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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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相棒

 アンリはワイバーンに向かって氷月華で宙を薙ぎ払う。

 その一閃が氷の刃となってワイバーンに襲いかかるが、尻尾によって振り払われた。


「くそっ…!」


 悪態をつき、近くの屋根へ着地をするともう一度ワイバーンに向かって飛びかかる。

 ワイバーンはそれを煩わしそうに、怒りの咆哮をあげるとアンリに火を噴く。

 魔法で宙に氷の足場を作ると、アンリはさらに高く飛び上がりワイバーンの頭上へと躍り出た。

 己の炎でアンリを見失っていたワイバーンは顔を空へと向けると、アンリが自分に向かって垂直に氷月華を構え落下してきていた。


「食らえっ!」


 アンリは氷月華をワイバーンに深く突き刺した。

 


 はずだったが、僅かに剣先が鱗にヒビを入れただけでダメージを与えることが出来ない

 氷月華に全体重をかけるが、少ししか鱗を砕けない。

 その時、アンリはあることに気づいた。

 が、それと同時にワイバーンが激しく頭を動かしアンリを振り払った。


「…!」


 突然の事にアンリは受け身を取ることが出来ずに近くの民家の屋根へ叩きつけられた。


「うっ…」


 身体中に激痛が走り呼吸するだけでも辛い。 

 それでも、無理して目を開けばワイバーンが大きな尾を高く掲げアンリに向かって降り下ろそうとしているところだった。


「まずい…っ!」


 慌てるが、上手く立てない。

 ワイバーンが尾を振るい落とす。

 その刹那、ワイバーンの尻尾の先を金色の矢が貫く。


「ギャアァアアァァァァ!」


 ワイバーンの絶叫が空気を震わせた。

 アンリはそれを見てニッと笑うとゆっくり立ち上がる。


 見なくても、誰が放ったものかすぐにわかる。


 アンリは矢の方を見るとシャロンがユエルスを構え、安堵したような顔をしてこちらを見ていた。


「…頼れる相棒だな。よし」


 アンリは気合いを入れ直すと、傷みで空中で暴れまわるワイバーンの上に飛び乗った。


「おわっと!」


 想像以上に揺れるワイバーンの背になんとかしがみつき、吹っ飛ばされないように気をつけながらアンリは鱗と鱗の繋ぎ目に氷月華を深く突き刺した。


「ギャアァアアアアアアッ!」


 一際大きな悲鳴を上げるワイバーン。


「凍りつけ!!」


 アンリは氷月華の刃から己の魔力と氷月華の魔力を注ぎ込み、ワイバーンを内側から一気に凍りつかせた。

 そして、氷がワイバーンを完全に覆い尽くした。


「シャロン!!今だ!!」


 アンリの叫びでシャロンはユエルスを放つ。


「碎け散りなさい!!」


 シャロンの放った矢は今度こそワイバーンを貫き、粉々に碎け散った。

 ワイバーンが消え去り、地面に落下しながらアンリは街中で他のワイバーンの咆哮を聞く。

 きっとこれで他のワイバーンはリラースタンから逃げて行くだろう。

 アンリは安堵しているであろうシャロンの方を見て、身体を強ばらせた。


「シャロン!!!」


 アンリの叫びが周囲に響いた。

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