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助かったはずなのに、助かった気がしない時は?

真琴(まこ)…ーーー」


(―――なんでこんなとこにいるの?)


街中だよ?真琴の家と私の家の最寄り駅から駅二つ分離れたところだよ?


考えられる理由は一つ。

(…尾行?あり得る。すごく自然に納得できちゃう…―――。)


というか、滅茶苦茶怒ってる。無言が怖い。怖すぎる。


後をつけていたのかと問い質す権利が私にないかのごとく、怒ってる。


「ごめん…」

(私が謝ってどうするっ!でも謝らずにはいられないよね、何しでかすか分からないから真琴(コイツ)は…)


「―――何が?」

真琴が私の掴んでいた腕を離した。

(ニコォって微笑んでいるけど、これ、めっちゃ怒ってる時の笑顔だよね?)


「真琴、怒ってるんでしょ…?私があんたを一人にしたから」

(怒ってるのは、私が真琴から離れたからだよね?)



「僕は“一人にされたから”怒ってる訳じゃないよ?」

無表情で、真琴が言う。


「―――…え?」


「どうして分からないかな…」

もどかしそうに、真琴が呟く。


(さぁ、どうしてでしょう…?私には全く解りません…)

冷や汗を飛ばしながら、私は真琴を見る。


「束沙ちゃんは僕のモノだって、言ったよね?なのに彼女達、無断で束沙ちゃんと会話したよね?」


「それは体育が男女別だし…ーーー」

(誰とも会話しないで体育の授業は受けられないよね?)


「じゃあ束沙ちゃんはこれから体育の時、保健室行きだね!僕も保健室に行くし!」



「え、やだよ!私、体育が一番の楽しみなのに!」

(体育のない日なんて、何を楽しみに学校に行けば良いわけ?)


「じゃあ、あいつらも片付けておくしかないか…」

私が断固拒否の姿勢を見せると、真琴がボソッと物騒なことを呟いた。


(―――は?今なんて?怖い、目が本気(マジ)だ…)


「分かった、やめる!体育の授業は保健室にする!」

悲しいけど、仕方ない。

(彼女達(クラスメイト)に危害が及ぶぐらいなら…ーーー我慢しよう…。)


「そう…」

私が泣く泣く従うと真琴の表情が少しだけ柔らかくなった。


「ちなみに彼女達、“良い男居なかったー”とか言って、束沙ちゃん置いてさっさと帰ってたけど、どうなの?それって友達じゃないよね、ただの生け贄扱いだよね?僕の束沙ちゃんを生け贄扱いだよ?あり得ないよね?今すぐ消しに…ーーー」


「消さなくて良い、てかダメ、なんもしないでお願いだから」


私はすぐに真琴の腕をガシッと掴む。

(ってか“消す”って何?何する気?)


私が真琴の腕を掴んだら、真琴が少し頬を赤らめた。

(女子か!)


でも、私の掴んでいた手にそっと自分の手を重ねて、真琴が言う。

「束沙ちゃん…あんな酷い目に遭ったのに許すの?」


(…―――だからなんで知ってるの?)

今さらそこには触れないでおこう。答えを聞くのが怖いから。


「許すも何も、奏ちゃん達は悪くないし…」

私は、真琴から目をそらして言う。


(悪いのはアイツらだし)

「悪いのはアイツらだしって今思った?」

「…はい。」


(思ったというかドンピシャでハモってました…)




真琴は、溜め息をつくと、不機嫌そうに私の肩を指差す。


「―――ねぇ、それよりソレ…いつまで羽織ってるの?」

「え?」

指を指されて私が肩を見ると、見慣れない紺色の服。

(あ…高橋くんのブレザー…)


シャツが少し乱れたからか、気を遣って肩にかけてくれたんだ。忘れてた。


(高橋くん…なんて紳士なんだ…)


私は高橋くんが助けに来てくれた時のことを思い出してポッとなった頬を手で覆う。


「それ、処分するから僕に頂戴?」

突然、そう言って真琴が手を突き出してきた。


(もうちょっと余韻に浸らせてくれないかな…?)


「高橋くんにちゃんと返すわよ、なに言ってんの?」


「タカハシ君?」

真琴が少し目を見開いて、初めて発音するかのように繰り返す。

(あぁ…またやってしまった…ーーー)


「束沙、他の男の名前…口にしないでよ…ーーー」

(怖い。ってか近い…顔、近いって!)


いつの間にか真琴の両腕が私の腰に巻き付いて、

ぐんと引き寄せられていた。


「真琴、ちょっと待って、高橋くんは私を野獣から助けてくれた恩人なの、だから…」


私はうつ向いて弁解する。

弁解するってのも、おかしい気がするけど。


「だから“特別”なの?―――僕より?」


息のかかる距離まで真琴の美しく整った顔が近付く。


(真琴…私より少し背が高くなったんだな…目線が少し上になってる――――…)


って、今そうじゃないよね、ここで考えるべきことは…。



「と、とにかくこれは明日高橋くんに返しに行くんだから」

私は先に目をそらして、真琴の手を引き剥がして歩き出す。

手には、高橋くんのブレザーを大切に抱えて。


「…分かったよ、じゃあ僕も行く」

真琴が仕方ないなという態度で、言った。


不穏な空気…ーーーの中、なんとか家に着いたその夜、

私は疲れていたのか、深い眠りについたのだった。


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