったんだ。琴もないし」

「信じてなかったの未奈。あれだけ私事細かに説明したよね」

「メールならいくらでも作り話にできるから」


 琴に関わってもらっていたというわけでさくらは山から帰った後、すぐに未奈と泉に事の顛末をメールで説明した。

 しかし琴に関してはすぐ信じた2人だというのに未来や成仏の話は創作だと言って信じなかった。

 怒りを覚えたさくらが証拠だと言って部屋に招き入れたのだ。


「で、何か私に言うことは?」

「彩果先輩と奈子先輩も信じてないだろうし今誘う?」

「謝罪は!?」


 友人だと思っていた2人は特に悪気もないとでもいうように先輩2人を呼ぼうと提案しだした。


「ごめんごめん。でもそんなファンタジックなことが本当に目の前で起こるなんて信じられないって」

「さくらこ様の歴史を推測したり彼女の琴を間近で見たりした人の言葉じゃないよね」


 膨れ面をするさくらの機嫌を取ろうとしているのか未奈と泉はわざとらしく目の前にあった高そうな茶菓子を勧めた。

 そんな一見不思議な光景の中に彩果が入ってきた。


「お邪魔しまーす」

「あれ、彩果先輩いつの間に」

「お母さんに入れてもらったよ」


 さくらの母は心配症だが、さくらが信頼している未奈や泉、更に奈子と彩果は頼りにしているらしく、使用人だろうと誰が対応しようと顔パスでさくらの部屋に通している。


「私ちょっと複雑なんですけど。いつか私が不在の時に誰か入るんじゃないですか」

「ああ大丈夫だよ。この前はちゃんとお姉さんが部屋の前に待機してたから。ちゃんと血縁者が監視してる前だから下手なことはできないよ」

「勝手に人の部屋通さないでよお姉さま!」


 学習塾に通っている姉に聞こえないながらも怒りを示した。


「奈子先輩は用事があるから来れないって」


 奈子に連絡をしていたらしい泉が携帯を見ながら三人に伝えた。


「何? 遊びに来てって未奈ちゃんに言われたから来たんだけど何かあった?」

「そうなんですよ。さくらが琴を成仏させたんですって」

「ヘーソーナンダー」

「説明省きすぎて意味わかんないし先輩考えること放棄してるよ!」


 未奈の適当な説明に混乱しながらも一応答える彩果だがそこに気持ちは一切こもっていない。事務的な返事だ。

 見かねたさくらが全て詳しく改めて説明した。


「ふーん。なんか作り話みたいだけど本当のことだもんね。お疲れ様妖精ちゃん」

「本当ですよ。これ以上寿命を縮められるのは勘弁です。ただでさえ危ない橋を渡ってるのに」

「ま、これで終わりなんでしょ。なら2学期が始まるまでの1週間はおうちでのんびりしてなよ……って無理か」


 さくらの母は明日にでも京都から帰ってくる。

 学校が始まるまではずっと家で稽古漬けの日々だ。

 いつものことだから気にはしないが面倒なことに変わりない。


「さて、じゃあ私は帰るね」

「え、今来たばっかじゃないですか。もう少しゆっくりしても」

「何言ってんの。こういう暇な日にこそ宿題の続きをしないと。面倒なものばっか残っちゃった」


 彩果の発言にさくらは顔を青くした。

 貧血から来るものでないことは本人がよくわかっている。


「え、まさか妖精ちゃん。やってないの?」


 さくらは真面目だ。

 夏休みの宿題など小学生の頃から8月上旬には終わらせる。

 だが今年は貧血だったり吐血して意識不明になったり挙句の果てに琴を山に運んだり。

 宿題のことなど脳の片隅にさえなかった。


「い、1週間あれば間に合います! 絶対!」

「おお、流石名門のお嬢様。じゃあ問題集は見せなくていいね」

「すみません見せてください」

「諦めが早いよお嬢様ー」


 プライドなど捨ててさくらは未奈にその場で土下座をし、記入済みの問題集をいくつか貸してもらった。

 暑い夏休みがもうすぐ終わる。

感想・誤字報告お待ちしております。

次からは中学2年生編になります。

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