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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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準備

「あーあ、全く。エドウィンってば何処に行っちゃったのかしら?…まあ、いいわ。面白いオモチャも見つけたしね」


 リズはそう言ってクスクス笑う。

 彼女はワイバーンの背中に乗り、リラースタンを見下ろす。

 エドウィンを怒らせた後、追っかけてみたが見つからず結局、彼女の魔力を追跡してここまで来たらたまたま混血の少年を見つけた。

 面白そうだから、ワイバーンを使って襲わせたがなかなか面白かった。


「エドウィンも見つからないし、ちょっとの間暇潰しに協力してもらおうかしら?…ねぇ、夜。その間にエドウィンを見つけておいてね?」


 リズは肩に止まっている鴉の背中を優しく撫でる。


 夜と呼ばれた鴉は一鳴きすると、月の照らす闇の中へと飛び立って行った。


「さぁ、あなた達にはこれからたくさん協力してもらうわよ?」


 リズは本当に楽しそうに笑い声をあげるのだった。




 ‐次の日‐




「アンリ、そこのマント取ってくれないか?」

「これでいいのか?」

「そう!」


 アンリはハンガーにかけてあったマントを取ると、シエラに投げて渡した。

 シエラはマントを羽織るとアンリの方を見てニヤリと笑う。


「どうだ?魔王みたいだろ?」


 黒を基調とした衣装を見たアンリは、苦笑した後頷く。


「魔王なんて、見たことないけど確かにイメージ通りではあるな」

「ていうか、魔王ってあんまり同族でも姿見せないらしいな」


 そう言って更衣室に入ってきたのはトト。


「へー、知らなかった。誰から聞いたんだ?」

「知り合いの魔族から聞いたんだ。…少し前までは、魔族なんてよくいたのに最近魔王が変わったらしくて全然見なくなったんだよなぁ」


 トトはそんなことを言いながら、ポンっと手を叩く。


「女性人の着替えが終わったってよ」

「お?じゃあ、見に行くか?…シャロンの晴れ姿見てみたいだろ」


 シエラの言葉にアンリは頷くと、三人は女性の更衣室へと向かう。

 更衣室の前には、メイヤーがいてアンリを見ると笑顔を見せた


「メイヤーは着替えないのか?」


 普段通りの服装にアンリは首をかしげた。

 

「ええ。私は舞台効果担当ですから。もしよければ、劇が始まったら一緒にいますか?よく見えますし」

「本当か!?じゃあ、そっちで見ようかな」


 トトがムッとしてなにか言おうとした刹那、扉が開いた。

 中から出てきたのは頭に木の枝のような角を左右対称に着けたチコ。

 珍しい着物姿のチコを見て、アンリは感嘆の声をあげた。


「うわ、馬子にも衣装だな」

「アンリ?劇が終わったら絞め殺してあげるからね?」


 背筋にゾワっと冷たいものが流れ落ちた。

 アンリは助けを求めるようにシエラを見ると直ぐに目を反らされた。


「ちょっと、チコー!髪型おかしくない?」


 シャロンが不安そうに言いながら出てきた。

 シャロンは着物で裾がふわりとした、どこかの使用人のような衣装で茶色の長い髪には色とりどりの花が散りばめられていた。


「大丈夫だって!ねぇ?アンリ?…聞いてる?」


 話を振ったのに返事が来なくて首をかしげて、アンリの顔を覗き込むチコ。

 アンリは惚けたように、ぼーとシャロンを見ている。


「…アンリ?」


 シャロンは顔を少し赤くしながら、アンリが心配になり声をかける。

 アンリはハッとして我に帰る。


「あ、ごめん。…えーと、似合うよ。すごく」

「…ありがとう」


 シャロンは気恥ずかしくなり俯く。

 

「ちょっと、アンリ!あたしと反応が違うじゃないのよ!」

「そんなことないって!」


 チコに首をギュっと閉められて苦しそうに呻くアンリの手をメイヤーが掴んだ。


「メイヤー?」


 メイヤーの行動に驚いてシエラが声をかけた。

 しかし、メイヤーはシエラを無視してアンリを引っ張った。


「ほら、そろそろ始まりますし行きましょう!」

「え、あ、うん。…じゃあ、また後で」


 アンリはシャロンたちに手を振ってメイヤーに連行されていった。


「メイヤーの奴、どうしたんだ?」

「さあ?」


 シエラとチコは首をかしげて顔を見合わせ、トトは呆れたようにため息をついた。


「…」


 シャロンはただ、黙って二人の背中を見送る。



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