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冒険者のランク

修正終了済み

「ノアは人間界がどういう場所か知っているか?」


「食べ物が美味しい所」


「……」


魔王は「そういう事を聞いているのではない」と小さく言った。

対するノアは魔王の声が小さかった為聞き取れず、首を傾げた。


「いいかノア、人間界は奴隷と言う人を物のように扱う習慣がある。それは犯罪者であったり借金を返せず奴隷落ちした者であったり人間以外の種族を拉致し奴隷として売るなんて事がザラにある。特に森妖精族は美男美女が全体的に多いい為よく人間族に里を襲われ奴隷にされている。では何故人間がそのようなことをするか分かるか?」


「お金?」


「合ってはいるが他に目的がある。それは戦力の増強、人員の確保、快楽目的が主だ」


なるほど、戦力の増強は戦争の為で人員の確保は足りないところを補うため、そして最後の快楽目的は色々な意味があるのだろうけど一番の目的として合っているのは性に関することだろう。

魔王様の言っていた森妖精族は美男美女が多いい、特に女の場合は愛玩動物として買われることが多いいのだろうな。


「理解した」


「では俺が心配している事がなんだか分かるか?」


「私が奴隷として売られるかもしれないということ?」


「そうだ、ノアのステータスならば逃げられるかも知れないが、奴隷紋を刻まれてしまえば逃げることは不可能になってしまう」


奴隷紋はつい最近本で知った単語だ。

確か奴隷の体の何処かに術式を施した焼印を押す事によって所有者の命令に絶対服従しなくてはならない魔術刻印だ。

そもそも魔術刻印は魔法の上位に当たる魔術の為市場にあまり出回らない希少な物だが、奴隷商と言われている者達は絶対に数本持っているそうだ。

奴隷を扱う仕事なだけあってかなり儲かっているのだろう。


「そこでノアが先程やってみたいと言っていた冒険者だ。冒険者を簡単に言えば何でも屋だ。主な仕事としては魔物の討伐依頼、薬草採取の依頼、護衛の依頼、雑用の依頼など様々ある。ここまでは知っているよな?」


「当たり前、異世界ならではの職業だからね」


「そう言えばノアは転生者だったな。話の続きだが冒険者にはランクによって色々なランク報酬が付いてくる。F~Cランクの冒険者は基本的にランク報酬は無いがB~Sランクの冒険者には色々なランク報酬が付いてくる。まあそこら辺は自分で調べるか何かして知ってくれ。でだ、そのB~Sランクではある共通の報酬がある。それは国が身元を保証する制度だ」


「身元を保証する制度? そんなの皆持ってるんじゃないの?」


魔界にはそういう制度は無いみたいだが、人間族と獣人族にはあるらしい。

それは〇〇県〇〇市〇〇区に住む誰々さん的な感じだ。

だけど魔王様が言っている意味が私には分からなかった。

人間が住む所なのだから誰も彼も身分を持っているはずだ。

なのに何故冒険者のランク報酬として数えられているのだろう?


「人間は身元が保証出来る証明書を一人ひとり持ってはいるがそれは()()()()()()()()()()()()()()()。それは国に有益な者達とそうではないただの一般民を分けるためだ。では何故そこまでして分けるのか……それは有益な者達が奴隷になった場合国にとって損をするかもしれないからだ。では俺が最終的に言おうとしている事はなんだと思う?」


