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蕩けそうな程の

修正終了済み


飛び道具は遠方にいる敵に対して攻撃したりする道具だ。

敵の死角から攻撃し、近ずかなくても倒すことが出来る。だがその分デメリットもあり、風や障害物などがあると上手く敵に当たらないこともある。そして飛び道具を使う本人が相手との距離等をしっかりと把握していないと使えない武器だ。

古くから飛び道具には多くの種類があり、現代的な銃から古典的な弓など幅広い数がある。

その中で私が一番飛び道具の中で扱いやすいだろうと思っているものは銃だ。だが私は銃などと言う武器は作れない。何故なら構造を知らないからだ。それに銃の構造を知っていたとしても今の私の技量では作ることが不可能だ。

なので作るのは弓だ。

弓に関しては少しばかり知識がある。でも知識があると言っても弓の形状や矢の形をぐらいだ。そして弓は銃とは違って構造自体は案外単純なので私でも作れる可能性がある。


「でも弓の材料になりそうなものがないんだよねぇ。いっそのこと『氷魔法』で作れないものかなぁ」


弓はしなりによって矢を飛ばす。だが私の周りにあるものはどう見てもしなりそうにない木ばっかりだ。枝で作るという手もあるが、矢の威力が敵に当たるまでに下がっていき、最終的には全くのノーダメージで事が過ぎるだろう。

『氷魔法』なら作れるのではないかと一時思っていたが、出来た弓は全然しならなかった。

分かってたよ。しならないことぐらい。

だって氷だもん。

異世界だから出来るんじゃないのかなという希望を持ってたけど意味がなかった。

やっぱり氷は氷だった。

振り出しに戻った私は、あのカラスモドキ等をどう倒そうか必死に悩んだ。

そして私はある1つの答えに辿り着いた。それは……「自分で投げちゃえば良いんじゃないかな?」という単純な発想だった。今まで考えてきた飛び道具はどれも道具を使って飛ばす物だったが、その飛ばす道具を省き、自分自身で投げてしまえば簡単だと思った。


投げる道具はナイフで良いだろう。 投げナイフとかやったことないけどそこは異世界補正で何とかなって欲しいところだ。

先程弓を作ったせいで魔力がかなり乏しいが、ナイフ1振りぐらいなら作れる。

ものすごく魔力残量がギリギリだけど……。

取り敢えず作るナイフはシンプル・イズ・ベストな形で事足りる。何故なら今から作るナイフは練習用なのだからな。

練習無しでぶっつけ本番というのは無粋過ぎる。もしそれで失敗でもしたら普通に私の異世界生活は終幕だ。


それから私は『氷魔法』でナイフを作り、近くの木に投げつけてみた。すると、手から離れたナイフはスコーン!と気持ちのいい音を響かせながら綺麗に木に刺さった。まぐれかもしれないと思いもう1度投げてみたところ、今度も気持ちのいい音を響かせながら綺麗に木に刺さった。


「も、もしかして私には投げナイフの才能があるの? それともこれはただ異世界だからなの?」


自分の才能なのか異世界だからなのかは分からないが、ナイフを使えたことには変わりない。このくらいの技量があるならば上手くやればあのカラスモドキを倒せるかもしれない。


「投げナイフをもう少し前に覚えとけば狼モドキをすんなり倒せたかもしれないなぁ……」


と、少しばかり過去の私に後悔しつつ私は練習用のナイフを右手に持ち、拠点探しに戻った。

何故練習用のナイフなのかは単に魔力がもうほとんど無いからだ。これは仕方がないことだ。使えば減る、どの世界にもあるだろう世の理みたいなものだからね。



ー2時間後



「……憤懣」


どこ行ってもあるのは木だけだった。分かってたけどここまで上手く事が進まないとイライラしてくる。今思えば洞窟を見つけられたこと自体奇跡みたいなものだ。

その奇跡を今一度起こしてくれないものかねぇ。ほら異世界だから神とかいるんじゃないの?高みの見物でもしてるんじゃないの?

