レコム村
村に入ると直ぐに死体と遭遇した。
それも一つや二つじゃない。
至るところに転がっている。
「…酷いな」
アンリは思わず言葉を漏らす。
死体や周囲に残る魔力は、間違いなくエドウィンのものだった。
これをエドウィン一人でやったのだろうか?
きっと、自分の父親の時もこんな風に酷かったんだろうな。
アンリは目を閉じ深呼吸をして、もう一度目を開きその光景を目に焼き付ける。
これが俺の罪…。
アンリは腹部に大きな穴の空いた死体の前に来るとしゃがみこみ傷をよく見る。
こういう傷はよく目にする。
「氷柱で貫かれた後だな…」
自分の主魔法が氷だからよくわかる。
やっぱりエドウィンだ。
「ねぇ、アンリ…。これって魔族の仕業だよね?」
「…ああ。多分な」
「そう」
背後から聞こえるシャロンの暗い声。
きっと、シャロンもヒューディーク村の事を考えているのだろう。
シャロンの顔を見るのが怖くて振り向けない。
何て声をかければいいのだろう…。
そう考えていたとき、シャロンに背中を強く叩かれた。
「…いっ!?」
振り替えると、シャロンが腕を組んでこっちを見て睨んでいた。
「しゃ、シャロン?」
「全く、しっかりしなさい!これはアンリがやったことじゃないんだから、そんな自分を責めるような顔をしないのよ。…まあ、そう思う気持ちはわかるけどね」
シャロンはそう言ってアンリに手を差し出した。
「どうせ、ヒューディーク村の事を考えてたんでしょ?アンリはアンリだってシエラが言ってたじゃない。私もそう思えるようにするって言ったでしょ?レコム村もヒューディーク村も貴方がやった訳じゃない。だから気にしないで。…ほら、行きましょう?もしかしたらまだ、生きている人がいるかもしれないし。これが魔族の仕業なら放ってはおけないし」
「そうだな。…ありがとう」
アンリはシャロンの手を握ると立ち上がった。
「じゃあ、行こうか」
「そうね」
二人は頷き合うと、生存者がいないか村中を練り歩く。
だが、生きている人は一人もいない。
最後に村の中心まで来ると、アンリは声をあげた。
「あ!シャロン、あれ!」
アンリが指差す方には、こちらに背を向けて座り込んでいる女性がいた。
その女性は足元で倒れている人を抱き寄せている様だった。
「アンリ、行こう!!」
「ああ!」
二人は慌てて走り出した。