「それは……冒険者ランクB~Sになって国に守って貰えって事?」


「正解だ。そこでノアにはあるミッションを遂行してもらう」


「……冒険者ランクB~Sになれってことでしょ?」


「そうだ。期間は一ヶ月、その期間内で冒険者ランクBに上り詰めろ」


「分かった」


かなりの無茶振りであったが、ノアはそれを軽々と了承した。

本来Bランク冒険者になるためには数年~数十年かかると言われている。だがそんなことを知る由もないノアは「多分大丈夫だろう」と思っていた。

それは人間族が魔族の身体能力に勝るわけがないことを予め知っていたからだ。

つまりそこいらにいる冒険者ならば私の敵では無いと自負しているからだ。


「では、今すぐ行くとしよう」


「え……今からなの?」


「そうだ、今からだ。『転移魔法』を使うから俺の何処かに掴まれ」


「分かった」


「……」


ノアは魔王の手を握った。

魔王は予想外の所を掴まれた為内心ビックリしたが、嬉しく思った。


「メラよ、少しばかり人間界に行ってくる」


「はい。呉々も人間に見つからないようお気をつけください」


「『転移魔法』"長距離転移"」


ノアと魔王の体は白い光に包まれその場から居なくなった。

後に残ったメラは「今回ばかりはしょうがないですね」とため息混じりに吐き捨て、自分の仕事に戻ったがある物が気になってしょうがなかった。


「……ノア様はお料理が出来たのですね」


メラはテーブルに置いてあるスープを見つめた。

スプーンに手を取りスープを一口飲んでみると、まろやかでありコクがあるスープが口いっぱいに広がった。

メラ自身はここまで美味しいとは思わなかった為パクリともう一口飲んでしまった。


「これを一度飲んでしまえば今まで食べてきた料理が腐っているようにも思えていますね。ノア様の言う通り魔王城で雇っているシェフはその程度ということですか……」


絶品と思っていた料理がまさか料理系スキルを持たないノアよりも数段以上も劣るものだと知ったメラは魔族の味覚は何処かおかしいのか、またはノアの料理の腕前が一級品なのかとしみじみ思った。


「それはさておき仕事に戻りましょうか」


こうして今日もメラは魔王がやる筈だった仕事を着々と終わらせていくのであった。




ーバルジアナ王国王城




ここはバルジアナ王国。人間界で一番魔界との距離が近い王国だ。

そして、その王城のある場所で二人の人間がある事について話していた。

一人は程よく鍛え上げられた眼光の鋭い男ともう一人はフード付きの黒ローブを羽織り、耳が長く、キリッとした顔立ちの男。

二人の関係は言わば上司と部下だ。


「すまぬがもう一度言ってくれ。魔王の動向はどうなっている?」


「はい、魔王は数日前に養子を迎え入れたそうです」


「聞き間違いではなかったか……。魔王が養子を迎え入れるとは随分と優しいのだな」


「そのようですね。三世代魔王を見てきましたが今代の魔王は今まで見てきた魔王に比べてとても穏やかです」


眼光の鋭い男は腕を組み眉間の間にシワを寄せた。


勇者の最終目標である魔王がこうも善人だと些か倒すのが気が引ける。

それにそもそも魔王を殺す意味が俺には分からない。

魔王は確かに悪なる存在だが善なる者も悪なる存在に限りなく等しいと私は考えている。

いや、善なる存在の者の方が真の悪なのかもしれない。

何故なら善なる者は悪なる者よりも多くの命を散らしてるからだ。


「それでその養子はどのような者だ?」


「一言で言えば絶世と言わんばかりの女の子です。ですがどのような魔族なのかは分かっていません。強いて言えば犬歯が少し長いくらいですね」


「長年魔族を見てきたお前でも分からぬか……」


「長年と言っても二百七十年程度ですけどね」


その答えに対して眼光の鋭い男は十分過ぎる歳だろ!と言いたくなったが、グッと堪えた。

今考えることは魔王が迎え入れた養子についてだ。


「お前でも分からないとなると新種の種族か?」


「その可能性も捨てきれませんが、今私が考える中で一番有力なのは魔界の奥で人目を避けて住んでいた種族か或いは絶滅した種族の生き残りかのどちらかです」


「前者は分かるが後者の絶滅した種族の生き残りとはどういう事だ?」


「そのままの意味です。昔何らか事情により絶滅してしまった種族の生き残りを魔王が保護して養子に迎え入れた……まぁそんな感じですよ」


もし後者であれば面白いことこの上ない。過去に絶滅した種族を見れるのならば少しばかり興味がある。だが、前者の考えも中々に面白い。人間族は未だに魔界の奥地に行ったことがない。もしそこに未だ見ぬ種族がいれば是非とも行ってみたいものだ。


「いい事を聞かせて貰った。当分はお前の管理する冒険者ギルドでゆっくりするといい」


「久々の休日ですか」


「休日と言っても冒険者ギルドの運営だがな」


「十分です。冒険者ギルドは言わば家みたいな物ですから」


「いつか森に里帰りしろよ。その時は教えてくれ」


眼光の鋭い男と黒ローブを羽織った男は「ハハハ」と楽しそうに笑いあった。
















第22部はまだ修正途中です。

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