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状況理解

修正終了済み。

「うっ……ここは……」


重たい瞼をゆっくりと上げると、そこは何も見えない暗黒の世界だった。

辛うじて分かることはヌメっとした泥のような地面があるぐらいだ。

少し経つと次第に視界がくっきりと見えるようになってきた。周りを見渡すとそこは不気味な木々が生い茂る森みたいな所だと気づかされた。


「そうか……私って転生したのか……」


何故私は転生をしたのか。

それを思い出そうと頑張るが一向に答えが出なかった。

そして、新しい体をペタペタと触ってみると、ある程度成長していることが分かった。

何故私は赤ん坊ではないのだろう?転生したのだから母親から産まれるのが普通のはずだ。

それに何故転生したのか覚えていないのだろう?

肝心な部分が何かに塗り潰されたかのように思い出せない。

確か……誰かを助けて私は死んじゃったんだっけ?

一体誰を助けたんだ?

それに転生する前に誰かに会っているような気がする。その人の顔も名前も思い出せないし、況してや自分の名前や家族、友達すら思い出せない。

自分の名前すら忘れているなんて重症だ。

これが記憶喪失というものなのかな?

でも新しい人生の始まりだという事には変わりはない。


唯一転生前の記憶があるとすればここは<剣と魔法のファンタジー>な世界だということぐらいだ。

となると……私でも魔法とか使えるかもしれない。

私だって年頃の女の子だ。魔法の一つや二つ使ってみたいという願望はあった。

特に使ってみたかったのが『氷魔法』だ。この魔法は昔私が読んでいた本の好きな敵キャラが使っていた魔法だ。

何で敵キャラ?と疑問に思うかもしれない。

この敵キャラは私がなりたい人物像でもあり、尊敬するキャラだからだ。仲間想いで、何事も嘘をつかず自分の好きなことをして最後は満足して死んでいった人だ。

私はそんな人になりたい。

そしてそのキャラが使っていた氷の技は、色々な形に氷を変えられて応用性もあった。それにキラキラとした水晶みたいで綺麗だったからだ。

その本では想像力が魔法に直接関わってくると書いてあった。


なので私はまず手頃な拳大ほどの氷でも作り出せないかなと思い冷凍庫によく入っていた小さな氷を思い浮かべた。

多分これを少し大きく想像すれば拳大ほどの氷が作り出せると思ったからだ。


すると、手のひらの上に徐々に透明な氷が出来上がってきた。だが調節が上手くいかず五十センチほどの大きさまで一気に大きくなってしまった。そのためあまりの重さにボトリと地面に落としてしまった。


「……一応魔法は使えたの……かな?」


まあ初めてにしては上出来の部類には入るだろう。この調子でどんどん魔法に慣れていこうと思った矢先私はあることに気がついた。

それは「ステータスってあるのかな?」という囁かな疑問だ。

私が昔読んでいた本では自身の能力値やスキルなどが記載されていた。


ここが本当に<剣と魔法のファンタジー>の世界ならばあってもおかしくはないのでは?


「ステータス」


そう口に出してみると目の前に透明な板のようなものが現れた。そこには私の欲しかった情報が大量に載っていた。

因みに私のステータスは以下の通りだ。


____________________

名前:? 年齢:7 種族:吸血鬼

職業:? レベル:1

生命力:50

筋力:10

耐久:10

俊敏:60

知力:110

魔力:100


【スキル】『言語理解LV5』『吸血LV1』『暗視LV1』『痛覚耐性LV1』『成長速度アップLV1』


【技能】『氷魔法LV1』


【称号】《転生者》《絶滅種》

____________________


と、まあある程度は予想通りだった。

元々私は学校の成績はいつもトップだった。もしも知力系のステータス項目があるのであれば一番そこが高いだろうと睨んでいた。

そしてこのステータスを見て一番目を疑ったのは種族の欄だ。人間であるはずの私はどうやら吸血鬼とかいうファンタジー要素全開の種族になってしまったらしい。


「吸血鬼かぁ~……。何か弱点多そうだなぁ」


ここで私が一番に心配したことは弱点についてだ。

吸血鬼は色々な物語に出てくる悪役だ。勿論味方であったり無害な奴もいるが今はどうでもいい事だ。

確か吸血鬼は聖水に弱く、日光にもとても弱い。そして私の中ではニンニクとか十字架が嫌いなイメージがある。

そもそもこの世界にニンニクや聖水という物があるか分からないが、聖水ぐらいならありそうだ。

何たってここは<剣と魔法のファンタジー>の世界なんだからね。

でもこの種族はかなり当たりなのかも知れない。弱点が多いいという事は強い点も沢山あるということだ。そうでなければ吸血鬼という種族は欠陥種族でしかない。今のところ強い点と言えば知力以外だと魔力と俊敏がずば抜けて高いということだけだ。でも筋力が無いのは些かどうかとは思った。

これでは力作業がままならないではないか!


