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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学一年生(全17話)
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ストーカー

「誰かに付きまとわれてる?」


 退院してから1週間。夏休みも終了に近づいてきた頃。

 毎日のように背後を伝う悪寒に我慢の限界が来たさくらは未奈と泉に相談した。


「さくらのそれが不審者だとか変質者だとかしてなんで最初に相談するのが私達なの。自分の娘をあれだけ心配してるお母さん達に相談しなよ」

「お母さまにも相談しようと思ったよ。けど私が入院してから過敏になってるらしくて。それで本当に学校にまで行かせなくなることもあったんだから」


 小学校低学年の時を思い出す。

 あの時は父と姉の説得のおかげで母も納得したが今回こそどうなるかわからない。

 庇ってくれた2人は今多忙だ。


「それに多分普通の不審者じゃないんだよ。だって生身の人間の気配がしたからって影すら見えなくなることなんてある? しかも1週間だよ。絶対私誘拐されてるじゃない」

「怖いこと言わないでよ。さくらじゃシャレにならないんだから」


 未奈に小突かれてさくらは体を少し傾ける。

 もちろん警察や教師という手も考えたが人見知りをするさくらが面と向かって大人に「怪しい人に付きまとわれてる気がする」など言えるわけもなく。

 だから消去法でなんでも話すことができるこの2人を選んだわけだ。


「でも未奈の言う通りだと思うよさくら。性格はともかくとしてさくら程誘拐して利益が大きいカモはいないんだから」

「泉……あんた容赦ないね」


 さくら程ではないにせよ天然気質に毒舌が入った泉に若干引きながらも未奈は咳払いをしてメモ帳を取り出した。


「琴の件となんか関係あるのかな? でもこっちは資料があるからまだしもその不審者なのか幽霊なのかわからないものにはどうしようもならないよ」

「私霊感ないよ」

「覚醒したんじゃないのさくら」

「「泉1回黙って」」


 未奈がマスクに赤でバツマークを書き、泉にかけた。

 泉は大人しく指示に従っている。こういうところがシュールで面白いのだとさくらは思う。


「あーこういう時友達が女子だけって不利だよね。男手がないからこういう時に頼れないし」

「男手があったとしてもさくらは人見知りだから結果は同じだと思うけど」


 ぐうの音も出ないさくらは文句を言うことなく未奈の指示を待った。


「……無理」

「え?」

「いやなんで私なら大丈夫的な顔してんのよ。言っとくけど私は普通の一般女子中学生ですからね。ゴシップ好きもただの趣味であってプロ探偵みたいな偵察もできないから」

「あ、そっか……」


 冷静に考えればわかっていたことだがそれでもさくらは友人を頼れないことにいくらか肩を落とした。


「さくらのお母さんには私達からも援護してあげるからさ、やっぱり親に相談しなよ。どうしたって大人には勝てないんだから」

「うん……」


 しょげるさくらを励ましながら未奈と泉は途中までさくらを送り届けた。

 3人の背後を影のような黒い靄が通り過ぎていった。




 その日の夜。さくらは洗い物をしている母の元へ足を運んだ。

 お金持ちの家でもさくらの家はあまり他人に全てを任せることを勧めず、多忙でない時には家事は家族がやるようにしている。


「あ、あの、お母さま。ちょっと話があるんだけど」

「どうしたんですさくら。急にあらたまって」


 母が目を丸くしながらも洗い物を終え、手の泡を落としながら聞いた。

 父や姉がいない2人きりの今だからこそ母に面と向かって話すことができる。

 だがいざ顔を合わせると躊躇ってしまう。


「えっと……」

「どうしたんです。言いたいことがあるなら早く言いなさい。私も忙しいんだから」


 口ごもるさくらに溜息を吐きながら母はダイニングテーブルの席に着いた。

 そのままさくらに話を促す。


(ごめん未奈、泉。やっぱ相談できない)

「あ、話の内容忘れちゃった。また思い出したら言うね」

「なんなんですか。もやもやするでしょう。ちゃんとメモしてから言いなさい」


 いちいち思いついた内容をメモするほどさくらは几帳面ではないがはぐらかすために指示に従う。

 そのまま視線から逃れるように部屋から出る。


(どうしよう。お父さまに相談するにしても絶対お母さまにバレるし。かと言ってこのままうやむやにしてもまた私が倒れて逆戻り)


 解決策が全く見出せずにさくらは肩を落としながら自分の部屋に帰っていった。

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