表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

勇者と一方で……

修正終了済み

あの日俺たち陸人と新一はクラレント王国に勇者として召喚された。

最初はどうしたら良いのか分からなかったが、クラレント王国の騎士長であるユークリッドさんと、クラレント王国第一王女であるリーリア・エマ・クラレントさんの助けもあり、今ではかなり落ち着いた。


召喚されたその日に勇者としての役目を説明されたが、全てあの忌々しい召喚神から大方聞いていたので、そこら辺は直ぐに理解出来ていた。


だけど何で人間族以外の種族を滅ぼさなければいけないのだろう?

共存すれば少なくとも損はないはずだとリーリアさんに言ってみた。

するとリーリアさんは「昔人間族は様々な種族から虐げられていたのです。大切な人を奪われ、土地奪われ、実験動物として扱われた悲惨な過去もあります。人間は弱いですが、数ではどの種族よりも勝っています。その利点を活かし、全種族を討ち滅ぼすのです。そうすれば人間族は未来永劫平和な暮らしを送れるようになります。だから人間族以外の全種族を滅ぼすのです。その大役をになっているのは異世界より召喚されしあなた達勇者様方です」


と話された。

確かにそのような過去があるのならば共存という選択肢は今の人間族には無いのかもしれない。だが話せば分かってくれる者もいる。 世界には良い奴もいれば悪い奴もいる。その区別さえはっきりすれば何か道はあるはずだ。



「ハァハァ……! もう一本お願いします!」


「その意気だ! ようやく様になってきたな!」


今俺はクラレント王国騎士長に稽古を付けてもらっている。

騎士長ユークリッドさんは『守護騎士』と呼ばれる職業を持っている。

『守護騎士』は『聖騎士』と同じ、数ある職業の中でも上位に位置する職業だ。

上位の職業ほどその人物は強くする効果があるのだが、最高位職業である『勇者』の職業を持っている俺でもユークリッドさんに触れることすら出来なかった。

これは歴戦の結果が招いていることだろう。

俺は戦争とは無縁の日本で生まれた人間で、ユークリッドさんは戦争など日常茶飯事である異世界で生まれた人間だ。


早くこの世界の常識を覚えなければこの先一生ユークリッドさんには勝てないだろう。


「その調子だ! リクト! この世界は力がなければ死ぬだけだ! だが人間にも限界がある! だがお前はその限界を打ち破れる力を持っている! だからもっと強くなれ!」


「はい!」


くっ! どんなに打ち込んでも返されてしまう!

筋力はこっちが高い筈なのに何故攻めきれないんだ!


