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無いよりマシか

この4部は修正終了済みです。

今日で異世界生活二日目だ。

昨日洞窟の入口をしっかり塞いでおいたおかげでぐっすりと眠れた。襲われる心配もなかったからかな?

そう言えば昨日倒した狼モドキのおかげでレベルが一つだけ上がった。これはとても大きな一歩だ。狼モドキのような魔物を殺すのは初めてだし、地球にいた頃は生き物すら殺さなかった。勿論夏場に出てくる鬱陶しいあいつも殺したことがない。

吸血鬼になってから少し今までの自分とは違うような感じがしてきた。

私は昔、とても物静かで近寄り難いイメージを周りに撒いていただろうけど、今となっては完璧にアウトドアだ。なんて言ったらいいのか悩ましいけど「明るくなった」。それが今の私にぴったりな言葉だろう。


さて、本日はある物を作らなくてはいけない。

それは「服」だ。いくらここが異世界で人目がつかなそうな森だとしても服を着ないのは些かどうかとは思う。それに私はれっきとした女の子だ。いつまでも裸で生活していたら何かを失う気がしてきたからだ。

服の素材はまあ……昨日倒したこの狼モドキの皮で良いだろう。

あまり服の作り方には詳しくはないが、皮を舐めして乾かせばそれっぽいものが出来るのではないだろうか?後は頭とか腕が出るところをくり抜いたら完成だろう。

獣の服の作り方は知らないが、皮の剥ぎ方なら知っている。

まず狼モドキの皮を剥ぐことから始めないと何も始まらない。なのでパパッと皮を剥ぎ、皮の内側についた残り身や油を氷の短剣で少しずつこそぎ取っていった。ある程度取れたら近くの木の枝に干すだけだ。

本当にこのやり方が正解なのか気になるところだが今は無駄なことを考えないでおこう。


ー数時間後


あれから数時間が経過した。

まだ半乾きだが着れないことは無い。本当なら水とかで一回丸洗いしたかったが、ここには川すらなかった。おかげでかなり獣臭い服になりそうだ。

これも今後の課題行き決定だ。

首が通るところを氷の短剣でくり抜き、腕が通るところもくり抜いた。

最後に後ろを縫い合わせれば完成だ。

因みに縫い合わせる道具は『氷魔法』で作った針と、狼モドキの食べ残しである何かの毛だ。

人間っぽい毛だったけど気にしたら終わりだ。


「縄文人が着てそうな服になった……」


途中まで結構良いのが出来るのではないだろうか?と思っていたが、出来上がった服は歴史の教科書の最初の方でよく見る縄文人のソレだった。

そして、着てみて分かった事がある。それはとてもこの服がダサいということだ。可愛げも何にも無いただただダサい服だった。

こんな状況でそんな贅沢は出来ないのは百も承知なのだが……やはりダサい。

でも裸よりはマシだ。

そう私は自分に言い聞かせた。


一応服は完成したので、次にやることは今日の食料探しだ。昨日の狼モドキの血を朝見たらカチンコチンに固まっていた。

これじゃあ煎餅だ。でも食べれないこともないだろうと一口食べてみたが、昨日のような美味しさはなかった。例えるなら水でかなり薄めたフカヒレスープみたいな感じだった。

そんな粗悪品は要らない。

私が望むものは新鮮な血だ!

と言うわけで魔物探しだ。LV2の私がどうこう出来るかは知らないが、この新しい【技能】を使えば案外いけるかもしれない。

その新しく獲得した【技能】とはなんと『錬金術』だ。

『錬金術』はただの金属を金に変えようとしたり、銀を貴金属に変えようとした術だ。この状況下ではあまり使えそうには見えない【技能】だが、注目するべき点は「変えようとした」だ。金属を金に、銀を貴金属に変えようとしたのならば他の物質でも出来るはずだ。ましてや金や銀などの難易度の高い物でなければ楽に形を変えたり、性質を変えたり出来るかもしれない。

試しに近くに落ちていた拳大程の石を手に持ち、氷の短剣を想像した。すると石は徐々に形を変えていき、氷の短剣と瓜二つの物が出来た。流石に色や特性等は変えられなかったが、これで武器を作れる手段増えた。

だが『氷魔法』で作った短剣のような強度が無い。近くの木に石の短剣を斬りつけたら刃がボロボロと欠けてしまった。

物によっては使い捨て確定の武器だということが分かった。


「まあ……敵の体内に欠片とかが入れば痛みで動けなくなったりするかも知れないからこれはこれで有りかも」


最初っから壊れる前提で使えばかなり使い所がある。

意外と扱いが難しい【技能】だな。

取り敢えず今日の食料を見つけなければいけない。もしもあの苦しみが定期的に来るとなれば早く血を摂取しなければまた苦しむ事になる。苦しい状態で獲物を倒すのは流石に死に急ぐ奴にしか見えない。

