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魔窟の大森林

やはり3000字以上はえげつない程書く時間が取られますね。


修正終了済み

 この頃魔窟の大森林の様子がどうもおかしい。何故魔窟の大森林から魔物が逃げ出していくのだ?

 あの森は魔界でも屈指の魔物の数と高ランクの魔物が徘徊しているとはいえ何故わざわざ魔素の少ない森の外へ次々と逃げ出しているのかさっぱり分からない。

 あの森の魔物は高い濃度の魔素を常時、体に取り込むことによって生命活動を維持している。それなのに、わざわざ魔素の少ないところに行ってしまった日には一日と保たずに命を落としてしまうだろう。この頃魔窟の大森林ではそういう魔物があとを絶たなく対処に追われている。

 このままでは魔窟の大森林周辺の地域が魔素切れで死んだ魔物の死骸で溢れかえってしまうかもしれんな。 

 どうするか悩んでいると扉が勢いよく開き一人の兵がやってきた。


「魔王様! 大変です!!」


「はぁ〜……、また魔窟案件か?」


「はい! その通りです!」


 数日前からこの案件が俺の所に大量に届くようになった。大体は死体が腐敗してきて臭くなってきたとか、魔窟から出てきた魔物が人を襲ったとかがほとんどだ。


「今度は何だ? また腐臭騒ぎか?」


「いえ違います! 幻魔族の情報によりますと、第四エリアのボスであるヘル・バーバードが死んだとのことです!」


「何だと! ヘル・バーバードがそんな簡単に死ぬわけないだろ!」


 ありえないことを耳にしてしまい激しく動揺してしまった。

 ヘル・バーバードのランクはA+のはずだ。そんな高ランクの魔物がそうやすやすと死ぬなんてありえない。

もし本当にヘル・バーバードが死んだのならば魔窟の生態系が崩れてしまう。


「おい! ヘル・バーバードは魔窟の外で死んでいたのか!」


「い、いえ! 魔窟内で死んだと報告書には書いてあります!」


 一体どうなっていると言うのだ!

魔窟の外ならばまだしも、魔窟内で死ぬとならばおおごとだ。


「死因は?」


「報告書によると……生存競争に負けたようですね」


 となると第四エリアにヘル・バーバードを超える新しい魔物が生み出されたのか?


「何か変だ。俺は今から第四エリアに行って来る。メラにそう言っておいてくれ」


「メラ秘書は只今、隣の国に行っております」


「あー……そうだったな。では、メラに気づかれる前に行って帰って来るとしよう」


 魔王は『転移魔法』を使い一気に第四エリアへと向かった。

 

第四エリアには主に、ヘル・バーバードとパープルサーペント、パープルスライムなどの『毒魔法』を使う魔物が多く生息しているエリアだ。

その中でも一番毒性が強く、巨大な体持ち合わせたヘル・バーバードは、魔窟の大森林で一番の『毒魔法』の使い手であったはずだ。

 

一瞬で魔窟の大森林に来た魔王は「相変わらずジメジメとしていて気持ち悪いな」と口に出した。 それもそのはずだ何せ魔窟は日光の光すらも遮る黒樹が魔窟の大半に生えているのだから。


それにしても久しぶりに来る魔窟はやはり暗いな。『暗視』か『光魔法』を覚えてないとこの魔窟の攻略不可能だろう。

 魔族である俺は『光魔法』を覚えられないため『暗視』に頼るしかない。

 『光魔法』をもし覚えられたとしても、体が焼け焦げていってしまう。

 『光魔法』は他の魔法に比べて数少ない『耐性』の無いスキルだ。

 魔族と悪魔族以外には『光魔法』の『耐性』スキルは必要のないものだからな。



―魔王城



「魔王様は一体どこにいるのですか?」


「え〜と……魔窟です……ね…」


「チッ! 仕事が嫌でまた逃げましたね。魔窟に行くのは幻魔族に任せればいいと言うのに。幻魔族には魔王の剣(シルヴァーナ)序列五位のジールがいるじゃないですか!」


 魔王に報告書を持ってきた兵士に向ってそう言うのは、魔王の秘書であるメラだ。メラは魔王が今日何の仕事をするかなどを決めたりしているのだが、魔王はメラの決めた仕事を時々逃げ出し、どこかに行くことがしばしばあった。

 

それが魔王の秘書であるメラの最近の悩みだ。


「で……魔王様が自ら魔窟に行くとなればそれ相応の事態が起こっているということですよね?」


と、メラは怖い顔をして魔王に報告書を持ってきた兵士に問い詰めた。


「へ、ヘル・バーバードの死をお伝えしました」


 ハァ〜……。本当に魔王様には困ったものですね。あの方は自分が魔族の統率者としての自覚はあるのでしょうか。大体魔王様が国民や軍隊を統治しないとこの国は終わりだってことくらい分かってると思うのですけど、あの方はどうもサボりぐせがあるせいで私達がどのくらい苦労をしているのか分かっているのでしょうか。


「しょうがないですね。魔王様には帰ってきたら徹夜してでも今日の仕事を終わらせてもらいましょうか」


 

―魔窟の大森林第四エリア



「「「キシャァァァァ!!」」」


「むん!」


 魔王は今……ポイズンサーペントの群れに襲われていた。

 何故こうなっているかというと、興味本位で見つけた洞窟に入ってみた所、ポイズンサーペントの巣だったらしく縄張りに侵入した外敵だと思われ一斉にポイズンサーペントに襲われたのだ。


