女子的生活
「夕食はディナーで
素敵なステーキなの♡」
なんって素敵な言葉。ただのオヤジギャグなのにノックアウトされた。
みきは全力で毎日を楽しんでいる。東京で、マンションを友達とシェアして、いいなと思った子といちゃいちゃして、オシャレな服を着て、アパレルメーカーに勤めてきびきび働いて、カロリーと戦って、朝食はシリアルで、合コンではどの子を狙う?って作戦会議、毎日水が流れるように女子トークを繰り広げて、情けない男たちを罵り痛快にやっつけたりなんかして。
カッコいい女子の素敵ライフな話。と思いきや。
騙された! 裏切られた!と思った。
ただポップでふわふわしただけの話を、坂木司が書く訳がなかった。
勿論、気が付かなかっただけで、帯を見れば予想は可能だったのだけれど。
カッコいい女子のみきは、その姿に見合うだけの戦いをしてきた、歴戦の戦士。
そんなみきの生活は、激闘の結果勝ち取ったもの。だからその生きざまが輝く。ひとつひとつの言葉に、ありふれた出来事に、すらりと背を伸ばして戦うみきの在り方がかいま見えるから。
「なんで結婚したらオールクリア、みたいな気分にさせられるんだろうね?
私にそれを刷り込んだのは、誰? そいつを、叩きのめしてやりたい」
わたしたちは皆、生まれた時から、何かにつけて常識を、価値観を、普通を刷り込まれて来た。
女の子だから赤いランドセル。
女の子だからピアノ。
女の子だからスカート。
女の子だから乱暴な言葉を使わないで。
成績を上げなさい。良い学校に入りなさい。
良い会社に就職しなさい。良い夫を見つけなさい。
そろそろ結婚したらどう。
旦那さんはたてるもの。逆らっちゃいけません。
ひと昔前に比べて、今は随分自由になった。
でも、それは、他の先進国の文化に配慮して表立って言わなくなっただけで、日本の多くの人の意識の底にまだこびりついている。
女の子だから、男の子だからって先入観は良くないよね、もっと自由でいいよねと思いつつも、
友人が女の赤ちゃんを産んだら出産祝いはやっぱり青や水色よりも赤やピンクを選んでしまうし、
女の子が男の子顔負けの汚い言葉遣いをしていたら、
もう少しおしとやかになってほしいなあ、と思ってしまう。
こんな固定観念から本当に自由になるのは、きっとまだまだずっと先。
だって、私の時代は自由でも、私を育てた親は、もっと普通はこうってものが残っていたんだもの。
私の親を育てた、私の祖父母は、もっともっと残っていたんだもの。
その刷り込みを何代もかけて薄くしようと努力している人々の中で、
みきはそれを飛び越えていく。
無論簡単にではない。「普通」の意識に自分の価値観を傷つけられ、叩きのめされ、時には家族からも批判されて、くじけそうになったこともある。
でも、少しずつ、卵の殻を雛が内側からつついて破ろうとするように、
少しずつ、自分で考え、知識を得て、はばたこうとする。
翼は傷ついても、青く広い大空に向かって。
「お前のちっさいものさしで、みきを計るな!
みきは、どこに出しても恥ずかしくない、俺の大切な友達だ!」
いやーっ! 恥ずかしい!!
と、のたうちまわるみきがとても愛しい。
甘くって、ふわふわしてて、きらきらして、オシャレで、素敵な女子的生活を、
みきがずっと楽しめますように!




