リラースタン
団員達の治療が大体、終わるとレルムがため息をついて立ち上がった。
「大体終わったな。後はこの子だけだけど、両脚の骨が砕けてる。医者に見せて骨を元の位置へ戻さないと歩けなくなっちまう。早くリラースタンに行こう」
「なら、馬車を飛ばそう。一台なら魔法で早く行けるはずだ」
団長の言葉にリリアが頷く。
「そうですわね。そうと決まれば早く行動をしましょう。ここに長居していれば、またワイバーンが来てしまいますわ」
レルムは脚を骨折した団員を担ぐ。
「よし、行こう。シエラ達はこの馬車に他の怪我人を乗せて街まで来てくれないか?」
団長の言葉にシエラは頷いた。
「わかりました。アンリ!馬車を起こすのを手伝ってくれ」
「わかった」
アンリとシエラは団長たちを見送った後、馬車を起こすと傷ついた団員達を馬車に乗せた。
「よし、じゃあ、行くか」
「うん。馬達がたいした怪我じゃ無くてよかった」
「だな。レルム達に治せる程度でよかったぜ、全く…」
シエラは安堵のため息をついた後、御者台に乗り込むとアンリに手を差し出す。
「ほら、行くぞ」
アンリはシエラの手を掴み御者台に乗る。
シエラはアンリが乗り込むと、馬車を走らせた。
馬達は先程の襲撃を忘れたかのように軽快に走る。
「シエラはレルム達と知り合いなのか?団長も知ってるみたいだったけど」
「ああ、俺達はいつもこの季節になるとリラースタンに行くんだよ。この辺はワイバーンの繁殖地域で、街の外に行くのは困難なんだ。娯楽が少なくなるこの時期に行って講演して少しでも街の人たちの気持ちを明るく出来ればと思ってるんだ。…その時によく厄介になるのが、レルムとリリアなんだ」
「そっか、それで知り合いなのか。…シエラ達って、人々の希望なんだな」
アンリの言葉にシエラは驚いた顔をする。
「そんなこと言われたの初めてだよ」
「本当に?俺はそう思うけど。そんな暮らしちょっと羨ましいな」
「なら、この呪いを解く旅が終わったら俺達と世界を一緒に旅しようぜ!いろんな所に行けて楽しいぜ!きっとアンリも気に入るさ」
シエラの笑顔を見てアンリは眩しそうに目を細める。
「…そうだな。それも楽しそうだ。考えとくよ」
「おう!楽しみにしてるぜ」
シエラは本当に楽しそうに笑って答えた。
それから夕方になってようやく馬車はリラースタンへとたどり着いた。
「とりあえず、いつもテントを広げる広場に行こう。そこに行けば皆と合流できるはずだ」
シエラの提案で、馬車はリラースタンの街中をゆっくり進む。
生まれ故郷であるヒューディーク村より遥かに栄えている街を見て、アンリは驚きと感動で目を見開いた。
夕方でも人がたくさん街中を歩き、店が並ぶ道は活気に道溢れている。
「本当に都会なんだな…」
「落ち着いたら案内してやるよ。ここの食べ物すごくうまいんだ。…まあ、キナには及ばないけどな」
シエラの言葉にアンリは目を輝かせて頷くと、早くリラースタンを見て回りたくて、心が踊った。