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私と彼女の物語  作者: 雪桃
小話集
112/154

告白のその後

「いやーそうですか。ようやく付き合いましたか。長かった長かった」


 未奈がしみじみと揶揄うようにさくらに向かって呟く。そんな光景に当の本人は赤面しながら顔を顰める。


「うるさい未奈」

「良かったね妖精ちゃん。撫子さんも公認らしいから、思う存分イチャイチャできるね」

「なんなら今してもいいよさくらちゃん。僕達は見守ってるから」

「何の公開処刑なのこれ!?」


 さくらは堪らず顔を両手で覆い体を丸めてしまった。その耳は真っ赤に染まっている。


「あ、逃げた」

「大丈夫だよ栗山さん。隣にもう一人いるから」

「よし!」


 さくらが逃げたことで未奈達の揶揄う対象は昨夜にシフトチェンジした。

 昨夜は有季の方に視線を移す。その目には明らかな殺意が籠っている。


「あ、でも相澤は一通りからかったし、これ以上やっても新しい発見はなさそう」

「俺は珍獣か何かか?」


 急に冷静になる未奈に昨夜は何とも言えない表情を浮かべる。そしてそうなるとやはり矛先は今まで影になっていたさくらに移り変わるわけで。


「どうなのさくら。初めての彼氏は」

「どうって言われてもまだ一時間しか経ってないんだから何も変わらないわよ!」


 半ばやけになりながらさくらは答える。その反応に未奈はニヤニヤと意地悪な笑顔を見せる。


「そっかそっか。その一時間中私達がいるせいで手も繋げないのか。もうちょっとでいいところまでいけたのに邪魔が入っちゃって可哀想でちゅねさくらちゃん……へぶっ」


 揶揄い続けた未奈だが流石のさくらも我慢の限界だったようでベッドに置いてあった四角いクッションを未奈の顔面に投げつけ隣にいた彩果の背中に隠れる。


「そこはイケメン君に守ってもらいなよ妖精ちゃん」

「こっちの方が反撃されてもダメージが少ないので」

「え」


 さくらの衝撃的な発言に苦笑していた彩果は表情を強ばらせた。


「妖精ちゃん何気に今の傷つく」

「いつも私に恥かかせてるんだからこれくらい我慢してください」


 彩果を盾にしながらさくらは未奈の攻撃を待つ。しかし次の攻撃は斜め上から来た。


「そうするとさくらも大人の階段が登れるんだね」

「大人の?」

「処女喪失」

「泉ぃぃぃ! あんたは黙ってなさい!」


 いつも爆弾を投下してくる泉だが、今回ばかりは反撃をしようとした未奈も本気で泉を取り押さえた。彩果は昨夜の肩を掴んで強く揺さぶる。


「イケメン君、今のは忘れなさい! まだあなた達には早いからね! 感情に任せてしたら駄目だからね!」

「いや、あの、そこまで貞操が緩いわけじゃないので」


 昨夜は彩果の手をやんわり払い除けて否定する。

 一連の動作を見てさくらは泉の方を向く。


「泉、処女喪失って何」

「せ……」

「泉、やめなさい。そのメガネぶち抜くわよ」

「怖い怖い」


 泉は眼鏡を押さえながら楽しそうに笑う。お気楽なのは彼女だけだ。


「? ねえ、有季くん、処女喪失って何?」

「僕も一応男なんだけどさくらちゃん。うーん。子どもを作る動作の一つかな」

「子どもを作るのに処女っていうのを取らなきゃいけないの?」

「……そもそもさくらちゃん処女の意味わかってる?」

「食べ物? あ、でも取り除くってことは体の一部とか?」


 嫌な予感を覚えた未奈がさくらに近づいて話しかける。


「さくら、子どもがどうやって作られるか知ってる?」


 未奈の確認のような質問にさくらは頬を膨らませる。


「そんなのわかってるわよ。私も高校生なんだから」

「ああそうよね。流石にね」

「コウノトリさんが持ってくる卵を温めてればいつかお腹に入ってくるんでしょ?」

「やっぱりそうだと思ったわ!!」


 案の定と言うべきか、お決まりと言うべきか、さくらは自信満々に子どもの作り方を未奈に宣言する。そしてそれを聞いた未奈は叫びを上げながら机に突っ伏した。


「どうしたの未奈。そんな大声上げて」

「自分の幼馴染がここまで世間知らずだと思わなくて打ちひしがれてるの」

「え? だって私お姉さまに教えてもらったもの。子どもは鳥と男に任せておけって」

「あの人かぁ……」


 あの撫子であればさくらを汚さないために嘘の情報を教えるに決まっている。そしてまんまとさくらはその罠に嵌ったわけだ。


「私何か間違ってる? あ、コウノトリじゃなくて違う名前だったっけ」

「妖精ちゃん、後で教えてあげるから今はその話は終わりにしようね」


 見かねた彩果が未奈に代わってさくらを宥める。当の本人は釈然としない顔をしながら黙る。


「良かったね相澤。何の知識もないさくらちゃんに襲いかかったら強姦って言って捕まってたかもね」

「……だろうな」


 女性陣の様子を見ながら男子二人はさくらに呆れた視線を送っていた。

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