奴の部屋で寝ても貞操は守れるのか?
「………」
目を開けると、勢いよく真琴の顔が視界に入ってきた。
「束沙ちゃん…っ」
ホッとしたように、真琴の口許が緩む。
「ここは?」
そんなベタなことを聞いてしまうが、私は本当にここが何処なのか分からなかった。
「僕の部屋だよ、安心して」
真琴が、微笑んで言う。
私は一気に目が覚め、ガバッと勢いよく起き上がる。
(それ聞いて、安心出来るわけないから!帰らないと!今すぐここから。)
でも思うように体が動かない。
何より頭がガンガンと突き上げるように痛い、何でだ?
「束沙ちゃん、強盗に頭突きしてそのまま倒れちゃったんだよ…ーーー覚えてない?」
私が無意識に頭を押さえて顔をしかめているのを見て、真琴が説明する。
あ、そうだよ!
今この危険から逃げることで頭一杯だったけど、私さっき強盗にナイフ突き付けられてたんだよね。忘れてたわ。
それで、確か強盗の手に噛みついて、思いきり足踏みつけて…ーーー。
そっから、意識なくしたんだ…。
「―――真琴大丈夫だった?強盗は、捕まった?」
私は大人しく広くてふかふかの…おそらくキングサイズのベッドに仰向けに戻る。
(あぁ、寝ていると少しだけ頭痛がやわらぐわ…)
そんなことを思っていると、真琴が安心させるように優しい声色で言う。
「うん、通報したよ。捕まった。ついでにナイフで束沙ちゃんを触った指もちゃんと切り落としておいたよ、だから安心して」
「えっ」
(今、後半…なんつった?)
私が驚いてまた飛び起きると、真琴がクスッと笑った。
「―――ふふふ、冗談だよ」
(…――――わ、笑えない…。大丈夫だったかな、強盗さん…)
「――――そ、それより私、帰らないとね…」
キスされた上に、彼の部屋にまで…しかもベッドって。
こんな危険なことはないよね。
このベッドはふかふかで寝心地最高なのは惜しいけど。
そんなことより、自分の貞操第一だよね。
「熱39℃あるよ、帰れないでしょ。お医者さん呼んだから待ってて」
そう言いながら、真琴が私の背中に腕を回して、
そっとベッドへと身を沈めさせる。
(あぁ…ダメだ…帰りたいのに…――――)
私は瞼が重くなっていく感覚に…勝てなかった。