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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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ワイバーン

 幌から出ると、馬車を操るトトとメイヤーの後ろで目を見開く。


「ワイバーンの群れ!?」


 空には五体もの魔獣であるワイバーンが馬車を狙って飛んでいた。


「シャロン!危ないですから中へ!!」


 手綱を握ってないメイヤーが怒鳴る。

 そして、手に持っていたカードをワイバーンに向かって投げつける。


『雷!』


 メイヤーの言葉でカードが発動し、ワイバーンに雷が襲いかかる。


「何、ボーとしてるんですか!」


 シャロンはメイヤーの言葉にハッと我に返った。


「ごめん、アンリはどこ?」


 シャロンがメイヤーに聞いた瞬間、馬車の中から悲鳴が聞こえた。

 声の主はチコだ。


「チコ!?」


 シャロンが慌てて首だけ幌の中に入れると、ガクガク震えているチコをシエラが抱き締めていた。


「どうしたの?」

「チコの家族はワイバーンに殺されたんだ。だからワイバーンが出るとその時のこと思い出しちまうんだ」


 シエラの言葉にシャロンは震えるチコを見て、力強く頷いた。


「私がワイバーンを蹴散らすから待ってて!」


 シャロンは再び、外に出てワイバーンを睨む。

 会話を聞いていたメイヤーがため息をついて馬車の屋根を指差す。


「アンリは屋根の上です。気を付けてくださいね」

「ありがとう」


 シャロンは腕を伸ばして屋根にしがみつくと這い上がろうと試みる。

 が、ワイバーンの攻撃のせいで馬車が安定せずなかなか上に這い上がれない。


「くっそー!」


 シャロンがもう一度、踏ん張って這い上がろうとするとシャロンの腕をアンリの手が掴んだ。


「アンリ!?」

「引き上げるから、力入れろ!」

「うん!」


 アンリの手助けもあってなんとか屋根の上に這い上がると、ゼーハーゼーハー言いながら呼吸を整える。


「シャロン、ここは危ないのに何で来た?」

「わ、私だって戦えるわ!師匠の元で国家公認魔法使いになるために修行をしたんだもの!私もワイバーンと戦う!!足を引っ張らないように頑張るから!」


 シャロンの真剣な目にアンリはため息をつくと微笑んだ。


「足を引っ張るどころか助かる」


 アンリはそう言って屋根の上に座り込むシャロンに手を差し出そうとしたが、慌ててシャロンの上に覆い被さる。


「おわっ!」


 シャロンは驚いて悲鳴をあげるが、すぐに状況を飲み込んだ。

 ワイバーンがアンリたちの馬車の上をスレスレで飛んできたのだ。

 ワイバーンをやり過ごすと、シャロンを立たせる。


「シャロン、聞いてほしいんだけど」

「何?」

「昨日戦って気づいたんだけど、シャロンのその魔具は多分、シャロンの強い思いで貫通の力が付与されるんだと思う。エドウィンの時はそんなに貫通力は無かったけど、俺と戦ったときは貫通力が増した。きっと戦う覚悟を決めたからだ」

「倒したいって強く思えば思うほど何でも貫ける?」

「全部推測だからわからないけど」


 自分もアンリと戦ってたとき思った。

 あんなに厚い氷を貫通するなんて想像してなかったから。


 自分の思いで貫通の力が付与されるなら…!


「ワイバーンの硬い鱗を貫けるかもしれないんだね!」


 シャロンの言葉にアンリは頷くと氷月華を空に向かって高く掲げる。

 そして、自分の魔力と氷月華の魔力を練り合わせて剣の先から巨大な氷の塊を作った。


「行け!!」


 アンリは叫ぶと剣を降り下げた。

 それと同時に巨大な氷は砕けると、鋭い無数の刃となってワイバーン達に襲いかかる。

 だが、貫く事はできずワイバーン達の体に深く氷が突き刺さっただけだった。

 それでも、確実にワイバーンにはダメージを与えている。

 シャロンもユエルスを出すと、構えた。


 よし、私だって…!


 シャロンは深呼吸をして、弦を限界まで引く。

 指輪が輝きだし、シャロンの主魔法である雷の矢が装填された。


「貫きなさい!!」

 シャロンの掛け声と共に矢は解き放たれ、近くに飛んでいたワイバーンの胸を貫く。

 ワイバーンは耳を塞ぎたくなるような悲鳴をあげて墜落する。


「やった!」

「シャロン!危ない!」


 喜んでいたシャロンは慌てて振り替えると、他のワイバーンがこちらに向かって火を吹いた。


「…!」


 硬直するシャロンを守るようにアンリが抱き締めた瞬間、炎は寸前のところで見えない壁に阻まれた。

 アンリが驚いて周囲を見ると、前を走る馬車の屋根の上に立つ座長がこちらを見て安堵のため息をついている所だった。

 どうやら壁は座長の魔法だったらしい。

 アンリは感謝を込めて頭を下げると、再び立ち上がる。


「シャロン、後四体だ。頑張るぞ」

「う、うん、」


 シャロンも気合いを入れ直してユエルスを構えた。

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