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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第五章
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ジオーグ

 できる限り急いで降りたが、やはり城壁の前に着いたのは太陽が沈みかける頃だった。


「何とか夜になる前に着けてよかった」

「そうだね。…にしても、近くで見ると凄いね!」


 シャロンは城壁を見上げて感嘆の声をあげる。

 近くで見れば、城壁に施された彫刻の凄さが良くわかる。


「女神様の顔とか綺麗ね。きっと本物の女神様もこんな顔なのかな」

「どうだろうな。でも、優しそうな顔だな」


 ふと、母親が己の子供を見るときの表情ってこんな風なのだろうかと思った。

 そして、それはどこかで見たような気がした。

 

「アンリ?」

「…あ、ごめん」

「大丈夫?ボーっとしちゃって」

「悪い、悪い。考え事してた」

「何考えてたの?」

「内緒。さてと、中に入ろうか」

「え、ちょっと!何考えてたのか教えなさいよ!」

「いーやーだー!ほら、置いてくぞ!」

「あっ!待ってよ!!」


 逃げるように先に街に入ってくアンリにシャロンは、ぷーっと頬を膨らませると後を追いかけた。

 街に入ると二人は声を揃えて“おー”と驚きの声を揚げた。

 街並みは、さながらおとぎ話に出てきそうな石でできた家や彫刻が並べられていた。

 石畳で出来た道を馬車が軽快に走っていく。


「リラースタンより都会って感じだね」

「この街並みを見るために観光客が多いらしいしな。人も多い。…衝動には気を付けないとな」

「う、うん。頑張る」


 アンリの言う衝動とはもちろん呪いのこと。

 ここで、殺人衝動にかられてしまえば大変なことになる。


 気を付けなきゃ…!


 顔を青ざめさせるシャロンの背をアンリが軽く叩く。


「大丈夫だ。お前なら、抑えられるよ。さて、宿を探しに行くか」

「うん!ふかふかのベッドで寝たいー」

「安い宿にしか泊まらないからな」

「ケチ!」


 他愛ない会話をしながら、二人は賑わっている街の中へと入る。

 飲食店や土産屋が、たくさんあり目移りしてしまう。


「アンリ!見て見て!!このブローチ可愛くない!?」

「旅に必要ないから買わないからなー」

「あー、そーですかー」


 シャロンはブローチを棚に戻すと、肩を竦めてアンリの隣に戻る。


「アンリはほしいものとか無いの?」

「んー、そうだなぁ…。包帯とか後は魔法薬をしまう小瓶。それから…」

「そうじゃなくて、何て言うか…嗜好品とかで」


 シャロンの言葉にアンリは首をかしげた。


「あー…。あんまりないな。その前に買い物とかもしたことなかったし」

「あ、そうか」


 村に出入りなんか出来なかったのだから、当たり前と言えば当たり前か。

 シャロンはばつの悪い顔をした。


「ここの宿に行ってみるか」


 アンリは特に気にすることもなく宿へと入る。



 ‐そして、十分後。


「高くて泊まれねー!」

「さすが観光地だね…」

 

 提示された値段を見た瞬間に思わず宿を出てきてしまった二人。

 あの値段で泊まったら旅の資金はすぐに尽きてしまう。


「野宿か?」

「え!嫌だよ!!」

「じゃあ…どうするか…」


 アンリが困り果てていると、不意に視界に自分より年下の男の子達が入った。

 人数は六人。

 そのうちの一人が、周りに背中を押されながら裏路地へと無理矢理押し込まれていた。

 その子が転がるように裏路地に入ると残りの五人がニヤニヤしながら後へと続く。


「…」

「どうしたの?」


 アンリの視線に気づいたシャロンが声をかけた。


「いや、ちょっと…」


 そう言って、アンリも裏路地へと入っていく。


「え!もしかして裏路地で野宿なの!?」


 状況が飲み込めないシャロンも困惑しながら後へと続いた。


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