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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第五章
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教会

 教会に入るとゾワッと背中に何かが駆け巡るような感覚に、アンリは身震いした。

 アンリの異変に気づいたシャロンが心配そうな顔をして、声をかける。


「アンリ、大丈夫?」

「え、ああ。…大丈夫。ただ、魔力が強いなって思って」

「魔力が…?」


 首をかしげると、自分もアンリの真似をして魔力を感じようとしてみたが全く感じることができない。


「私には全然魔力の気配がわからないわ」

「俺はちょっと魔力に敏感だからな。それより、中も凄いな」


 アンリの言う通り、教会の中は外観同様凝った造りになっていて壁には神話が直接彫られていて、見るものを圧倒させる。

 祈りの広間と呼ばれる入ってすぐの広間の中央にはリスモスの像の像が置かれ、窓から差し込む太陽の光に照らされ神々しく輝き、祈りに来た人々が膝をついて祈りを捧げていた。

 その光景がまるで絵画のように美しい。


「こんな素敵な教会を作ったルヴィカのお父さんは、本当に凄いのね」


 ルヴィカは照れくさそうに笑って「まぁね」と相づちをする。


「この教会はおいらの誇りなんだ。…みんなから何を言われても、親父はこんなすごい教会を建てたんだ。こんなこと誰にも真似できないだろ?」

「…そうだな」


 アンリが優しく微笑みながら頷くのと同時に外に繋がる扉が勢いよく開かれた。

 それにより、アンリ達はもちろん他の人々も驚いて扉の方を見ると、そこには二人の男とルヴィカを苛めていたローエルが立っていた。


「ロナエ様、この教会を壊すのをいつにしましょうか?」


 ロナエという名前にアンリは怪訝な顔をした。


「…ロナエって、あのローエルって奴の…」

「うん、確かお父さんだったはずだよね」


 アンリとシャロンは顔を見合わせた後、ロナエと呼ばれた男の顔を凝視した。

 口髭を生やし、いかにも金持ちそうな出で立ちだ。


 ローエルは一通り、教会内を見回した後意地悪そうにニヤリと笑う。


「そうだな、明後日には壊す作業して一ヶ月後には新しい教会の建築に取りかかりたいな」

「かしこまりました。では、その様に手配をしていきましょう」


 男は頭を下げると、教会から出ていく。


「父様!壊すときはぜひ、僕に近くで見学させてください!いつか父様みたいな建築家になるために勉強したいのです」


 ローエルの言葉にロナエは嬉しそうに頭を撫でると「もちろん」と頷いた。

 そんな二人の会話を黙ってい聞いていたルヴィカがく口を開く。


「なんだよ…それ?」


 ルヴィカの震える声で、ロナエとローエルは会話をやめてこちらに視線を向けた。


「その声…ああ、欠陥建築士のルカの息子のルヴィカか。こんなところで何をしている? 父親のこのお粗末な建物を見に来たのか?」


 ロナエの言葉にルヴィカがカッとなり、飛びかかろうとしたがアンリに腕を捕まれた。


「放せ!おいらの親父をバカにしやがって!しかも、なんだよ!!この教会を壊すってどういうことなんだよ!?」

「どういう意味って…言葉の意味だよ、ルヴィカ。この教会はジオーグで一番の腕を誇る父様が創り直すんだよ」


 ローエルの答えに、ルヴィカは怒りのあまり身体を震わせる。


「ふざけんなっ!ここは親父が想いがこもった場所だ!誰にも壊させるもんか!」


 怒鳴り声を上げるルヴィカの手を掴んでいたアンリは身体を突き抜ける、感覚に目を丸くした後直ぐにルヴィカの腕を引き前に出ると、空いた方の手をローエルとロナエに向けた。


『風よ、あの傲慢なる二人をここから吹き飛ばせ!!』


 アンリの呪文に応じて、教会内に風が吹き荒れ親子に襲いかかる。

 二人は風に抵抗しようと、足を踏ん張ったが魔法の風に抵抗できるはずもなく悲鳴を上げながら吹っ飛ばされた。


「アンリ、何てことを!!」


 悲鳴に近い声を上げるシャロンの手をアンリはニヤリと笑って掴むと、二人を連れて走り出す。


「逃げよう!ルヴィカ、入ってきた扉と違う扉あるか?」

「あ、あるけど…」

「ならそこから逃げるぞ!」


 アンリは楽しそうに言うと二人を引き連れ教会から逃走した。

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