悔しくなり眉間にシワを寄せながらひたすらユークリッドさんに向かって剣を打っていると……


「今何で攻めきれないんだと思っただろ?」


「よく……分かりましたね」


ギリギリと鍔迫り合いをしていると、ユークリッドさんがそう言ってきた。


「俺はお前より技量がある。それが俺にお前がは攻め込めない理由だ。いずれお前は俺を超えるような存在になる。その時は俺の剣の稽古に付き合ってくれや」


「そんなもの何年後になるんです……か!」


陸人がユークリッドを力任せに吹き飛ばした。本来なら倒れてもおかしいのだが、ユークリッドは空中でくるりと一回転をしてから地面に着地した。

それを見た陸人は「やっぱり流石ですね」と言った。

だがそれを聞いたユークリッドは「こんなことAランク冒険者以上の奴らなら軽々こなすぞ」と笑いながら言った。


「お前なら大丈夫だ。自信を持って剣を持て! 力を持って敵を討て! この二つさえ覚えていれば何だって出来る!」


「ぐっ!」


ユークリッドは陸人に一瞬で近づき、空高くから剣を勢いよく振り下ろした。

陸人は即座に剣の腹で受け止めたが、足がよろつきその場にばたりと倒れてしまった。


「全く勝てるビジョンが浮かばないな」


「ガハハハハッ! 自分を信じれば大丈夫だ! 俺はそろそろ兵舎に戻るとしよう。まあ頑張って鍛錬するんだな」


「はいはい分かりましたよ」


兵舎に戻るユークリッドさんの背中はとても大きいものだった。俺も早くあのくらい大きな背中を持ってみたいものだな。


「新一……頑張ってるかな」


何故だか分からないが陸人はそうポツンと口に零した。


新一は残念なことに『勇者』の職業を持っていなかった。

だが『全属性魔法士』という世にも珍しい職業を持っていた。

この職業は名前からして凄いものなのだが、俺の予想を遥かに超えるような職業だった。それは成長すれば勇者とタイマンで戦えるある意味勇者よりも凄い職業だった。

成長すれば勇者とタイマンで戦えて、それでいて魔法も一級品だ。

だがその分デメリットがあり、魔力の調節をミスると体が爆散するそうだ。その為新一が魔法を使えるようになるのは『魔力操作』というスキルを獲得してからだそうだ。

それを知った俺は只只頑張れとしか言いようがなかった。


お前の親友として言うが、爆散とかいう死に方は止めてくれ。

本当に……。


地面に寝転がりそんな事を考えていると、一人の兵士が俺の所によって来た。


「リクト様! これより我々蒼穹の騎士団とリーン渓谷に行ってもらいます!」


「聞いてないんだけど?」


「ですので今申しました!」


「……分かった。それで出発は何時だ?」


「本日の夕方でございます!」


「今日!」


「はい! ですので準備が出来次第転移門に集合となっております。呉々も遅れないようにお願いします!」


「分かった」


「失礼しました!」


突然過ぎるにも程がある。

まさか騎士団の人達とリーン渓谷に行くなんて驚きだな。

心配な所もあるが、騎士団も居るのだし多分大丈夫だと思う。

まあ出発は夕方なんだしゆっくりと支度しようかな。


本当はさっさと寝たいけど命令ならばしょうがないか。



ー同時刻



「……ん」


「ようやく目が覚めたか」


体が重い、それにここはどこだ?

私が住んでいた森ではないようだけど……。


「困惑しているね? それにしてもお嬢ちゃんの回復力は侮れないねぇ。まさか二日で回復するなんて驚きだ」


「……誰?」


私は重い体をゆっくりと起こした。


悪い人には見えないけど、一応誰なのか聞いておくことにした。

この赤髪の人の言葉から察するに私は助けられたのだろうけど、まだ安心はできない。


「私の名はマルク……マルク・シーンバと言う。マルクと呼んでくれると嬉しいねぇ」


「私の名前は……」


よくよく考えてみれば今の私には名前が無いことに気づいた。

あの森では私以外に誰も居なかったから全然気づかなかった。

一応は転生初日に名前ないじゃんと思っていたけど、別に今は無くても困らないから後でいいやと思っていたので今まですっかり忘れていた。


「名前が無いのはどうも不便だねぇ。後でセルにでも付けてもらえばいい」


「セル?」


「セルはこの国の王様だ。その王様に君は拾われてきたんだよ」


「この国の王様は暇なの?」


「何でそう思うんだい?」


「だって王様なのに森にいた私を見つけてここまで連れてきたんでしょ?」


「確かにあなたをここに連れてきたのは王様だけど、王様は全く持って暇じゃないんだよねぇ。まあ要するに仕事が嫌で逃げてきたらあなたを見つけたと言うべきかねぇ」


そんな王様でよくこの国が成り立っているものだ。

それを許してしまっている部下もどうかと思うが……。


「あなたは吸血鬼族の生き残りか何かかい?」


何で私の種族を知っているのだ?と疑問に思ったが、この赤髪の人は私みたいな鑑定系スキルを持っているのだろうと考えついた。

でなければ私のステータスは見れないはずだ。


「分からない。でも気づいたら森の中だった」


「じゃあ……いや、何でもない。……ではあなたは魔石についてどう思う?」


このマルクと言う人が意味の分からない質問をしてきた為、頭の上に一瞬「?」の文字が現れた。

まあ答えるとしたら、ただただ綺麗な宝石辺りなのかなと思っている。

実際私は魔石を見たことがない。

魔物の体内を弄れば出てくるとは思っていたけど、気持ち悪かったのでそんなことはしなかった。


「綺麗な石」


私はそう簡単に答えた。

それを聞いたマルクは「うんうん」と頷いた。

一体何に対して頷いたのかは不明だけど、決して馬鹿にされているような感じはしなかった。


「さて! 目が覚めたのだしセルの所に行くとしようかねぇ。セルはあなたが起きるのを今か今かと待ち望んでいたんですよ」


「何で?」


「さあ? 何ででしょうかねぇ?」


そうマルクは質問を質問で返してきた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