魔力
それから直ぐにレルムが現れると、アンリ達の前に座る。
「昨日は災難だったな。にしてもあんた達に怪我が無くて良かったよ」
そう言ってから、レルムは急に深刻な顔をした。
「ところであんた達気をつけな」
「な、何をですか…?」
シャロンはゴクリと唾を飲み下す。
「今からリリアが紅茶を淹れてくる。…リリアの淹れた紅茶はヤバい。気をつけな」
レルムの忠告の後、リリアが問題の紅茶をもって再び現れた。
「さて、お茶にしましょう?」
リリアはそう言って、皆の前にカップを奥と紅茶を注ぎ始めた。
注がれた紅茶の色に、アンリとシャロンはギョッとする。
「えーと…」
シャロンは言葉を失う。
紅茶の色がまさかの青色なのだ。
紅茶はお茶が紅色だから紅茶はなのにこれでは青茶だ。
絶対飲みたくない…。
「リリアさん、これって何を淹れたらこうなるんですか…?」
アンリが勇気を出して聞いてみた。
「茶葉は内緒ですわ。美味しいから飲んでみてくださいな」
満面な笑みで言うリリアにアンリは愛想笑いを浮かべた。
「さあ、どう「あー!そうだ。私たちに聞きたいことがあるんだろ?早く話を始めないか?」
レルムが慌てて言う。
「そうですわね。何が聞きたいんですの?」
アンリはレルムに感謝の視線を送ると、表情を引き締めた。
「昨日、話を聞いていたときにお二人が魔力が弱くなったとか聞いたので…。その話を詳しく聞きたいんです」
アンリの言葉にレルムとリリアの表情が一気に曇る。
「ああ、その事か…。そうだな、前よりは確実に魔力が弱くなった」
レルムは舌打ちをして頭を掻く。
「それっていつからですか?」
これを聞いたのはシャロン。
好奇心に負けてしまって口を挟んでしまった。
「そうですわね…。三ヶ月前位でしたわね。他の街の守護者達もそんなこと言ってましたわね」
「守護者達だけじゃなくて、魔力のある奴らの大半は弱くなったらしい」
アンリは顔を険しくすると頷く。
「故郷の守護者であり、俺たちの師匠もメイヤーも魔力が弱くなったと言っていました。三ヶ月前かどうかはわかりませんが…」
師匠が言っていたように、魔族の仕業なのか?
だとしたら何のために…?
アンリは唸る。
リリアも深刻な顔をした。
「そして、今一番の問題はワイバーンの繁殖期なのです」
「リラースタンはワイバーンの生息域だからな。幻獣対策のために守護者が二人なんだ。…でこの季節になるとワイバーン避けの結界を張るんだが、今年は魔力が弱すぎて満足な強度に達していない」
レルムの言葉にシャロンはサッと顔を青ざめさせた。
「じゃ、じゃあ、ワイバーンが群れで襲ってきたら…!」
リリアが頷く。
「耐えられないでしょうね」
その言葉で全員が黙り混む。