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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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危機

 アンリの切羽詰まった声に、シャロンとメイヤーは同時に振り返る。

 そこにはさっき倒したはずのワイバーンが、シャロンを睨み付け立ち上がっていた。

 怒りに目をぎらつかけせ、ワイバーンが己の尾を振るいシャロンを叩き潰そうとする。


『守りを!』


 メイヤーがカードを投げ飛ばし叫ぶ。

 カードが発動し、ワイバーンの尾を透明な壁が阻む。

 怒り狂ったワイバーンが何度も何度も壁に尾を叩きつける。

 地面に着したアンリがシャロン達の元へと駆け寄ろうとした刹那、メイヤーが張った壁が音を立てて壊れた。

 メイヤーが顔を青ざめさせた。


「逃げてください!シャロン!!」


 だが、シャロンは逃げずにユエルスを構える。


 ここで逃げてしまえば、メイヤーが襲われてしまうかもしれない。

 なら、相討ち覚悟でやるしかない!


 覚悟を決めたシャロンがユエルスを放つ。

 矢はワイバーンに突き刺さるが、倒れる気配がない。

 もう一度、矢を放とうとしたその時ワイバーンが一際大きな咆哮をあげると鋭く尖った尾を再びシャロンめがけて振う。


 グシュッ!!


 シャロンの腹をワイバーンの尾が貫く。

 

「‐‐‐‐っ!」


 あまりの激痛にシャロンは背中をのけ反らせ、声にならない悲鳴を上げる。

 身体を貫かれるゾッとする感覚。

 

 …パリンッ!


 不意に頭の中で何かが割れる音が響く。

 それと同時に痛みが消えた。


「な、んで?」


 動揺するシャロンの身体からワイバーンは尾を引き抜きもう一度、攻撃を仕掛けようとする。

 それに気づいたシャロンがスッと目を細めた。


「何度もやられてたまるもんですか…っ!」


 シャロンはユエルスを放った。

 シャロンの思いの影響で貫通力を増した雷の矢がワイバーンの脳天を貫いた。

 ワイバーンは空気が裂くような絶叫を上げ絶命した。


「ふう…」

「シャロン、怪我は!?」


 メイヤーが駆け寄ってきて、シャロンの腹を見る。

 そこには服が破けているだけでお腹には一切傷がなかった。


「何で傷が…」

「なんでだろうね?」


 首を傾げた瞬間、シャロンはあることを思い出した。

 それは、戦いに行く前にアンリに渡されたお守り。

 ポケットにしまいこんでいた、お守りを出してみた。


「あ…」


 アンリからもらったお守りは粉々に碎けていた。

 嫌な予感が胸を締め付ける。


 アンリから貰ったお守りが…。


 シャロンは慌てて周囲を見回す。


 アンリはどこ?

 いつもなら、自分のピンチには真っ先に駆けつけてくれるのに…!


 すぐにアンリは見つかった。

 己の血に身を沈めた姿で…。


「アンリ!!」


 シャロンはアンリの元へと駆け出した。




 

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