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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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【魔女の大釜】

 アンリに連れてこられたのは、街の中心にある【魔女の大釜】という魔法用品店。


「なんか買い物?」


 シャロンの言葉にアンリが首を横に振る。


「いや、買い物は…まあ、するならついでかな?用があるのは店主なんだ」


 アンリはそう言って扉を開く。

 扉に着いたベルがカラン、コロンと涼やかな音を立てた。

 シャロンは少し緊張しながら中へ入る。

 中は黄昏時のせいもあるのか、少し薄暗い。

 木でできた棚には怪しい色の魔法薬や目玉が瓶一杯に詰められたものなどが並べられていた。

 天井には魔法薬で使う草花が吊るされて乾燥させられている。


「絵本に出てくる魔法のお店みたい」

「ヒューディーク村にはこういう店ないもんな」


 アンリは同意しながら、テーブルに並べられたアクセサリーに手を伸ばす。

 身代わりの魔法や、厄除けの魔法がかけられていた。


「一回くらいしか効き目がないけど、シャロン買うか?」

「大丈夫よ。自分の身は自分で守れるわ」


 何となく馬鹿にされてる気がして、冷たく言い返すシャロン。


「あら、お客様ですわね。お待たせしました」


 その時、聞き覚えのある声が店の奥から聞こえた来た。

 そして、出てきたのは昨日助けてくれたリラースタンの守護者であるリリアだった。


「あ、貴女は…!」


 驚くシャロンを尻目にアンリは頭を下げる。


「昨日はありがとうございました」

「あらあら、まぁまぁ。貴方達は昨日、劇団の皆様といた方でしたわね。えーと…名前は…」


 リリアが困ったような顔をする。

 そういえば、まだ彼女に名前を言っていなかったことをアンリは思い出す。


「アンリ・ローレンスといいます。こちらは一緒に旅をしているシャロン・アシスです」

「どうも…」


 リリアは二人を見てぱあぁっと顔を輝かせた。


「アンリとシャロンですわね!覚えましたわ。何かお探しで?」

「いえ、違います。今日はリリアさんとレルムさんに守護者としてお話を聞きに来たんです。…今、大丈夫ですか?」


 アンリの言葉にリリアは不思議そうな顔をしたが直ぐに頷いた。


「構いませんわ。では、少し遅いですがお茶会でもしましょうか?ついていらして」


 リリアはそう言って店を閉めると、アンリとシャロンを裏口へと誘う。

 裏口を出ると、小さいが綺麗に整えられた中庭に出た。


「もう少し太陽が上にあったらお外で紅茶を飲むと気持ちよかったのでしょうね」


 などと、世間話をしているリリアの後ろでシャロンがそっとアンリに耳打ちをする。


「ちょっと、何であのお店が守護者が経営してるって教えてくれなかったのよ?最初から知ってたの?ていうか、そもそも守護者がお店を出すってことあり得るの?」

「ああ、ごめん。俺も買い物してるときにたまたまシエラが教えてくれたんだよ。…守護者が店を出すのは割りと普通だと思うけど、大きな街の守護者なら、副業で術具屋とか魔法用品店とか店を出してる」

「へー。じゃあ、師匠もお店を開けばいいのにね」

「ヒューディーク村の規模じゃ店が赤字になっちゃいそうだな」


 アンリは苦笑したあと、立ち止まる。

 リリアが住居になっている方の建物の扉を開いて待っていたからだ。


「どうぞ?お入りになって」


 リリアに促され、二人は中に入ると入ってすぐのテーブルに案内された。


「姉さんを呼んできますわね。ここで待ってらして」


 リリアはそう言い残して姉を呼ぶために家の奥へと消えていった。

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