森の中へ
集落のちょっとだけ離れたところにポツンと立っている小さな家の前にシャロンはやって来た。
そこがコロナの家である。
「コロナー!準備できた?」
扉をノックしながら、コロナに声をかけた。
「出来たよ!」
その声と共にコロナが慌ただしく、家から出てきた。
「ごめん、ちょっと手間取っちゃって」
「ううん、大丈夫!私の方こそ遅くなっちゃって」
コロナは笑顔で首を横に振ると、シャロンの手を掴んだ。
「じゃあ、行こうか!」
「うん!」
シャロンは明るく頷いて、コロナに手を引かれて着いていく。
しばらく歩いて着いたのは森の前。
しかも、そこはただの森じゃない。
あの、アンリが住んでいるという噂の森なのだ。
六年前、アンネがアンリを村から追放して森に住まわせたという。
さすがに、もう森から出て他の場所で生きているのだろうがそれでも、もしいたらと思うと恐ろしい。
先に森に入ったコロナは首をかしげた。
「シャロン?どうしたの?」
「だ、だって、コロナ。ここはアンリが住むっていう…」
その言葉にコロナは笑い出す。
「やだ、シャロン。国家公認魔法使いを目指してるのにアンリが怖いの?」
「う…」
「それに、さすがに、もういないでしょ。こんな迫害を受けた村なんていつまでもいたくないでしょ?」
「そりゃあ、そうかも知れないけどさ…」
それでも躊躇うシャロンにコロナはため息をついて、手を握る。
「小さい頃、一緒に遊んだ湖に行きたいの。そこで渡したいものがあるんだ。一緒に来てくれないかな?」
しばらく悩んだ後、ようやくシャロンは口を開いた。
「…わかった」
あまりにもコロナが真剣なので断れずについに頷いた。
「ありがとう!シャロン!!!」
コロナは嬉しそうにシャロンに抱きつきお礼を言うと、意気揚々と森の中へと入っていく。
「…しょうがないか」
シャロンもしぶしぶ、森の中へと足を踏み入れた。