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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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宝玉記

【この世界を守るためにはやはり我らが管理するしかなかろう】

【なら、私たち妖精族が時間を司る石を預かりましょう】

【ならば我々は魔力を司る石を…】


 今、シエラたちはリラースタンでやる講演の読みあわせを移動中の馬車の中でやっていた。

 読みあわせの時は舞台効果を勤めるメイヤーとトトが馬車の運転を担当する。


 そして、いよいよ今日の夕方にはリラースタンにつく。

 それまで特にやることのないアンリとシャロンは読みあわせを黙って見学していた。

 演目は“宝玉記”

 この世界に古くから伝わる話だ。

 シャロンはシエラたちの練習を見るまでこの話を知らなかった。


 たぶん、魔族が出てくるから誰もこの話をしなかったんだろうなぁ…。


 そう思ってシャロンは苦笑する。

 

 しかも、魔族が世界を救ったとは…。

 まあ、おとぎ話だからしょうがないのだが。

 

 シャロンは読みあわせを聞きながら、話の内容を思い出す。


 昔、世界を滅ぼす力が宿るとされる宝玉が人間の住む里で発見された。

 しかし、貪欲な人間がそんなものを持てば間違いなく世界を滅ぼす。

 それを憂いた魔族、妖精族、竜族の王がそれぞれ宝玉を三つに砕き管理することになった。

 魔族が魔力を司る宝玉を。

 妖精族が時を司る宝玉を。

 竜族が死を司る宝玉を。

 それぞれが宝玉を管理することによって世界は救われたという。


 そんな話。 

 そして、シエラが魔王役でチコが妖精王そして、ナルアという団員が竜王の役をやっている。


「ねぇ、アンリ」

「ん?どうした?」


 アンリは首をかしげてシャロンの方を見た。

 和解して丸一日。

 ようやくアンリと普通に話せるようにまでに成長した。

 シャロンは内心、にんまりと笑いながら顔に出ないように気を付けながら口を開く。


「この話ってさ、伝説だよね?」

「そうだろうな。現実的にはありえないありえないだろ?そんな宝玉があったら悪巧みする奴が後耐えないだろ」

「だよね。でも…コロナの持ってた本には魔王石って名前を見かけたから」


 実はその本はずっとシャロンが持っていて、時々読んでいた。

 シャロンの言葉にアンリは唸る。


「ただの宝玉だろ?たぶん。魔族がそんなの持ってたら何度世界を滅ぼされることか…」


 アンリがうんざりしたように言う。

 そんなアンリが可笑しくてシャロンが小さく笑う。


「なんだよ?」

「別に?ちょっと面白かっただけ」

「俺が魔族だからって馬鹿にしてるだろ?」

「してないって」


 ちょっと図星だけど黙っておく。


 こうやって少しずつ仲良くなれたらいい。

 

 シャロンはそんなことを思う。

 その時、馬の悲鳴と共に馬車が激しく揺れた。


「きゃっ!」

「おっと」


 バランスを崩したシャロンがアンリが抱き止める。

 シャロンがカーっと顔を赤くして慌ててアンリから離れる。

 アンリは全く気にした様子もなく、険しい顔をしていた。


「…アンリ?」

「魔力を感じる」


 アンリはそれだけ言い残して幌から飛び出していった。


「ちょっとアンリ!」


 シャロンもすぐ追いかけるように幌から出た。

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