表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

用件が済んだ後は?

「まこちゃん…」

私と目が合っているのに、なぜか高橋くんは真琴(まこ)の名前を呼んだ。


「え?」

(――――何でそうなった?)

≪※それは『私は…真琴(まこ)』と呟いたから←『合コンが強姦に変わった時の対処法は?』参照≫


「た、高橋くん。私の名前は束沙(つかさ)です…。砂川束沙(すなかわつかさ)

―――…思わず名乗ってしまった。なんか恥ずかしい。


「え、でも昨日…」

高橋くんが何か言いかけ、首をかしげる。


真琴(まこ)ってのはこっちです、神崎真琴(かんざきまこと)。」


私は、ついでに真琴の紹介もしてしまった。

何か喋っていないと、緊張で、間が持たなくて――――。



「あ、君…昨日のーーー」

どうやら高橋くんは、真琴のことも覚えていたらしい。

(昨日一瞬しか、会ってなかったと思うけど…、高橋くんて記憶力良いんだ…!カッコイイ!)


「高橋くん、これ…昨日借りたまま帰っちゃってごめんね」


私は、ハッと今日ここに来た目的を思い出した。

そして、手に持っていた紙袋を手渡す。


「あぁ、貸したの忘れてた。わざわざ持って来てくれたんだね。ありがとう」

紙袋の中を覗き込んでから、高橋くんが明るい笑顔で言う。

(高橋くんの笑顔…ステキ…ーーーー)


きっと私はこの時、目がハートマークになっていたと思う。


「あの、昨日は助けてくれて本当に…――――」

私が改めてお礼を言おうとした時、ぐいっと右腕を引っ張られた。



「束沙ちゃん」


(あ…ーーー真琴の存在、忘れてた…)

不機嫌極まりない真琴の表情に、私の浮かれていた気持ちは一気に消える。


「…用件も済んだことだし、帰ろ?」

グイグイと腕を引きながら、真琴が背を向けて歩き出す。


「ちょっと真琴(まこ)、引っ張らないで…ーーー」

私は唖然としている高橋くんに手を振る余裕もなく、その場を離れることになった。

(高橋くんと…もっと話したかったのにぃーーーっ)




二人に戻ると、真琴の機嫌は戻っていた。

無理やり掴まれていた右腕も離されたので、庇うように左手で(さす)る。


「束沙ちゃん、今日は一緒に夕御飯食べよう?」

ねっ、いいでしょ?と横から可愛らしく顔を覗き込んでくる。


「え、何よ…唐突に」

ついさっきまで不機嫌だったこともあるので、私は少し警戒した。


「もっと一緒に居たいから」

真琴が、ニコッと最上級の笑顔で言う。


(それ…その笑顔が、怖いんだよ…ーーー)

真琴が、腹のなかで何を考えているのか、全く分からない。


「や、私帰るよ、帰って夕御飯作る…」

私は直感的に危険だと判断して、自然に断ろうとした。

あくまで、自然にー―――。


だけど、現実はそんな上手くいくことばかりじゃなくて…―――。


「束沙?」


(あぁ…、やっぱダメだったか…―――)

私を見つめる真琴の目が、全てを見透かしているような、かなり本気(マジ)なやつだったので、

「―――はい…」

私はそう…素直に返事をするしかなかったのだった。


(――――私は、今日無事に自宅に帰れるのかな…)


遠い目をしながら、こんなことを考えるのはおかしいですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