まあここで神頼みしても意味無いか。そもそも私は神なんてものを信じないような人間だからね。

あ!今は人間じゃなくて吸血鬼か、早く吸血鬼としての自覚を持たなくちゃね。


「う~ん……1羽だけか……これなら私でも倒せそうだな」


『気配察知』には1羽だけ仲間から離れたカラスモドキの反応があった。

これは好機中の好機だ。

私はゆっくりと仲間から離れた所にいるカラスモドキの背後にまわった。どうやらカラスモドキは枝に掴まり翼を休めているようだ。

ここは気づかれる前に仕留めた方が得策だ。

私は氷のナイフを軽く持ち、カラスモドキ目掛けて氷のナイフを投げた。ナイフは一直線にカラスモドキの心臓目掛けて飛んでいき、綺麗にナイフは胸を貫いた。

そして、背後から心臓を貫かれたカラスモドキは口や傷口から大量の血を吐きながら地面に落ちていった。


「ふぅ~、上手くいって良かったぁ。取り敢えず今日の食料はゲット!」


そして嬉しいことに食料以外にも収穫はあった。それは私自身のレベルアップだ。今の1羽だけで私のレベルは何と5も上がった。これは狼モドキの数倍もの獲得経験値の多さだ。

もしかしてこのカラスモドキは私が思っていたよりも遥かに強かったのかもしれない。

でも今のでカラスモドキを倒す要領は分かった。

気配を消して、背後にまわり、後ろからグサッ!だ。それだけでカラスモドキは倒せる。だがものすごく簡単そうに思えるけどこれはとても難しいことだ。

物音を立ててはいけない、他の仲間に見つかってはいけない、絶対にナイフを外してはいけない。この三つに気をつけなければ私はカラスモドキの集団に襲われて終わりだ。

狩りは何時だって命懸け、これはどこの世界に行っても同じことだ。


「この調子で後何羽か倒そうかな」


その後私は仲間から離れているカラスモドキを中心に倒していった。最後の方はコツを掴むことが出来たため楽な狩りに終わった。

結果的に倒したカラスモドキは全部で六羽にも上り、レベルはざっと三十以上も上がった。そして、スキルも一つ増え、『短剣術』と言うスキルが新たに加わった。

これはもうカラスモドキには感謝の念しかないね。

少し食料を取りすぎてしまった感じはあるが、血が固まる前に飲んでしまえばいいだけの事だ。


「早めの食事にしようかな」


今はあまりお腹が空いてはいないが、食事をとることにした。その理由としては単にカラスモドキがどれほどの美味しい血を流しているのかが気になったからだ。

そして、他の理由もあり、それは六羽ものカラスモドキを持っていくのは少々面倒くさかったので、ここで少しは数を減らそうと思ったからだ。


私はこう見えて結構面倒くさがり屋でもある。基本的には面倒くさいと思ったことはやらない。

私の性格は真面目だけど面倒くさがり屋だ。

要するに浮き沈みの激しい性格だということだ。


さて、実食といきましょうか。

私はカラスモドキの首に勢いよく噛み付いた。噛み付いた瞬間口の中にバサバサとした羽が入ってきたけど、それが気にならないほどの美味しい血が口の中いっぱいに広がった。

狼モドキ以上の美味しさだ。

やっぱり魔物が強くなれば強くなるほど美味しい血を体内に流しているのかもしれない。


「それにしても美味しすぎるよ。美味し過ぎて今にも蕩けそうだよ~」


そのあと私はある意味この世界と吸血鬼と言う種族に慣れてきたのかもしれないと染み染み思った。

私の中で少しずつだが人間であった頃の要素が消えていくような感じがしてくる。

それは魔物を倒してレベルアップした時にやってくる。

このままレベルを上げ続ければ人間であった頃の感情を忘れ、記憶すらも忘れるかもしれない。

人間であった頃の記憶や感情はあまり忘れなくはないが、今やもう殆ど覚えていないと言っても過言ではない。

友人であったり、家族であったり、大切な親友でさえ私の記憶からはもう消されそうだ。

まさに風前の灯火だ。

大切な人達の顔や声、たくさん笑った記憶などはもう思い出すことがないだろう。

転生する前の私はそれを了承してこの世界に来たのだろうか?それとも転生するのだから前の世界の記憶は要らないと神なる存在に消されたのかな……。

どちらにせよ今この世界で生きていくためにはそんな記憶はいらないのかもしれない。

何故なら新しくこの世界で良き友人を作れば良いだけのことだからだ。

考え方はとても良いとは言えないが、致し方のないことだ。

例え前の世界の友人や家族、親友がいたとしてもこの世界にはいないのだから……。だからいっそのことこの世界で新しい友人を作れば良い。

前の世界の人達には悪いけどこのままレベルアップを続けて君達の記憶を忘れさせて貰うよ?


「それがこの世界での私の生き方だからね」













次回!ボス格!?……です。

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