だからなるべく早く獲物を捕らえようという魂胆だ。


それからしばらくしてあの鳴き声が聞こえてきた。多分洞窟にいた奴と同じ種類だろう。


「「グルルルルッ!!」」


見つけたのはいいもののまさか二匹だとは思わなかった。よくよく考えてみれば狼は群れを成して獲物を狩るとても頭の良い生き物だ。例え名状し難い狼モドキでもそれは地球と同じなのかもしれない。

何にせよ私は二匹を相手にしなくてはならなくなった。少し待って二匹が別れるのを待つという手もあるが、私にそんな時間は無い。あの苦しみがいつ来ても大丈夫なように備えておかなければいけないからだ。

『氷魔法』で前に作った氷の短剣を右手に持ち、左手には『錬金術』で今さっき作った石の短剣を持った。

今のところ『氷魔法』で作れる短剣の数は未だ一本だけだが、『錬金術』で作れる石の短剣は計三本作ることが出来る。

斬れ味、強度、全てにおいて高い『氷魔法』で作った短刀に比べ、やはり『錬金術』で作った石の短剣はどちらも劣っている。

だが、無いとあるでは雲泥の差だ。


「グルルルルッ?」


ん?何かこっちの方を見てないか?

どう倒そうか考えていると誰かに見られているような気がした。どこからだと思いチラリと狼モドキの方を見ると二匹の内一匹がこちらをじっと見つめていた。

これはもしかして絶体絶命と言うやつではないか?

たらりと汗が額から滲み出てくる。どうこの場面を切り抜けようかと必死に考えてはいたが、相手が悪かった。

相手は野生の魔物であり、一種の殺し屋だ。私の都合など分かってくれるわけもなく大口を開け、牙を剥き出しにし、茂みに隠れる私に向かって飛びかかってきた。


「グォルルルルッ!!」


「……っ!」


狼モドキは私の首を狙ってきた。

人も狼モドキも急所を狙うのは当たり前だ。何故ならそれが手っ取り早く相手を倒せるからだ。

思いっ切り私の首に噛み付こうとしているが、私はそう甘くはない。

こういった戦闘経験はほぼ皆無だが、どこを壊せば相手が倒れるのかぐらいは知っている。


「グギャァ!!」


再度狼モドキが私に向かって飛びかかってきた。

なので私はその場で身を屈め、頭上に狼モドキが来た瞬間心臓を氷の短剣を突き刺した。短剣の刃は狼モドキの体重も合わさってか、すんなりと心臓部に届いた。


「ふぅ~……後一匹」


刃を抜くと、どさりと狼モドキは倒れた。まだ辛うじて生きてはいるが、息絶えるのは時間の問題だろう。

そしてもう一匹はと言うと、仲間が呆気なく倒されたことで私を恐れてか何処かへ走り去っていった。

私としては逃げてくれて助かった。一匹ならばどうにか対応出来るが流石に今の私では二匹目はキツかったからね。


それにしてもこの森のようなところには狼モドキしかいないのだだろうか?

こんなにも広そうな所なのに一種類だけと言うのもおかしい。もしかしたら狼モドキよりもさらに上位の魔物がいるかも知れない。そうであれば今の私では成すすべがない。

狼モドキ一匹で手一杯だからね。

本当ならもう少しマシな武器が作れれば楽に狼モドキを倒せる日は近いのだろうけど生の武器を見たことがない私にとってはかなりの難題だ。一応歴史の本とかでレプリカとか実物の写真とかは見たことがあるけど細部までは分からない。

大雑把に想像して作ると物凄くお粗末な物が出来てしまうからだ。

だがとてもシンプルな武器ならば作れる。その武器は飾りげも無く、見た目も良くない。氷の短剣のような強度も斬れ味もない。でも『錬金術』で作った石の短剣よりは上だ。

長所としては刃のリーチが長いという事だ。だが刃のリーチが長いということは折れやすいという事だ。魔力が全快した状態で作ってもせいぜい二、三回木に斬りかかっただけでバキッ!と折れてしまうような柔な代物だ。

せめてもう少し想像力と魔力があれば良いものが作れたかもしれないのになの……。


まあ今日の食料を手に入れることが出来たのだし洞窟に帰ろうかな。







次回!やっば!……です。

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