決定
修正終了済み
ヘル・バーバードの戦闘からはや数日が経った。あれからヘル・バーバード程の相手は出てきてはいないが、私みたいに犬歯が長くて、体がとても細長い生物を発見した。
色はとても黒く、ブラックマンバみたいだ。
『鑑定(魔)』でステータスを覗いてみると、パープルサーペントと表示されていた。
一体どこに紫要素があるのか分からないけど、そう表示されているのだから今後パープルサーペントと呼んでいこう。
そしてパープルサーペントは私と目が合うなりいきなり足に噛み付いてきた。急なことだったのでついうっかりカプッ!と一噛まれてしまった。
パープルサーペントを無理矢理足から引き剥がし、地面に思いっきし叩きつけると、パープルサーペントはピクピクと痙攣した後にパタリと動かなくなった。
倒せたのは良かったのだが、その後パープルサーペントに噛まれた足は力が入らなくなり、傷口が赤く腫れてきた。
これはもしかして毒の類かな?と思った私は再度ステータスを確認することにした。すると、【技能】の欄にはっきりと『毒魔法』と表示されていた。
これは明らかな不注意だった。
「あっ……痺れて足に力が入らないや」
こうなってしまっては安静にしているしかない。
でも幸いなことにどうやら毒はヘル・バーバードよりも数段階弱いので大事に至ることはないだろう。
毒が弱いのは幸運だったけど、やっぱり立てないのは致命的だ。
「もしかしてあのヘル・バーバードがここの森でボス的な存在だったのかなぁ?」
この暇な時間を持て余すのは勿体ないなと思った私は数日前に戦ったヘル・バーバードのことについて考えてみることにした。
あまり考える意味は無いのだが、如何せん足が痺れて何も出来ないので暇つぶし程度に考えてみるだけだ。
ヘル・バーバードは今まで戦った魔物より遥かに強い存在だった。
強い存在だったのだがあの強さは流石に異質だ。
今まで戦ったシルバーウルフと比べれば雲泥の差ではないか。
仮にヘル・バーバードをここのボス格としよう。そう考えればあの強さも少しは頷けるのではないのだろうか?
……うん、そうしよう!
そうじゃないと私の心と体が持たない。
もしヘル・バーバードがもう一体現れたってきたら洒落にならないしね。
ちなみについさっきうっかり倒してしまった細長やろうの血はかなり美味だった。
ここら辺の森にくるとシルバーウルフ程度の強さの魔物の血でも格段に美味しくなってきている。
その後無事にある程度は回復した私は更に森の奥に進んで見ることにした。
パープルサーペントに噛まれたところは感覚がいつも道理に戻ったし、腫れもある程度引いてきた。『氷魔法』で冷やしてたから早く和らいだのかもしれない。
『気配察知』スキルのおかげで周りに魔物らしい魔物はいないと分かったけど、ヘル・バーバードみたいに『気配遮断』のスキルレベルが私よりも高ければ『気配察知』スキルは通用しないから気をつけないといけない。
だけど『気配察知』には一匹も魔物の反応がない。
こんな事は前にもあったけどここまで魔物が見つけられないなんておかしい。
何か異常な事がこの森で起こっているのだろうか?
