表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
65/187

シエラ&トト

 天津星【アマツボシ】の銘を持つ槍を手に、シエラはワイバーン達の咆哮を聞いて苦々しい顔で空を見上げた。


「くそ、切りがねーな!」

「どこから沸いてでてきてるんだろな?」


 シエラの文句にトトは相づちを打つと、空を飛ぶワイバーンを指差す。


『貫け!稲妻っ!』


 空を切り裂く音と共にワイバーンに雷が堕ちる。

 雷に撃たれたワイバーンがトト達の方を向くと真っ直ぐこちらへ向かってくる。


「後は任せた」


 トトの一言にシエラは頷くと、天津星を構え狙いを定める。

 その間にもワイバーンが近寄ってくる。

 シエラは微動だにせずにその様子をただ見つめ、己の攻撃範囲内に入った瞬間ニヤリと笑う。


『天津星、お前の力を解放する!』


 シエラの声に応じて、天津星が輝き出す。


「喰らえ!!このくそがぁぁああぁぁあぁっ!!」


 シエラが渾身の力で天津星をぶん投げた。

 天津星は真っ直ぐ飛びワイバーンの脳天に突き刺さる。

 ワイバーンが悶絶しながら口から炎を吐き出す。


「おっと!」


 シエラは軽い身のこなしで炎を避けると、地面を蹴りあげワイバーンの顔の上に乗り頭に突き刺さった天津星の柄を握りしめ一気に引き抜く。

 傷口から血が吹き出すが、シエラは顔色一つ変えずに反り血を浴びると天津星を高く掲げた。


「さっさと、くたばれ」


 ブツッと硬いものを貫く音がする。

 だが、シエラは特に辛そうな顔もせずに手元まで深く突き刺した。

 すると、ワイバーンは絶叫しのたうち回る。

 振り落とされないように必死に天津星にしがみつくシエラ。

 周囲の家々を破壊しながらしばらく暴れまわったのちにようやくワイバーンは絶命した。

 安堵のため息をついた後、シエラは天津星を抜きトトの元へと行く。


「さすが、給料三ヶ月分だな」


 トトの言葉にシエラはふんっと鼻を鳴らす。


「給料十年分だ、バカ。術具だから高かったんだぞ…」

「持ち主の力を増幅させる術具ね~。もっといいのを買えばよかったのに」

「ばか野郎!これが一番使い勝手がいいんだよっ!」

「へぇー。まあ、無駄話はやめてワイバーン退治にでも行こうぜ?」

「無駄話って…!ちくしょー!」


 シエラは怒鳴り散らすと、ふと真顔になる。


「アンリ達は大丈夫かな…?」


 そんなシエラにトトはニカッと笑いかけた。


「あいつらなら大丈夫だよ。結構強いし」

「へぇ…。トトってアンリの事嫌いなのかと思ってた」

「嫌いじゃないさ。ただ、メイヤーを取られるのが嫌なだけだ!」

「そのシスコンが無ければいい奴なのにな」

「お前、今度魔力に余裕があるときに燃やしてやるからな」

「じゃあ、俺は魔力が無くなるまで必死に逃げるか」

「逃がさないから。…てか、次行くぞ。お前がいないと俺の魔力が直ぐ無くなるからな」

「へいへい。じゃあ、がんばりますか」


 シエラは肩をすくめると、天津星を担ぎ空を見上げる。

 空には、ワイバーンが数匹飛んでいた。

 これを倒すのはかなり骨が折れそうだ。


「団員、全員が無事に今日を乗り越えられますよーに!」


 シエラは叫ぶと先を行くトトの後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