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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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信じる

「シャロンっ!」

「わかってるわよ!」


 シャロンはユエルスの弦を限界まで引くと、空に優雅に舞うワイバーンにむかって放った。

 雷の矢はヒュンッと空を切り裂き、ワイバーンへと目掛けて飛ぶ。

 矢は見事にワイバーンの腹へと刺さるがそのまま大した傷を着けること無く弓矢は霧散して消えた。


「あの、ワイバーン今までと桁違いね」


 シャロンは舌打ちをする。

 今までの奴等ならユエルスで簡単に突き抜けるのに、あのワイバーンだけは何度も矢を放っても結果は同じで全く歯が立たない。


「あのワイバーンには、肉体強化の魔法もかかってる。簡単には貫けないんだ。…それだけ重要ってことだよな」


 やっぱり自分の推理は間違ってないと感じる。

 あのワイバーンはきっとリーダー格だ。

 あいつさえ倒すことが出来れば、他の奴等は巣へと逃げ帰っていくはず。


「よし、もう一度やってみよう!今度は俺があいつの動きを封じ込める。シャロンはその時を狙って矢を放て!」

「わかった!」


 アンリはシャロンの返答を聞いた後、タンっと地面を蹴り飛ばし屋根の上に飛び乗ると駆け出す。

 ワイバーンは、自分に近づいて来るアンリに気づくと身体をひねり、長い尾をアンリにむかって降りおろした。

 家の屋根が煙を立てて崩れ落ちる。


「アンリ!!」


 下から見ていたシャロンが叫ぶ。

 だが、直ぐに煙の中から弾丸のように黒い影がワイバーンに向かって飛び出した。

 アンリだ。

 ホッと胸を撫で下ろすと、背後に殺気を感じ振り返ると別のワイバーンがシャロンに向かって火を噴く瞬間だった。

 シャロンは咄嗟に、前に転がりワイバーンの懐に入り込んでそれを回避すると呪文を叫んだ。


『水よ、沸き上がりなさい!』


 ワイバーンの真下から水柱が勢いよく吹き上がり、空高く打ち上げた。

 それを見届けた後、シャロンが腕を振るうと打ち上がったワイバーンに雷が落ちた。

 凄まじい電流に襲われ、ワイバーンは地面へと墜落した。

 シャロンは倒れ込んだまま動かないワイバーンにしばらくユエルスを構えて待ち構えたが、一向に動かない。

 シャロンは肩の力を抜く。


「私を襲ったことを後悔しなさい」

「シャロン!」


 目の前からメイヤーが駆け寄ってきた。


「メイヤー!大丈夫!?」

「私はなんとか…。シャロンは?」

「私も平気よ」

「よかったです…。アンリは?」


 シャロンは後ろを向き、今までのワイバーンより一際、大きなワイバーンを指差す。


「あれと戦ってるわ」


 メイヤーはサッと顔を青ざめさせる。


「だ、大丈夫なんですか…!?」

「アンリは強いもの、大丈夫よ。それに」


 シャロンはユエルスをワイバーンに向けて構えた。


「私だっているんだから」


 そう言ってシャロンはアンリが作るチャンスを信じてワイバーンとの戦闘を見守る。

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