疑問
「吸魔族ってコウモリになれるんだね…」
「ああ、元々は魔族とコウモリの掛け合わせとかって噂があるしな」
「え!?そうなの!?」
シャロンが驚いてアンリの方を見ると、深刻な顔をして焚き火を睨み付けていた。
「どうしたの?」
「いや…。魔族の動きが気になってさ」
「吸魔族のこと?」
アンリは頷いた。
「吸魔族は魔族の従属なのに何でクビにするのか、よくわからないんだ。…それに魔力を根こそぎ集めていることも。何が目的なのかわからない」
シャロンはため息をつくと立ち上がる。
「シャロン?」
アンリの質問にシャロンは答えずに、シチューを器に注ぐ。
戻ってくると、シャロンはそれをアンリに差し出す。
「考えてもわからないときは、美味しいものを食べて寝るといいよ!」
「…なんか、シャロンらしいな」
アンリは苦笑すると、シチューを受け取った。
「なんか、失礼な気がする」
ぷくっと頬を膨らませるシャロン。
「ごめん、ごめん。…それこらもう一つ、気になることがあるんだ」
「もう一つ?」
「そう、これはシャロンにも関係があるんだ」
「何?」
「俺がリラースタンで魔族と戦ったの覚えてるだろ?」
「うん。リズとか言うんでしょ?」
「ああ。そいつが言ってたんだ。“魔族に変える魔法があれば仲間にするのに”って」
その言葉にシャロンは目を見開く。
「え、ちょ、ちょっと待って!じゃあ、私たちの呪いって何なの!?」
なんで、魔族なのにこの呪いの存在を知らないのだろう。
そもそも、この呪いは本当に人間を魔族に変える力があるのだろうか。
「間違いなく、俺たちの呪いは魔族に変わるものだよ」
シャロンの心を読んだかのようにアンリが静かに告げる。
「それはシャロンが一番、感じてるだろ?」
無言でシャロンは頷いた。
日に日に増していく殺しへの欲望。
それは、呪いが本物だと言う証拠。
「どうして魔族が魔力を集めてるのか、リズがこの呪いの存在を知らないのか、どうしてエドウィンがこの呪いの存在を知っているのか、わからないことだらけだけど、今わかってるのは私たちの呪いは本物だと言う事でしょ?…なら、今はその事に専念しよう?それに元々の目的は呪いを解く事なんだもん。魔族の目的なんて関係ない」
魔族の目的なんて考えれば考えるほど怖くなる。
今はそんなこと、考えたくなかった。
アンリはしばらく考えた後、頷いた。
「そうだな。今は呪いを解く事だけを考えなきゃな」
「そうだよ、呪いを解くのだって大変なんだから他の事なんて考えてたら頭がパンクしちゃう」
シャロンは重い空気を払い退けようと冗談めかして言う。
そんなシャロンの頭をアンリが撫でた。
「心配するな…。大丈夫、前にも言ったけどお前は俺が守るから」
シャロンはカーッと顔を赤くするとうつ向いた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
アンリは笑うと、頭の中の不安を拭うように首を横に振った。