クラスの女子に合コンに誘われたら?
「ねぇ、砂川さんっ」
この高校、体育の授業だけは男女別だったらしく、
その時間だけは真琴から解放される。
知らなかった分、喜びが倍増する。ヤバい、顔がにやける…。
すでに入学式から一週間が経ったのに、私はやっぱり真琴以外の生徒と話すことはなくて。
(※歩はたまたまクラス委員会で再会したが、残念なことにクラスが遠すぎた)
「砂川さん、ちょっと…聞いてる?」
「あ、はい!」
――――だから私はクラスの女子三人に初めて話しかけられたわけで。
(なんか緊張する…これは仲良くなるチャンスよね)
「砂川さんと神崎くん、付き合ってるんだよね?」
リアル女子高生に話し掛けられた、その理由はまさかの真琴がらみ。
「付き合ってないよ!」
私は全力で否定する。
(―――誰があんな変態なんかと!)
「えーでも入学式の時…」
一人の女子があの黒歴史を思い出させようとしてきた。
「あれは、なんでもないの!神崎くんちょっと頭おかしくて。私を困らせるのが生き甲斐というか…」
(というかもう忘れてくれ!あの日のことは!)
「ふーん…」
納得したのか、三人はそれぞれ目配せする。
「じゃあさ、今日うちら金南男子高校と合コンするけど砂川さんも来ない?」
「え…合コン…」
(合コンてあれですよね?男子と交流をはかるヤツ…)
「素敵な出逢い、見つけに行こうよー!」
ニコッと笑顔で言われ、私はぐらつく。
(正直合コンに興味はない。でも…友達は欲しい。)
「ん、うん…」
私は、少し気乗りしないまま…頷いた。
その日の放課後、いつものように真琴が私の席に来る。
「束沙ちゃん、帰ろ?」
「今日は私、用事があるから…」
(ってなぜ私、目をそらす?何にも悪いことしてないよね?)
真琴が不満そうに顔をしかめた時、ちょうどクラスの女子に声をかけられた。
「砂川さーん、行こー!」
「あ、今…―――」
行こうとした私の腕を、真琴が力強く握る。
(い、痛い…ーーっ)
「…行くって、どこに?」
首をかしげて、真琴が私に聞く。
あの、零度の微笑みで。
(怖い…怖いからそれ…―――)
「…ま、真琴には関係無いでしょ?」
腕を振り払おうとしても、なかなか離れない。
「離して!私は友達と遊びに行くのよ!」
私がそう力の限りそう宣言すると、掴む手の力が少しだけ弱まった。
その瞬間に思いきり腕を振り払い、私は教室を出ていく。
「ごめんね、行こっか」
待たせていた友達にそう言って、私は廊下に出た。
(私は悪いことしてない…――――してないはず…!)
―――なのに私は…真琴の方を振り返れなかった。