表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
101/154

誘拐

久しぶりのシリアス展開です。

暴力表現があります。

 さくらが次に目を覚ましたのはコンクリートで固められた建物のようだった。冷たいコンクリートの地面にそのまま横たえられた小さな体は少し動かすだけでも痛みが走る。


「目が覚めたか」


 徐々に覚醒しつつあったさくらだが、頭上から降ってきた言葉にハッと身を強張らせた。さくらを見下ろしていたのは紛れもない、柴崎碧そのものである。薄暗い景色で碧の表情を見ることはできないが、確実に味方ではないことはさくらも理解できる。


「あおい、くん?」


 掠れた声でさくらは碧の名前を呼ぶ。碧は寝たままのさくらを上半身だけ起き上がらせ、その口に水筒を押しつける。


「半日寝てたから、せめて水だけでも飲んで」


 そう言われて無理矢理口に流し込まれた水を噎せながらもなんとかさくらは飲み込む。状況が理解できないままさくらの意識は完全に覚醒した。


「碧くん、ここは一体どこ? なんで私、こんな所にいるの?」


 さくらは戸惑いながらもそれだけは口に出した。碧はそんなさくらにしばし沈黙した後、小さく口を開いた。


「どこでもいいだろそんなの」


 吐き捨てるように言われたさくらは信じられないというような目を碧に向ける。


「せめて場所くらい教えてくれてもいいじゃない」

「……」

「碧くんわかってるの? このままだと私は拉致されたことになるし、碧くんは罪を犯したことになる。それじゃあ……」

「あれ、起きたの? なんだぁ、それなら早く言ってよ碧君」


 さくらでも碧でもない、第三者の声が薄暗い部屋に響く。さくらはその声に反応して声のした方に顔を向ける。相変わらず薄暗くてはっきりと顔を見ることは叶わないが、それでもわかる。部屋に入ってきた男は五人いると。それも碧よりも体格の良い年上の男だ。


「?」


 さくらが急な男達の正体に唖然としている間、碧は無言で男達の方を見る。

 そのうち先頭にいた男がさくらに近づいてくる。さくらは咄嗟に一歩後ろへ下がる。


「本当に弱そうな女の子だね。確かに箱入り娘って言われても納得がいくけど」


 動けないさくらの顎を無理矢理掴み、男はその顔を舐めるように見て感想を口にする。優しそうな言葉遣いだがさくらにとっては安心できるものではないに決まっている。


「あ、あの、ここは」

「ん? 見てわかる通り、人がいない廃墟だよ」

「そ、そうじゃなくて」


 怯えながらも目の前の男と話をしようとするさくらだが、途中で言葉を切ってしまう。目の前の男がさくらの頬を平手で打ったからだ。さくらの白い肌が徐々に赤く染まる。


「やっぱりこれくらいじゃ力も発動しないよね。困ったなぁ、あまり傷つけたら死んじゃうだろうし」

「おい、時間もないんだ。さっさと始めるぞ」


 目の前の男が混乱しているさくらを余所に一人で何かを思案している間に後ろに控えていた屈強そうな男が割り込んできた。その男はさくらを担ぎ上げると残りの三人がいる方へと放り投げる。


「うっ!?」


 さくらが痛みに呻いている間にも屈強な男はさくらを睨むように見下ろす。さくらの背後に立っている三人も同様だ。


「おーいあんまり乱暴にしたら死んじゃうよその子。見てわかるでしょ、腕一本折っただけで死にそうな体してるよ」

「え? え?」


 さくらに平手打ちを喰らわせた男が呑気に注意する。さくらは男に囲まれている恐怖と頬を叩かれた痛みと状況の整理ができていない混乱で意味のない言葉を発するしかない。


「えっと、確か名前は神海さくらちゃんだよね。僕たちもね、手荒な真似はしたくないんだ。傷つけることが仕事じゃないからね。僕たちが要求してるのは君の力なんだ」

「?」

「とぼけても無駄だよ。君が強大な力を持っているのは既に調べてあるんだ。僕だちは依頼人に言われたんだよ。力を発動した状態で対象者を連れてこいってね。だから君には早くその力を解放してほしいんだ」

「……」


 優しくさくらに問いかける男だが、もちろんさくらには何をすることもできない。

 強大な力とは? その依頼人とは? 力を解放するとは?

 さくらは産まれてこの方ただの人間だ。中学生の時に前世の知識を思い出しただけの女の子で、男が言っている力と呼ばれるものについて一度も認知したことはない。


「あ、あの、知りません」

「ん?」

「私、本当に知らないんです。きっと人違いです。だって、今までそんな強大な力っていうのも使ったことがないし」


 さくらが必死に説明しようと何とか震える声で男に言うが、その返答はまた平手打ちだった。


「……わかんない? そりゃあ世間知らずのお嬢様だからわかんないよね。僕たちが待ってるのは人違いでも知らないでもないの。力を解放することなの」

「だ、だからそんなの一度も」

「要求に応えてくれないならこっちも強硬手段に出るしかないんだよね。大人しくしてくれたら痛い目に遭わなくて済んだのに、残念だね」


 さくらが何かを言う前に、屈強な男がさくらの腹を拳で殴った。


感想・誤字報告よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