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猫のお話

作者: customize

深夜───


楽しみにしていた番組も終わり、テレビを消して、そろそろ眠りに就こうかというときに、玄関のドアをノックする音が聞こえた。


(こんな時間に、一体誰だ?)


と不審に思いつつも、玄関へと向かった。


きぃ、と軋みを上げるドアを開くと、ドアの隙間から、小さな何かが部屋の中に目にも留まらぬ速さで入ってきた。


慌ててドアを閉め、後ろを振り向くと────



「おかねちょうだい」



覆面をした『猫』が、包丁を俺に突きつけながら、そう言ってきた────


(え?猫?喋った?二足歩行?)


そんな『猫』を目の当たりにして、俺は混乱していた。


覆面───と言うか、小さな袋を被り、短い両手(前足と呼ぶべきなのだろうか?)を駆使して、その体に対して大きすぎる包丁を精一杯俺の方へ向けている。


「おかねちょうだい」


『猫』は、何時までも固まっている俺にしびれを切らしたのか、再びそう言ってきた。


「お、お金?いくら?」

「さんぜんえん」

「いいよ。はいこれ」


俺は財布を取り出し、千円札を三枚抜き取り、猫のそばに置いた。


「かたいのもちょうだい」

「硬いの?……百円とか?」

「うん」

そう言う猫に、百円を数枚、渡そうとしたが、肉球のあるかわいい手では持てそうにもないので、三千円の上に置いた。


「何買うの?」


ここにきて、驚きより猫をかわいいと感じる気持ちが勝ってきた俺は、そう質問した。


「……カリカリ。いっぱいかう」


(カリカリ=キャットフードのことだろうか?)

猫はそんな俺をよそに包丁を置いて、お金を一生懸命持とうとしていた。


「……んしょ……んしょ」


(か……かわいい……!!)


一生懸命小銭を拾おうとするその姿は、非常に可愛かった。


「…お店遠いよ?一緒に行く?」


気がつけば、そんな言葉を口にしていた。

猫はしばらく考えるようすをみせたあと。


「…いく」


とうなずいてくれた。


「包丁は重いから置いておきなよ。あとで取りに来ればいいからさ」

「うん」


そんな言葉を交わしたあと、俺は車のキーを持って、猫と家を出た。




「あのさ、どうしてこんなことしたの?」

「…おなかへったから」


助手席の猫に話しかけると、こんな答えが帰ってきた。


「なんで強盗したの?」

「ごうとう?」

「ああ、ああやってお金を取ることだよ」

「…てれびでみたの」

その時の猫は、よくわからないけど、少し、寂しそうだった。


「へぇ……あ、着いたよ」


そんな会話をしている内に、最寄りの24時間営業のスーパーに到着した。




「どれがいい?」

「……これ!」


深夜で店員も少なかったので、猫をカゴに乗せて店内を回ることにした。

現在、ペットフードコーナー。

猫が指さす(肉球?)キャットフードを、猫をカゴから一旦出してからカゴに入れる。

その値段確認すると、俺が猫に渡した額より高かったが、気にせず支払いをすませる。


「ただいま」

「……」


キャットフードを買って、再び家にもどってきた。


「カリカリいっぱい買えて良かったね」

「…うん」


そういって頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めた。


「でも、それ重いでしょ?ずっともって歩くの?」

「…おもいの」


キャットフードの袋は、猫の体を軽く凌駕しており、とても一人、いや、一匹では運べそうもない。

そこで、俺は一つ提案をした。


「ここに置いておく?いつでも取りに来ればいいでしょ?」


そう俺が言うと、猫は驚いたような顔(と言ってもなんとなくだが)をした。

すこし考えたのち。


「……うん」

とうなずいてくれた。


「じゃあ、俺がいないときは……あ、あそこの台所の窓。開けとくからね」

「……うん」


一通り説明すると、猫はキョロキョロしはじめた。


「帰るの?……外、寒いよ?」

「……」


季節は春、と言っても、まだまだ冬の名残がのこる時期なので、外はまだ寒い。

そこで再び提案。


「泊まる?」


すると猫は、なんだか戸惑ったような様子を見せた後、


「……そうする」


とうなずいてくれた。







────これが俺と猫の始まりだった

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。題名に惹かれて読ませて頂きました。 なんだか心温まる話でした。 続きも見てみたいです。 一つ気になったんですが、店で買うのなら魚のほうが… 失礼しました。
[一言] かわいい! 猫がなんともいえません。 凶器を持った猫、それに動じない主人公にすぐに惹かれた。 とても不思議で、私は好きです。^^
[一言] はじめまして!!customizeさん♪ ねこのキャラが超超超かわいかったぁ〜♪♪ ていうか・・・こんなねこがおることにもっとおどろけよ!! ってかんじでしたぁ〜! でも・・・読みやすくてよ…
2008/03/24 19:22 チョコレート
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