「これからどうしたものか……」


木が空を遮っているせいで今が朝なのか夜なのか分からない。

今私がいる場所がどこなのか分からない。

分からないことだらけで頭が今にもパンクしそうだ。


取り敢えず今私がすべきことは寝床を作ることかな。寝床がなければぐっすりと眠れないし、体力を回復できない。さっき『氷魔法』を一回使っただけで地味に疲れが溜まっている。もし二回目を使おうものなら即地面に倒れ伏しているだろう。

早く魔法に慣れることも今後の課題かな。


「さて、まずは寝心地が良さそうな場所を見つけなくちゃ話にならないかな!」


私が望んでいる場所はなるべく泥がなく、屋根っぽい物があり、少しばかり開けた場所だ。あわよくば日光が照りつける場所がいいのだが如何せん今の私は吸血鬼なため日光がダメかもしれない。もし日光が指す場所を見つけても大丈夫なのか大丈夫じゃないのかをしっかり確認してからではないとどうなるか分からない。もしも日光に触れた瞬間体がボロボロと崩れていったら笑えないからね。

何事も安全第一だ。


それから私はひたすらこの気味の悪い森のような所を歩き回った。

だけど歩いても歩いてもあるのは木だけだった。時々変な鳴き声みたいなものが耳に入ってくるけど気にしたら終わりだと自分に言い聞かせた。

だがそんな私の前に洞窟のようなものが目に入った。これは寝床にする場所として最高ではないか!と思ったが私はある疑問が頭に浮かんだ。

それはここが異世界だと言うことだ。異世界と言えば魔法も使えるし剣も使える。この二つが使えるとなるとやはり魔物とかがいるのではないか?と思った。

それにさっきから聞こえてくる嫌な鳴き声はもしかしたら魔物かも知れないと薄々思ってきていたのであまり考えないようにしていた。

もしも魔物と出くわしてしまったら私はどうなるのだろう?

いや、この疑問にわざわざ悩む必要なんてない。そんな結末はもう見据えていて当然だ。

そしてその結末は確実な死だろう。

私が転生する前に住んでいた地球でもライオンに襲われればか弱い人間なんてひとたまりもない。草食動物だって人を殺すこともある。それはこの異世界でも同じだろう。

まだ魔法すら上手く使いこなせない私はどうやって身を守ったらいいか考えなくてはならない。

だが少しばかり考えがある。それは武器になりそうなものを作り、洞窟に引き籠もることだ。その前に洞窟内が安全かどうかを確認しなくてはいけないが……まあそれは武器を作ってからでいいだろう。


「材料はそこらに沢山生えている木でも良いけど、ここはやっぱり魔法で武器を作ってみたい……。まだ上手くは扱えないけどしっかりと想像すれば出来ないこともないだろうな」


私が使えそうな武器は……剣?それとも槍?。せっかく異世界に転生したのだから異世界っぽい武器を使ってみたい。でもそれを想像することが出来るのだろうか?

今の私では魔法を使えるのはせいぜい後一回が限度だ。その一回で成功させなくては最悪寝ている間にガブリといかれてしまうかもしれない。

そのためにもこの一回で何とか成功させなければ!


そこで私は身近な物を武器として作ることにした。

それはどの家庭でも絶対に置いてある包丁だ。包丁は料理などに使うが最悪人も殺すことが出来るある意味一石二鳥の刃物だ。

でも今私が魔法で作り出すのは包丁に似せた刃物だ。包丁なんて異世界の雰囲気に合わない。だから少しだけ形を変えるのだ。


私はまず最初に普通の包丁を想像し、そこから少しずつ刃の部分を細く、そして長く想像していった。要は短剣みたいなものだ。リーチが少々短い気もするが、もう少し魔法が達者になってきたら改良する予定だ。

そして出来上がったものは水晶のように透明な短剣だ。柄の部分は本物の水晶のように六角柱にした。ただの長方形のような柄はつまらないと思ったからだ。

持った感じ別に違和感もないし斬れ味も充分にありそうだ。

でも氷だから脆そうだ。

この世界の氷事情は全く知らない。だから氷の強度とか特性がイマイチ掴めない。


「でもまあ……そこらの木にでも斬りつけてみたら分かることか。一応普通の氷じゃないみたいだし」


この氷には冷たいという感じがしなかった。むしろ生暖かいという感じだ。

これではすぐに溶けるではないか!と最初は思ったが、しばらく握っていても水滴が一滴も垂れてこない。

まるで本物の水晶のようだった。

これならば気軽に使える。溶ける心配も手が冷たくなる心配もない。後は強度だけだ。強度を確かめるために少し強めに近くの木に向かって切りつけてみた。すると一センチばかりの切り口が横一線についた。刃を見てみても欠けた様子がないことからある程度の耐久力がある事が分かった。


「この世界の氷は根本的に地球とは違うのかな? それともこれは魔法によって作られたからかな?」


謎が深まるばかりだが便利なのでそれから私はこの疑問について何も考えないことにした。

さて、洞窟調査だ。

今日ここで寝るとしたら何がいるのかを知っておかなければいけない。私としては何もいないことに越したことはないが、よく見るとチラホラ骨の様なものが散らばっている。

洞窟に入る前から嫌なものを見てしまったが、頑張って洞窟中を調査しない事には気になって寝られない。もしもボスクラスの魔物とかがいたら速攻で違う寝床を見つけるまでだ。

だが倒せそうな奴であれば倒そう。

これが今生き残るための最善策だ。










次部もよろしくお願いします!

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