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neoteny [archetype]  作者: 真宵 遙
episode 1:予兆
7/9

phase.1-2 機械塔(5/5)

「待ってくださいよ、久本さん!」

 高槻が慌てて後を追う。

「久本さんらしくないですよ、まだ引き下がるには早すぎます」


 すると、久本は歩みを止めた。高槻の方へ振り返ると、彼ではなく、本部長室のドアへ視線を移した。


「彼奴は昔からああいう奴だよ、だが……ありゃもう傀儡に成り果てちまったのさ」


 そこには、亜城を憐れむような悲しい瞳が窺えた。


「それに、元から彼奴から聞き出そうなんて思ってはいなかったさ」


 久本に促される形で高槻は共にエレベーターに乗り込んだ。エレベーターは黙々と中央塔を1Fまで下降していく。


「あのお嬢さんのこと、知りたいんだろ?」

 久本は高槻の耳元で囁いた。


 高槻はその時ばかりは何も答えなかった。


 

 二人はゲートを抜け、既に車の元までやって来ていた。行きとは反対に今度は高槻が運転席に乗り込んだ。高槻の後に続きゆっくりと助手席に乗り込んだ久本は、ハンドルを握ろうとしていた高槻の左手首を右手で掴んで、「まだ車は走らせるな」と合図した。

 そして久本は誰かに連絡に入れた。


「はい。もしもし?」

「やあ、元気かい?」

「その声は……もしかして、久本さんですか⁉︎」

「ああ、ところで借りばっか作っちまって悪いんだが……色々と情報が不足していてね、困ってるんだよ」

「……といいますと?」

「〝proxy〟……いや、寧ろ警察内部の事情が先か」

「……なるほど、どうやら穏やかじゃなさそうですね」

「それで、だ。今から会えないか?」

「それは構いませんが、久本さん、“枝”付けられていないかちゃんと確認してますか?」

「ああ、当たり前だ。年寄りを馬鹿にするな」

 久本が僅かに口角を上げて笑った。

「お前さんは……大丈夫なのかい?」

「僕の居る区画は電波傍受されませんよ、それに、勿論細心の注意は払ってます」

「その辺は相変わらず流石だな」

 久本は続けた。

「じゃあ、待ち合わせの場所はお前さんに任せる、時間は今から四十分後でどうだ?」

「えっと……多分大丈夫だと思いますが、因みに久本さん、今何処です?」

「それ位自分で特定しろ、お前さんはそういうの得意なんだからな」

「優しくないですね、久本さん」彼は微笑んだ。

「それはお前さんを信頼している証さ」久本にもまた笑みが溢れる。

「お前さんには手間をかけてさせてばかりですまないな」

「いえ、そんなことはありませんよ。……あの時だって助けられたのは僕の方ですし」


 その言葉を聞いた久本は、直後に、少し暗い表情を浮かべてまた彼に言った。


「…………すまないな」


 そこで通話は終了した。どちらが切ったのかは明白だった。



 通話が切られてから三分後には、二人の車には指定された目的地への走行ルートが送られてきた。


 《警察本部第二研究棟附属電子情報操作研究センター》


 現在地からの直線距離は四キロメートルに満たない。しかし、指示されたルートの到着までの所要時間は二十分。


「相変わらず念入りなルート構築だな」

 久本は送られてきたデータをじっと見つめていた。


「……悪いが高槻君、面倒かもしれんがこのルートで進んでくれ」


「ええ、分かりました」


 高槻は言われるがままに車を走らせた。







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