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薬草の依頼

修正終了済み


「十三だったんですね……」


「……そうだよね、見えないよね……」


体の凹凸なんて無いに等しいもの。


「と、取り敢えずさっさと登録しちゃいましょうか! このプレートの上に血を一滴垂らしてください!」


受付嬢の人はスっとカウンターの上に針と鉄で出きた薄いプレートを出した。鉄のプレートはあの兵士に貰った物とほぼ同じだ。

私は針を手に持ち人差し指にぷすりと針を刺した。刺したところから真っ赤な血が出てくる。それを鉄のプレートに垂らすと、鉄のプレートは薄らと光私の名前とランクFという字が浮かび上がってきた。


「これで冒険者登録は終了です。次に冒険者について説明しますがどうしますか?」


「大丈夫。魔……お父さんからそこら辺の事をきいてるから」


「お父さんは冒険者なんですか?」


「多分違うと思う。でもそういう経験を過去にしてたかもしれない」


「良いお父さんを持ちましたね。ではこれにて冒険者登録は終了です。これから頑張って下さいね」


「ありがと。後手頃な依頼を受けてみたいんだけど何かある?」


「手頃な依頼と言いましたら……マナラ草の採取依頼ですね」


やはり薬草採取の依頼が一番手頃か……。私としては依頼で魔物とかを倒して血を飲んでみたいのだが薬草採取も意外に興味がある。決められた薬草を探して採取する。物凄く地味な作業に見えるかもしれないが、私はこういった地味な作業が好きだ。派手な作業をするよりも楽しくて余り疲れない。そこが地味な作業のいい所だ。


「そのマナラ草の依頼受けるよ」


「マナラ草がどのような薬草か分かりますか?」


「大丈夫」


「ではこれが依頼書です。マナラ草は十本を一束でそれを十束集める依頼です。期限はありませんがなるべく新鮮な物の方が買取価格が高くなりますよ」


「じゃあなるべく早く持ってくる」


「分かりました。魔物に十分お気をつけ下さいね」


そこいらの魔物如きに遅れをとる私ではない。それも国の近くにあるような森の魔物なんてたかが知れている。魔界の魔物と比べれば子供レベルだ。


さて、まずは美味しい食べ物でも食べようかな。

いや、まず最初にやるべき事は宿を見つけることだな。宿をとらなければ野宿する羽目になってしまう。


「受付嬢のお姉さん。綺麗な宿屋を教えて」


人間界の事は本でしか情報を得ていないため常識と言えるようなものは私の中には無い。それにこの金貨の価値すらも未だ私は分かっていない。魔王様が人間界の森に"転移"した時に聞こうと思ったけどその前に魔王城に帰ってしまった。


本という物は一般常識が書いていない。それは何故か……それは一般常識というものは産まれた時から徐々に親から教えてもらうからだ。なので私はこの世界の一般常識が全く分からない。この世界に転生した時は周りに魔物しか居らず、話し相手が誰も居なかった。だから私は一般常識というものが欠如している。

人から少しずつ吸収して行かなければ私は成長しない。だから私は魔王様の子になったのだ。


「陽の光亭なんてどうでしょう? あそこは部屋が綺麗で料理がとても美味しいんですよ」


「……陽の光亭ね。分かった行ってみる」


取り敢えず今日の宿はそこにするか。一度泊まってあまり良くなかったらまた受付嬢の人に聞けばいいのだし。


冒険者ギルドを出ると眩しいほどの太陽が燦々と照りつけていた。今は丁度お昼ぐらいの時間な為人通りはかなり多いい。

少し小腹が空いたためなにか食べようと出ている屋台に近づいた。売っているのは串に刺さった肉やカットされた果物、後は私の知らない何かだ。途中トノサマバッタのような虫が串に刺さって売っていた。それを見た私は「うげぇ」と声に出したくなるほど気持ち悪くなった。

やはり前世で嫌いだったものは今世でも嫌いだということか。


「おじさん、その串のやつ三本ちょうだい」


私は一番美味しそうだなと思った屋台にいった。何よりこの店で売っているものは丸っきり焼き鳥であり私にはとても馴染み深いものだからだ。

まさか異世界に来てまで焼き鳥が食べたくなるとは思いもしなかった。


「あいよ! 銅貨三枚だ!」


「……金貨でいい?」


生憎私は銅貨を持ち合わせていない。冒険者ギルドで細かくしてもらえば良かった。


「き、金貨か……。ちょっと待っててくれ!」


そう言って屋台のおじさんは後ろにある家に消えていった。

しばらくしておじさんは私の頭ぐらいありそうなほど大きな袋を持って戻ってきた。


「人前で金貨なんて出すもんじゃねぇ。お前さんここらを違法に取り仕切っているチンピラ共に目をつけられるぞ。取り敢えずさっきの金貨を銀貨と銅貨にしといた。量が多いいがギルドに保管してもらえば大丈夫だ。今度からは気をつけろよ」


銀貨と銅貨の入った袋と串に刺さったお肉が三本入った袋を屋台のおじさんはそっとノアに渡した。


「分かった。それでそのチンピラってどんな人達?」


「子供がそんな事に興味を持っちゃいけねぇがお前さんはよそ者だろ? 忠告ついでに教えてやる。ここいらを違法に取り仕切っているチンピラっていうのは冒険者ギルドを追放された奴らのことだ。一度ギルドを追放されるとどのギルドも加入をお断りしちまうんだ。しかも追放されたということは良くないことをしたということ、つまりもうそいつらは働き口がねぇってことさ。だから金を持ってそうな奴を脅して巻き上げるのさ」


ギルドを追放されるって一体どんなことをしたんだろう?

