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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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守護者

 アンリは反射的にシャロンを守るように抱きしめ、そのまま激しく地面に叩きつけられた。


「…っ」


 衝撃で息がつまる。


「う…。アンリ、大丈夫?」


 腕の中から聞こえるシャロンの声にアンリはため息をついた。


「大丈夫。シャロンは?」

「…平気」


 そう答えてシャロンはアンリの腕の中から抜け出すと、アンリを助け起こした。


「死ぬかと思った」

「同感…って、アンリ!後ろ!!!」


 眼を見開いて、自分の後ろを指をさし叫ぶシャロンにアンリはハッとして振り替える。

 一体のワイバーンが大きな口を開いて、すぐ近くまで来ていた。

 火を吹くつもりなのか、噛み砕くつもりなのか。

 アンリは立ち上がり、シャロンを自分の後ろに隠して壁になると氷月華を構えた。

 その刹那、別のワイバーンの声が聞こえてアンリは慌ててシャロンの方を見ると、やはり大きな口をあけているワイバーンがシャロンの背後にいた。

 右を見ればさらに別のワイバーンも。

 アンリの背中に冷たいものが流れる。


 囲まれた…!

 どうする?せめてシャロンのだけでも…。


「シャロン、俺がなんとか隙を作るからお前だけでも…」

「馬鹿言わないで。私だって戦うわよ!前に言ったでしょ?私も国家公認魔法使いになるために修行したのよ。私だって戦える。それに…」


 シャロンは口を閉じた。


 アンリを置いて逃げれるわけないじゃない…!


 シャロンは深呼吸をして、アンリを見て笑う。


「背中を任せるわ、アンリ」


 アンリは驚いて言葉をつまらせた後、頷いた。


「…わかった。じゃあ、俺の背中もよろしく頼むよ」

「任せてよ」


 そう言ってシャロンはアンリに背を向けて、自分に大きな口をあけて威嚇するワイバーンを見て苦笑した。


 手が震えている。

 本当は怖い。

 でも、背中を合わせているアンリの背中も自分と同じように震えているから。

 何故か少しだけ勇気が出た。

 アンリもきっと怖いんだ。

 自分だけじゃない。


 シャロンはユエルスを構えた。

 ワイバーン達が一斉に咆哮をあげる。

 アンリとシャロンが身構えた。

 その刹那、ワイバーン達の下から水柱が吹き上がった。


「「!?」」


 二人が驚いて顔を見合わせる。


「ガキ共、頭を低くしてな!」


 聞きなれない女性の声に二人は慌てて地面に伏せた。

 すると、頭の上を火の玉が通過して、ワイバーンを燃やす。


「姉様!言葉が荒いですわ!」


 そんな声と共に燃えているワイバーンの体を地面から突き出た土柱が貫く。


「一体何が…」


 唖然とするアンリ達の前に颯爽と現れたのは髪を短く切り揃えた女性と、長い髪を三つ編みに結った女性。

 共に銀の美しい刺繍を施されたローブを身に纏っている。

 守護者だ。


「リリア、めんどくさい。一気に殺るよ!!!」

「レルム姉様はいつも乱暴なんですから…。でも、賛成ですわ」


 リリアと呼ばれた三つ編みの女性は差し出されたレルムの手を握る。


『『統合魔法!!!…その身を滅ぼせ!!』』


 二人が叫ぶ。

 すると、残った二体のワイバーンの身体が内側から輝きだした。

 次の瞬間、ワイバーンの身体が爆ぜた。


「すごい…」


 シャロンが感嘆の声をこぼす。


「全く、繁殖期なのはわかるが今年

は暴れようが酷いな」

「そうですわね。きっと何かあるのかもしれませんわね」


 二人の守護者はそう言った後、アンリとシャロンに向き直ると笑いかける。


「怪我はないか?」

「危ないところでしたわね」

「あの、二人は一体…」


 アンリの言葉に、レルムとリリアは同時に答える。


「「リラースタンの守護者。ようこそ、リラースタンへ」」



 


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