スクープのたまご
電車の釣り広告に週刊誌が出る。過激な表題、煽り文句。どこぞの誰が誰と不倫、スキャンダル、腐敗政治、汚職、事件や社会の裏側がどうなっていた。つらつらと眺めて、へえ、こんなの本当かな、やらせとかガセネタなんじゃ? いやでももし本当だったら‥、なんて。
美容院で暇を持て余したとき、銀行の待ち時間、置いてある雑誌を手にとって、ふうん、こんな雑誌があるんだね、初めて見るよ、いやいや、買ったことなんてないよ、今たまたま。そんな顔をしながら、心中は刺激的な記事に好奇心でいっぱい、一体何が書かれてあるのか、はじめは疑い半分、そのうち夢中になって読みふける。
そういう、良家のお嬢さんが手に取るのは少し後ろめたい、でも下世話な興味をがっちり満たしてくれる週刊誌。
この『週刊千石』は、そういう雑誌の一つらしい。
主人公24歳の日向子は、歴史あり名だたる出版社千石社に就職、そして二年目にして、よりにもよって、その週刊千石の編集部に配属させられた。取材は厳しくきつく、墓参りに来る人捕まえるために何日も張ることもあれば、突然女子高校生風に変装して一人で聞き込みをして来いだとか、スクープを捕まえるためにカメラマンと恋人のふりをしてみたりする(よくある1シーンだけど、描写にどきどき)。人気の途絶えた廃村を探してマジで遭難しかかったり、強引に遺族のコメントを奪取しようとして、「人の家の不幸に群がって恥ずかしくないんですか?」と泣かれる。
報道に長所と短所があるとしたら、短所を煮詰めてできたような人たち。その一員になれと言う。
でも、けれど、
この世の中に週刊誌はあるし、買う人もいる。
その作り手は、一体どんな意味を見出してそこにいるんだろう?
物語は6話構成になっていて、
各話それぞれテーマがある。読んでいるときはそれを遠く感じた。ゆるい、と。
しかし、最終話に向かうに従って、1話からの伏線がすっと浮き上がって来る。重なりの中に見えて来るものがあり、その先を見たいと思う。
「あんたたち、警察に捕まったりしないかい? 発売に待ったがかかったりしないかい?」
話を聞いてくれるだろうかと、いぶかり、恐れ、不安に思う相手に日向子は言う。
「こちらには表現の自由があります。日本国憲法で保障された権利です」
だからためらわない。彼らは止まらない。
ぶれないその姿勢に、不覚にもかっこいいとしびれる。
そしてそれは、まだたまごでしかないのだ。
という訳で、後半ぐいぐい来ました。
大崎梢さんの、千石社のシリーズはどれも面白く(『プリティが多すぎる』もいいよね!)、今回も楽しかった。次はどんな切り口で来るのかと、期待して待っています。




