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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第四章
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新魔王

「クビって…何で?」


 アンリの質問にルナは肩をすくめた。


「さぁ?新しい魔王様が私たちは必要ないって言ったのよ。だから、理由なんてわからない。でもさ、私たちはずっと魔族のために働いて来たのに酷いと思わない?」


 ルナはぷくっと頬を膨らませると、さらに愚痴をこぼし始めた。


「私たちの糧は魔力を含んだ血だって知ってるくせに偉そーに!!前の魔王様なら絶対こんなことしないのに!!」


 キーっ!とわめくルナにアンリは困った顔をして、シャロンを見た。

 シャロンはため息をつく。


「前の魔王様ってそんなにいい人だったの?」


 シャロンの言葉にルナはブンブン首を縦に振る。


「あったこと無いけど、すっごい優しい人!吸魔族

に無理な仕事とか言わなかったし、奴隷扱いもされなかったし!…なのに、今はあいつのせいで種族は一緒に暮らせないし、飢えに苦しむし。良いことなんて何一つ無い」


 さっきまでの勢いは無くなり、ルナは悲しげな顔をして俯く。


「今の魔王様のせいでおかしくなっちゃった。魔族も世界もみんな…」

「そっか…」


 シャロンはそれ以上何て言っていいかわからなくなり黙りこむ。

 村人、全員殺したこの子にも事情があるのだと思うと同情してしまう。


「もしかして同情してくれてる?あなたは優しいんだね。…じゃあさ、貴女の血を私にくれない?」

「ひっ…!」


 その言葉にシャロンが怯えると、二人の間にアンリが割って入りシャロンの壁になる。


「シャロンはダメだ。彼女の血をルナにあげるわけにはいかない。代わりに俺のをやるよ」

「アンリ!?」


 シャロンの叫び声に、アンリは安心させるように笑いかけた。


「へぇー?庇うだなんて、その子の事愛してるんだ?」

「あいしてる?…よく、わからないけどシャロンを傷つけることは許さない。それに質問にも答えてもらったしな」

「まあ、何でもいいけど血を貰えるのは嬉しい」

「その前に最後の質問な」


 アンリは立ち上がると、氷月華を鞘から引き抜くとルナの首に突きつけた。


「…私を殺すつもり?」

「場合によっては、かな」


 そう言うアンリの目は氷のように冷たい。


「場合って?」

「レコム村の人々を皆殺しにしたのはお前の仕業?それとも、魔族の仕業か?」

「魔族の仕業よ。もちろん証拠なんて無いけど、信じてくれる?」

「魔族の仕業だと言うなら、名前わかるか?」


 ルナは少し考えると頷く。


「二人いて確か…一人はエドウィンとか呼ばれてたと思う」

「エドウィン!?」


 予想していなかった言葉にシャロンはサッと顔を青ざめさせた。

 アンリは黙って頷くと、ルナに氷月華を振り下ろす。


「!?」


 ルナは驚いて目を閉じた。

 暗闇の中でバツンっと音が鳴り響く。

 目を開くと縛られていたロープが切られていた。


「信じてくれたの?」

「レコム村にエドウィンの魔力が残ってたしな。そうだろうと思ってた」


 アンリの言葉にルナは目を丸くする。


「他人の魔力を感じ取れるの?」

「まあ、半分だけど魔族だからな」

「へぇ、あんまり聞いたこと無いけどすごいね。…で、血はくれるのかしら?」


 アンリは苦笑すると袖をまくり腕を差し出した。


「どうぞ」

 



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