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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第一章
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思いでの場所

 小さい頃は、コロナの言う通りよく遊んでいた森も今ではアンリが住んでるかもしれないと言うだけで、不気味に見えてくる。


「大丈夫?シャロン、顔色悪いよ?」


 途中で何度か止まってコロナが心配そうな顔をしてシャロンを見てくる。

シャロンはニコッと笑顔を返す。


「平気。久しぶりの森だからちょっと歩くの大変なだけ」

「そっか、よかった。もうすぐよ 」


 コロナは上機嫌で先頭を行く。



 お母さんにバレたら叱られるどころじゃすまないだろうな…。



 シャロンはバレたときの事を思い出すと胃がキリキリと、痛み出す。


「あ!見えた!!!」


 コロナの声にシャロンはハッとして、前方に目を凝らす。


「ほら!あの木の向こう!行こう!!」


 コロナは再びシャロンの腕をつかみ走り出す。


「うわっ!」


 シャロンはバランスを何度が崩しかけたが、なんとか体制を持ち直しコロナに引っ張られるまま森をぬけた。


「…!」


 森の開けた場所には大きな湖と、それを囲むように生い茂る深紅の花。

 謳歌の月にしか咲かないコウベニ草だ。


「すごい、こんなにたくさんのコウベニ草は見たことないよ…」


 まるで赤い絨毯のようにその光景はため息が出る程美しい。


「シャロンが喜んでくれると思って。ここにどうしても連れてきたかったんだ」


 コロナは照れ臭そうに笑うと、赤い絨毯の中へと入っていく。

 シャロンもそれに続く。


「本当に綺麗!ここがこんなに素敵な場所だと思わなかった」


 シャロンは感嘆のため息をつくと、コウベニ草の中に寝転ぶ。

 コウベニ草の甘い香りを胸一杯に吸い込む。

 眼下に広がるのは青い空と白い雲。

 ちょっと視線をずらせば紅い花。


 なんて素敵なんだろう…。


 小さい頃は全然気づかなかった。

 もっと早く知ってれば、毎年親の目を盗んできてたのに。

 

 そう思いながらシャロンは目を閉じた。

 日差しが顔に降り注ぎ、眠気を誘う。


「シャロン、寝ちゃった?」


 近くで聞こえるコロナの優しい声。

 シャロンは目を閉じたまま首を横に振る。


「寝てないよ」

「よかった。気持ちよくなって寝ちゃったかと思った。ねぇ、起きて。渡したいものがあるから」


 コロナのその言葉でシャロンはようやく目を開けると、体を起こした。


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