「鬱陶しい!」


 魔王に数十匹のポイズンサーペントが絡みつく。

ある蛇は腹や足、腕に噛みつき、またある蛇は腕や足に絡みつき魔王が身動きをとれないようにしていた。

 ポイズンサーペントは、力こそ弱いが、仲間と協力して襲ってくるので厄介極まりない存在だ。しかも『毒魔法』を持っているため『毒耐性』のスキルを持っていなければ命を落としかねない魔物でもある。


「『神雷魔法』"感電"!」


 魔王は『神雷魔法』の"感電"を使い、体にまとわりついていたポイズンサーペントを感電させ、引き離した。

 足元には感電したことによって気絶したポイズンサーペントが数十匹倒れ伏している。


「興味本位でこんな洞窟に入るんじゃなかったわい。かなり時間を無駄をしたな」


「「「キシャァァァァ!!!」」」


 安心したのもつかの間だった。

魔王は後ろを振り向くと、洞窟の奥からポイズンサーペントの援軍が大量にやって来た。

 増援に来たポイズンサーペントはあきらかに数百匹を超えている。


「どんだけいるんだ……。流石の俺でもこの数を相手にするのは面倒くさいな」


 ポイズンサーペントは魔王の身体に牙を向け、噛みつき、さらに絡まっていく。

魔王は『毒耐性』を持っていて本当に良かったと内心ホッとした。でなければ今頃ポイズンサーペントのエサに成り下がっていたかもしれない。魔王と言われる者が下位魔物に殺られたりしたのならば末代まで笑いものされてしまう。


「どうせこいつ等を感電させたところでまた後から出てくるのは目に見えている。ここは…逃げるべきだな」


 洞窟の入り口に向って振り返り、全速力で駆け抜ける。身体にまとわりついたポイズンサーペントは、感電させて引き離した。後ろからはポイズンサーペントの群れが床や天井、壁に一面に居り、魔王をゾロゾロと追いかけてきている。


「確かポイズンサーペントは縄張りに侵入した外敵を見失うか、死ぬまで仲間と追い続ける特徴があったな。俺としたことが忘れていた」


 どれほどまでに俺をポイズンサーペントが追いかけてきているか『気配察知』で調べてみたところ、あまりの数の多さに頭が割れそうなくらいの頭痛がした。

何故頭が痛くなったかというと、普通に脳の情報処理能力の限度を超えたためだ。これはよくあることだ、迷宮の壁や木や草が密集しているところでは、指定したものだけを探すことにあらかじめ設定をすれば大丈夫だが、ところ構わず『気配察知』を発動させるとこうなってしまう。


「久しぶりに頭痛を覚えたわい。いや、仕事をしている時は毎回頭痛に悩まされているか」


 魔王は近くの木の上に飛び移りポイズンサーペントが何処かに行くまでそこで待機することにした。

 やがてポイズンサーペントは魔王を見失ってしまったため、巣穴である洞窟に帰っていった。


「ふぅ。あの洞窟は今後立ち入り禁止指定をしておくか。俺みたいなことになるかもしれんからな」


 それから魔王はポイズンサーペントのいる洞窟から少し歩いた先に大きなものがあることに気がつき、少し早足でその場所に向かった。

それはこいつがヘル・バーバードを倒した魔物かもしれないと思ったからだ。

 やがて目の前には大きな体を持った魔物と魔王は出くわした。目の前に現れた魔物を見た魔王はあんぐりと口を開けるほど驚いた。その巨大な体は明らかにヘル・バーバードを超えており、全長十メート以上はあろうかという巨大な蛇だった。


「これはポイズンサーペントの上位個体か! 確かにこいつならヘル・バーバードを倒せるかもしれないが……何故死んでいるんだ?」


 体の至るところに切り傷や何かで貫かれたような跡があり、ところどころに凍らされような形跡があった。

 多分だがこいつの死因は大量に血を流しすぎて死んだか、凍傷による急激な体温の低下によって死んだかのどっちかだな。

 だが、こいつは確かSランクの魔物のはずだったと思うが一体どんな魔物に殺られたんだ? 

 Sランク超えだと竜種辺りかもしれないな……。

 この魔物をこのままにしておいてもいいが、こいつは体中に、大量の毒を持っているせいで長時間ここに置いておいたらこいつを食べた魔物達が毒によって死んでしまいさらに被害が拡大してしまう。

こいつを他の魔物が食べて死んでしまったら更に魔窟は腐臭だらけになってしまうわい。

 

『火炎魔法』で遺体を処理しようとした魔王は近くで何かの反応があることに気がついた。この反応はポイズンサーペントでもなければポイズンスライムでも何でもない反応だ。

 魔王はその反応のするところに行ってみた。するとそこには口から血を吐き倒れ込む少女がいた。


「大丈夫か! 今こいつを焼きはらったら医療所に連れて行ってやるからな! ちょっと待っていてくれ!」


 魔王は急いでポイズンサーペントの上位種を『火炎魔法』で焼き払い、血を吐く少女を抱きかかえ、『転移魔法』で城に帰還した。










 



やっと、本編的な話に辿り着けました。


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