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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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買い物

 不機嫌だったシャロンもヒューディーク村よりも遥かに都会なリラースタンの街並みを見ているうちに機嫌は治っていった。


「見て!チコ!!!この服凄い可愛いよ!」

「はいはい…。あんた元気ね…。あたしは徹夜明けで眠いって言うのに」


 そんなことを言いながら、律儀にシャロンの買い物に付き合うチコ。

 キャッキャッ、言いながら買い物をする二人から少し離れたところでアンリとシエラはその様子を見ていた。


「本当に女子は買い物が好きだよな…」

「そうなのか?俺は誰かと買い物なんかしたことないから、知らなかった」

「あ、そっか…わりぃ」


 ばつの悪そうな顔で謝るシエラにアンリは笑って首を横に振る。


「気にしなくていいよ。それにしても、こんな風に誰かと…。シャロンと買い物ができるとは思ってなかったな。…シエラ達のおかげだろ?」

「え!?わかってたのか…!」


 驚くシエラにアンリは笑い声をあげた。


「わかるって。…俺の話を聞いてくれた日にシャロンになんか話したんだろ?その次の日の朝、シャロンと真剣勝負したんだ」

「はぁ!?勝負!?」


 思わず大きな声をあげてしまい、慌てて口を塞ぐ。


「マジかよ…」

「うん、でもそれをきっかけにシャロンとちゃんと話せるようになった。俺のことを許してくれてるのかわからないけど、歩み寄ろうとしてくれてる。そのきっかけを作ってくれてありがとう」


 シエラは照れ臭そうに頬を掻く。


「別にお礼を言われるようなことは…」

「何、照れてんだよ!気持ち悪い!」


 アンリはシエラの背中をバシンッと叩く。


「いってぇ!気持ち悪いってなんだよっ!!こいつー!」


 そう言ってアンリの両方を思いっきり伸ばすシエラ。


「いひゃい!いひゃいから!!!ごめ…。ごめんなひゃい…!」

「あんたたち、何やってるの…?」


 買い物を終えたチコが冷めた目で二人を見る。


「お、おかえり。ちょっと制裁を…」


 シエラはぱちんとアンリの頬を放す。


「あー…痛かった。…いいの買えた?」

「うん!やっぱり着替えは必要だよね」


 シャロンは満足そうに言う。

 着の身着のままで旅をしていたのだ。

 着替えを買えて本当に嬉しい。


「後買わないと行けないのは、シャロンの靴だな。…靴擦れしないのを買わないと、それだと旅が出来ない」


 アンリの指摘にシャロンはうっ…と唸って頷く。

「そ、そうだね。でも、靴の選び方なんてわからないし…」


 シャロンの言葉にチコは目を輝かせると手を掴んだ。


「それなら任せて!行くわよっ!」

「ちょ、寝不足なんじゃなかったの!?」

「そんなこと言ってられないわ!行くよ!!」


 チコはシャロンを引っ張って颯爽と走り去って行った。

 残されたアンリとシエラは顔を見合わせた。


「俺らはどうする?」

「そうだな…。シャロンの事はチコに任せて、俺は旅に必要な物を買い揃えるかな…。あとはウサギと熊の毛皮売りたいし」

「じゃあ、まずは質屋だな。いい店教えてやるよ」

「助かる!じゃあ、早速行こう!」


 シャロンは靴を買いに、アンリは他の旅の備品を買うために奔走することになった。


 それから時間が経ち、黄昏時。

 シャロンとチコはようやくアンリ達を見つけることができた。


「いた!もう探しちゃったよ」


 シャロンはため息をつく。


「ごめん、買うものが多くてな。靴は?」

「ばっちり!チコのお陰でいいの見つかったよ」

「よかった」


 仲良さそうに話すアンリとシャロンを見てシエラ達は顔を見合わせると微笑んだ。


「さて、帰るか。そろそろ夕飯だし」

「あ、先に帰っててくれないか?俺、寄りたい所があるんだ」


 アンリの言葉にシエラが首をかしげた。


「いいけど…。一人で行くのか?」

「ああ、ちょっと調べたいことがあるんだ」

「なら、私も行く」


 シャロンの申し出にアンリは驚いたが、断っても絶対ついてくると悟り頷いた。


「じゃあ、一緒に行こうか。…悪いけど団長に言って置いてくれ」

「わかったわ。アンリ、シャロンに変なことしないでよね!」

「変なこと…?」


 シャロンは顔を真っ赤にさせるが、アンリは何を言ってるかわからないというような顔をして、シエラとチコを見送る。


「じゃあ、行こうか」

「え、あ、うん!」


 アンリとシャロンはある場所へと歩き出した。

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