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口実のデート(高橋由樹目線)

――――…一目惚れって、信じます?


性格とかその人のことを何も知らないのに恋に落ちる、アレのことです。

一目惚れなんてそんなんあるわけねーだろ、と思ってた俺の身にそんなことが起きる日がくるなんて…ーーー。





「ユキちゃん!」

週末、約束の時間に砂川さんがやって来た。

フレアーのワンピースに、ヒールのある靴。

(わぁ…女の子だなー。)


砂川束沙は、正真正銘女の子なんだけど、俺はついイメージになかった格好にそんなことを思った。


「さっ、急ごう!今日はどこいくんだっけ?」

俺の腕をぐいっと引きながら、待ち合わせ場所から早足で移動しようとする。


「いや、別に…」

(どこでも、いいんだけどね。)


“週末に遊ぼう、放課後に会ったりしよう?”

そんな風に彼女に提案したのには、下心があった。

幼稚園の時に一緒だった友達に、再会できたと知ったあの日。

――――俺は、同時に…恋に落ちていた。



だからこの提案は口実で、場所もどこだって良かったのだ。

俺がそんなことを思っていると、ぐいぐい歩いていた砂川さんの足がピタッと止まる。



「つ・か・さ・ちゃん?」

ニッコリ微笑んで目の前に立っていたのは、神崎真琴だった。


「ま、真琴(まこ)…」

砂川さんの足が二、三歩下がる。


「どこ行くの?今日は僕と一日おうちでまったり過ごす予定でしょ?」


「まったり?嘘つけ!私のこと縛って監禁しようとしたくせに!」



「え、縛っ…?監き…?」

今スゲー物騒な言葉が飛び交ってなかったか?


俺が二人のやり取りに唖然としていると、神崎が俺の方をじっと見つめてきた。

ドキッとして、俺は顔をそらす。

(やべぇ…俺のこと見てる…。もしかして、睨まれたのか?)



「高橋由樹くん」


「あ、はい!」

(俺のことだよな?今、俺の名前口にしたんだよな? )

俺は半信半疑で神崎の声に、即座に反応した。


「君、束沙ちゃんのこと好きなの?」

好きと言うなら、殺すけど?と顔に書いてありますよ…神崎くん。


「ちょっと、何言い出すのよ!ばか!」

なぜか砂川さんが真っ赤になって怒っている。

(あぁ、庇ってくれてるのかな…優しい子だよな…)


「大丈夫、」

俺は、砂川さんの前に立ち、正面から神崎を見据える。


「え…ユキちゃん…?」

俺の後ろで、砂川さんの戸惑うような声。

(砂川さん…いや、束沙ちゃん。大丈夫、きちんとここは誤解を解くから。俺に任せて!)


男らしく。俺は、ここで自分の気持ちを伝えよう。


――――君が好きだと。


「俺は…君のことが好きなんだ!初めて、会ったときから!」


「「え…?」」

正面にいた神崎と俺の後ろにいた砂川さんの声が同時に聞こえてくる。


(あれ?聞こえなかったか?)

結構でかい声で言ったつもりだったが、どうやら伝わらなかったようだ。


「神崎真琴くん。俺と、付き合ってください!」

頭を下げて、手を突き出す。


本当はもっと俺のことを知ってもらってから…と思っていたけれど、仕方がない。

あらぬ誤解をされるよりはマシだよな。


「初めて会ったとき、なんて美しいんだと心を奪われたんだ」

神崎は、俺の告白が聴こえていないのか、ずっと無表情のままだ。


「えぇっと…もしかして…私と遊びたがっていたのは?」

俺の後ろから、砂川さんがよろめきながら前へと歩いてくる。


「砂川さん、神崎くんと仲良さそうだったから。砂川さん誘ったら神崎くんも来るんじゃないかなと思って」


(そんな下心で、呼び出してごめん…砂川さん。)

俺が申し訳なく思いながら正直に話すと、なぜか砂川さんがショックを受けている。


「アハハハハ…、束沙ちゃん。勘違いしてたんだもんね?」

砂川さんがよろめいているのを、なぜか神崎が愉しそうに笑っている。


「うっさい、真琴!!」

真っ赤になって怒る砂川さんに、神崎はさらに笑う。


「あーー…笑った!あ、ちなみに…」


ひとしきり笑って、涙を拭いながら神崎が俺の方を向いた。

さっきまであんなに爆笑していたのに、俺をみる目は驚くほど冷たかった。―――背筋がゾクッとするほど。


「僕は束沙ちゃんしか受け付けないから。そういうのは他でやってくれる?」


とりあえず僕達に関わるな…と、神崎の周りからどす黒いオーラが出ているのが分かった。


(失恋…か。)


初めて一目惚れしたのが男。しかも、仲良くなる前に告白して失恋。

あぁ、…―――なんて切ない。

でも、君に恋をしたことは後悔していないよ。


とりあえず、今これ以上同じ空間にいたらヤバいと野生のカンが告げているから、俺は帰るよ。


(お幸せに…――――束沙ちゃん、真琴…)





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