それに何故兵士達が動かないのだろう?兵士達が動けばそんなチンピラなんて直ぐに捕まるはずなのに。


「おじさん達はそのチンピラが怖いの?」


「ああ怖いさ。なんせそのチンピラの中に元Bランク冒険者がいるんだからな。一介の兵士らじゃ相手になんねぇのさ。だから俺たち平民は目をつけられないようにしているんだ」


「国に要請しないの? チンピラを退治してって」


「そんなんで国が動くもんか。俺ら平民のことなんざ聞くわけないだろ?」


やってみなければ分からないこともあるというのに……。

例え平民であってもこの国が腐っていなければこのくらいの要請は聞き入れてくれるはずだ。

私の知る限りこの世界にある国の中ではバルジアナ王国はとても正常な国だ。逆に一番酷いのはリ・シーン帝国だ。リ・シーン帝国は平民はただの生産者であり何者でもない物扱いをされている。それはもう奴隷と言ってもなんら差し支えないほどの酷い扱いだ。だが軍事力は高く、国の中にさえいれば絶対に他国の侵略から守ってやれるような兵士と武器を保有している。

なのでリ・シーン帝国の民は国を逃げ出さず、その国はしっかりと成り立っている。

私にとってはそんな国さっさと滅んでしまえと思っている限りだ。もしリ・シーン帝国が民を平等な存在として置いているのであればそれはそれは暮らしやすい国になるだろうな。


「色々教えてくれてありがと」


「おう!」


ノアはその後大量の銀貨と銅貨の入った袋をギルドに預け、陽の光亭へと向かった。道中屋台で買った焼き鳥をパクリと一口食べて見たところ、魔王城の料理の数百倍の美味しさがそこにはあった。

やはり魔王城の料理はただの劇物だなと思ったノアだった。

しばらくして陽の光亭と書かれた看板を見つけたノアはそっと扉を開けて中に入った。


「いらっしゃい! 空いてる席に座ってくれ!」


「……」


中は騒がしく、そしてとてもいい匂いが漂っていた。


私は騒がしいところがどうも好かない。カフェのような静かでゆったりとした空間が好きだ。だがここは夜の居酒屋みたいな感じだ。昼も過ぎれば静かになるのだろうけど流石にこれはうるさ過ぎやしないか?


「どうしたんだい? そんな所でつっ立って」


先程店に入ってきた私に向かって「いらっしゃい!」と言った元気なおばさんがお盆を持ちながら話しかけてきた。


「泊まれる?」


「確か一部屋だけ空いてたと思うよ。一泊銀貨二枚。食事付きなら銀貨二枚と銅貨四枚さね」


「じゃあ一週間泊めて」


「一週間って事は銀貨十四枚ね。食事はどうするんだい?」


「いる」


「あいよ、銀貨十六枚と銅貨八ね」


「……一つ確認してもいい? 銅貨十枚で銀貨一枚なの?」


「そうだけど……それがどうしたんだい?」


「いや何でもない」


一つ勉強になった。

銅貨十枚で銀貨一枚。じゃあ銀貨十枚で金貨一枚になるのかな?

いや、多分それは違うだろうな。自分が考える限り銀貨百枚で金貨一枚だ。

何よりあの屋台のおじさんが持ってきたお金の枚数がそれを物語っているだろう。

何せあの袋の中は殆ど銀貨だったのだから。


「これが部屋の鍵だよ。この鍵の番号の部屋の部屋が泊まってもいい場所だ」


「ありがと」


おばさんは二階に繋がる階段を指差しながら「最近特に物騒だから路地裏とかに行くんじゃないよ。男はみんなケダモノなんだから」と優しく私に言った。

おばさんの言っているケダモノとは案の定チンピラの事だろうな。

まあ私には関係の無いことだ。そのうち誰かがAランク冒険者でも雇ってどうにかしてくれるだろうしね。


二階に続く階段を登るとそこには六つの扉があった。その中で私が泊まる部屋は一番右奥の部屋だ。

冒険者ギルドのように床がギシギシと軋む。店の外見は意外と綺麗だったけど中はかなりの年季が入っているなと思った。

鍵穴におばさんから受け取った鍵を差し込み中に入ると明るい光が私を照らした。


うん、間取りもいいしベットもそれなりに綺麗だ。これならぐっすり眠れそうだな。


「はぁ~暑かったぁ」


汗でベタベタのローブを脱ぎ、ベットに仰向けで寝転がった。

ベットはヒヤッと冷たく少しずつ体の熱をさましていった。


「薬草……探しに行こうかな……。でも日差しが辛いからなぁ」


本当になんでなんだろう?暗い森で見つけたあそこでは太陽の光に当たってもなんともなかったのに……。

そう考えると吸血鬼っていう種族は当たりなのか外れなのか分からなくなってくるよ。

取り敢えず薬草探しは夕方辺りに行こうかな。


「本当に厄介極まりない体質だよ……」






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