表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/34

強盗事件の証言(コンビニ店員A目線)

大学生の俺は昨晩夜中まで合コンではしゃぎすぎて、

あーだるいなーとか思いながらバイトしてたわけです。


「いらっしゃいませー」

(高校生のリア充がっ、けっ!)

昨晩の合コンが空振りに終わった俺は、二人の男女高校生がコンビニに入ってくるのも、イラッとした。


店長はちょうど店の裏で電話中だから居なかったが、

挨拶していないとバレたら嫌なのであくまで義務的に。

仕方なくその気にくわない高校生カップルに言う。

べ、別にチキンハートとかではないですよ?

俺は真面目なだけで!


(にしても、随分可愛い少年だな…儚げ…ーーー。)

一瞬女子かと見間違えたそいつは、ズボンをはいていたから男子高生だと分かった。


(それと、このがさつっぽい女がカップル?ってかこいつ本当に女かよ…。うーん、分かんないもんだな…)



お弁当コーナーに向かって歩いていく女子高生をそんな目で見ていたら、なぜか男子高生にめちゃめちゃ見られた。


(ん?俺の方見てる?)


ズボンをはいている男子高生だと分かっていたのに、

なぜかドクンと心臓が反応した。

(いやいや、俺、男とか好きじゃねーし!)

自分の心にブレーキを掛ける。



女子高生(つかさちゃんと呼ばれていた)の方を向き直り、

男子高生がなにやら提案している。


「ねぇ束沙ちゃん、僕の家で夕御飯一緒に食べることにしたら?」


「…なんで?」


「僕も夕御飯は一人だし、一応手料理だよ。雇った人のだけど」


「いい、要らない…」


提案を断ったのか、女子高生がなぜかふらつきながら、コンビニ弁当とサラダを手に取りレジまでやってきた。


(はいはい、レジですねー)

俺は品出しの手を止めて、レジの前に立った。


――――その瞬間、あり得ないことが起きた。


「つ…」「動くなっ」

ドスの利いた声が店内に響いた。


(ひーーぃ、マジかよーーーーー!)


気付けば少し小太りの男が、例の女子高生の喉元にナイフを突き付け、後ろから羽交い締めにしていた。


(こ、コンビニあるある!?…ーーーーご、強盗だとぉ!!?)

正直言うと、ガクブルでした。ヘタレってわけではないんですよ?ただ、急だったからさ…ーーーははは。


「束沙!」

男子高生が切羽詰まった声で彼女の名前を呼ぶ。


「動いたら、この女?の首が切れるぜ!?」


強盗が女子高生の喉元に刃物を突き付ける。


(――――…マジか。俺はどうしたら…ーーー)

動揺したまま動けない俺は、強盗と女子高生をガン見したまま動けない。


女子高生は苦しいのか険しい顔をしている。


「おい、早く金出せ!金!」


強盗が俺に刃物を向けて指図してきた。

(うっわ、危ねっ!)


俺がビクッとしたその時、

喉元にナイフがないその瞬間を狙ったのか、女子高生が強盗の手に噛みついた。


(えっ!マジかよ?逞しすぎるぜ“つかさちゃん”…ーーー)


「痛っ――――この女…」

当然手を噛まれた強盗は呻く。

どうやら彼女は同時に、強盗の足も思いきり踏みつけたらしい。


逞しい女子高生のおかげで形勢逆転か…ーーー?と思ったが、なぜか女子高生はそのままその場にフラッと倒れた。


「束沙!」


美少年が血相変えて駆け寄る。


そんな美少年に手を伸ばすようにして、女子高生は気を失なった。


(えーっ、振り出しに戻ったーぁ!?)

強盗が手をさすりながら立ち上がろうとしたその時、


「おい、お前…覚悟は出来てるんだよな?」

彼女の頭をそっと自分の鞄の上に乗せた美少年がフラッと立ち上がった。


(いや、お前はやめとけ!負けるって…ーーーー)

俺はなぜかそんな心配をしていた。

嫌な汗が背中を伝う。


「おい、金…っ」

美少年を無視した強盗が、また俺の方に向いた瞬間、

今度は強盗が倒れた。

太っていたからか、すげぇ迫力でドサッと。


俺のいたレジ側からは死角でいったい何が起こったのか全く分からなかった。


「こいつ、束沙ちゃんに触りやがった、しかも後ろから抱き締めるとか殺しても殺したりない」


何が起きたのか分からなかったが…――――。


なにか不穏なことをブツブツ言いながら、倒れていた強盗を汚物をみるような目で見下ろしていた彼の表情に、

今日一番胆を冷やしたことだけは確かだった。


「とりあえず、手を切り落とすか…」

と、強盗犯の手をとったので、俺は思わず、


「け、警察来ました!ほら…」

聴こえてきたパトカーのサイレンのする方を指差す。


「ちっ。僕が呼んだんだった。早かったな…」

ボソッと何か言いながら、今度は俺の方を向き、


「コンビニ店員さん、僕の束沙ちゃんのこと、あまりじっと見ないでくれます?彼女、よくここ利用しますからこれから何度か会うかもしれません。でも、今日みたいに5秒以上見る必要とかあります?無いですよね?というかお金もらえたらそれで言い訳だから、レジの手元だけ見てればいいと思いますよ。」


と、一度も息継ぎせず早口で言って“束沙ちゃん”をお姫様抱っこすると店を出ていった。


(こ、殺されるかと思った…ーーーー)



あれ以来俺は、お客さんを3秒以上見れなくなった。

べ、別にチキンハートって訳じゃないですよ、

俺って不真面目だからさ…テキトーが一番っていうか…ーー。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