それから私は不気味なほど魔物と遭遇することなくズカズカと暗い森の中を進んでいった。
すると、目の前に懐かしくもあり、どこか見慣れている光景を目にした。
それは「光」だ。
太陽があるのだから光なんてありふれていると思うかもしれないが、この森は木々が生い茂りすぎて光という光を拒んでいる。そのため私はこの世界に生まれて此方光というものを見たことがなかった。
では何で光すら届かないこの暗い森の中で生活できているのかと言うと、それは私がずっと『暗視』のスキルを使っていたからだ。
このスキルがなくては私はとうの昔に魔物に襲われ、食われていただろう。
光を久しぶりに見た私は嬉しさのあまり全力で光が見える場所まで走った。
日光は吸血鬼の弱点なのかもしれないと言う考えは頭にあったのだが、どうしても我慢出来なかった。
そして私は光の先にあった光景に目を奪われた。そこはそれほどまでに美しい光景だった。
色とりどりの植物が生え、綺麗な川が流れ、木には所々にリンゴのような赤い果実が実っていた。何より眩しいく、そして暖かい光が私を包んでいった。
「暖かい……」
決して初めての日光という訳では無いのだが、何故か目が潤んできた。
私は最初に足元一面に広がる色とりどりの花のようなものを一つ手に取ってみた。
草もれっきとした生物みたいなものだし、『鑑定(魔)』を使えるかもしれない。
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【リラナ・ポテラス】採取難易度:A
魔素の非常に高い場所と空気の薄い場所でしか育たない希少な香花。主に最高級の香水に使われる事が殆どだが、乾燥させるとお茶にすることができ、香り強く気品に満ち溢れたお茶になる。
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どうやら植物にも『鑑定(魔)』が使えるらしい。
説明を読む限りこの花を使って香水が作れるらしいけど、私は香水という物の作り方を知らない。
そもそも香水を使ったことが無いのでどういう匂いなのかすらも分からない。
だけどお茶のほうは少しだけ知識があるから後で試してみよう。まあお茶の知識はあると言っても付け焼き刃程度だけどね。
次に私が目をつけたのは立派な木の枝に生えている、リンゴのような赤い果実だった。
リンゴっぽい見た目だけど、リンゴが異世界にある訳ないので、取り敢えず『鑑定(魔)』を使った。
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【スラ・マラス】採取難易度:S
魔素の非常に高い場所でしか育たない希少な果実。歯ごたえはシャリシャリとしており、革がついたまま食べられる甘い果実。
昔は上級貴族や王族が好んで食べていたものだが、魔素の量が多いい場所ではランクの高い魔物が住み着いているため、滅多に市場に流通しないため、幻の果実と呼ばれている。
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これはそのまま食べられるみたいで良かった。それになんか幻の果実ってことはそれはもう相当にすごい果実なんだと思う。
私は幻の果実である【スマ・マラス】をひとかじりしてみた。
すると、口の中を甘い液体が包み込んだ。噛めば噛むほど甘い液体が果実から滲み出てくる。そして、シャリシャリとした食感は、やみつきになりそうなほど気持ち良く、味はヘル・バーバードの血に引けを取らないほど最高だった。
「すごく甘い……。何より食感が最高」
あまりの美味しさに、もう一個食べてしまった。確かにこんなにも美味しいのなら幻の果実って言われていてもおかしくはない。
【スマ・マラス】を食べ終えた私は、体中の血を近くの川で洗い流すことにした。
川はとても澄んでおり、ろ過しなくても飲水として使えそうだ。
だが残念なことに魚は一匹もいなかった。
まあ綺麗な川があるだけマシというものだ。
シルバーウルフの毛皮から作った服を脱ぎ、つま先からゆっくりと川の中に入った。
川の水はヒンヤリと冷たく、とても気持ち良かった。それと同時に体中についていたヘル・バーバードの血が一気に洗い流されるような感じがした。
やはり体の汚れを落とすというものは気持ちいい。
「暖かい日光がさして、お茶の原料もあって、美味しい果実もあり、綺麗な川も流れてる。これはもう本拠点を作る場所としてはうってつけだね」
そう言えば吸血鬼は日光に弱いと思っていたがそうではないらしい。
実際のところはすっかり日光の事を忘れて、あまりの嬉しさに飛び出しちゃったんだけどね。
もう少しそこら辺をちゃんとしなくちゃ死に急いじゃうよ。
まあ結果として、これでもかと言うほど最高の場所を見つけられたのだし、まあいいか。
後ここに足りないのは果実以外の食料かな?
果実は数に限りがあるけど魔物ならそこら中に沢山いる。
何でかここら辺には魔物はいないから少し道を戻って捕まえることになりそうだけど。
「果実は非常食用にある程度とって置いた方がいいかな。なんかあった時に困るし」
拠点問題も食料問題も解決出来たことだし、本格的に家を作っていこうかな。
今まで洞窟とかそこらの草むらにひっそりと隠れて生活してたけどそろそろまともな家が欲しい。
今の私には精神的で肉体的な癒しが必要だ。
その為にも立派な家を作り、魔物を気にせず眠り、毎日自由気ままに生きる。
それが私の求めている最高の生活環境だ。
2桁台の部は修正期間は決めていません。
理由は少しだけ文章を変えるだけだからです。




