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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第三章
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断章

 エドウィンは豪奢な模様の描かれた扉の前に立つとため息をつく。

 この扉の向こうには、魔族の王が待っている。

 つまり、玉座があるのだ。


「…最近呼ばれることが多いな」


 エドウィンはもう一度、ため息をつくと中へ入る。

 そこにはすでに、六人の魔族が玉座に座る男に膝をついて頭を下げていた。

 そこには、もちろんオルガもいる。


「遅れて申し訳ありません」


 エドウィンはそう言って、オルガの隣にしゃがみこむと膝をついて頭を下げた。


「…全員揃ったな。では、始めようか。オルガ魔力はどれくらい集まった?」


 またこの質問か。


 エドウィンは胸のうちで悪態をつく。

 集まる度にこの質問だ。

 何回聞いてもそんなに前回と変わりがないだろうに。


「世界全土で約五十割です」

「一昨日と変わらないな」


 魔王はふんっと鼻を鳴らす。

 そんな魔王にエドウィンは、気づかれないようため息をついた。


「…まあ、いい。当初の計画より少し遅れてるが今回はその事で呼んだんじゃない。…最近、混血どもが喚いてる」


 魔王が不機嫌そうに言う。

 エドウィンもそれは知っていた。

 今の魔王、フェンネルの政権に反感をもつ半魔族たちが革命軍としてどこかにアジトを作って反乱の時を待っているらしい。

 そして、革命軍のリーダーの名は…。


「バン・ルルエール。…あの時殺しておけばよかった。あいつを中心に反逆者どもが集まっている。魔族の血を引いてなければ、魔力を搾り取れると言うのに。全く目障りだ」


 魔王はそう言って、自分の目の前にひれ伏す二人に目をつける。


「リズ、エドウィン。お前たちに混血の排除を命じる一人残らず殺せ」

「我が主の意のままに」

「はぁーい。任せてください」

「期待している。…今日はもう、下がっていい」


 魔王のこの一言で全員は立ち上がり部屋から出ていく。

 

 エドウィンは早くこの場から立ち去ろうと廊下を歩く速度を少しあげる。


「ちょっとー?私たち相棒なんだから置いていかないでよ、エドウィン」


 すぐ後ろで聞こえる甘ったるい声。


 最悪だ。


「うるさい、ついてくるな」

「魔王様の命令だもの、しょうがないじゃない?」


 目の前に回り込んできて、笑うリズをエドウィンは冷ややかな目で見る。


「ねぇ?エドウィン。何をたくらんでるのかしら?」

「…なにも」         ・・・

「本当に?じゃあ、何で魔王様に譲ったのかしら?」

「お前に答える必要はない」


 リズは立ち止まり、自分の前から歩き去るエドウィンの背を見てニヤリと笑った。


 ・・・・

「穢れた血だからかしら?」


 そう言った刹那、リズはエドウィンに首を捕まれそのまま壁に叩きつけられた。


「…!」


 すごい力で首を絞められる。

 エドウィンの目を見れば殺意でギラついていた。


「口を慎め」


 少しでも空気を吸い込もうと口を開いて喘ぐリズ。


「う…あっ…」

「その口が聞けぬように殺してやる…!」


 左手で首を絞めたまま、右手で鎌を出すと構える。


「死ね!!」


 エドウィンはそう叫んで、リズを地面に叩きつけると鎌を振り下げた。

 が、鎌は何かに邪魔されて振り下げることが出来ない。


「エドウィン様、いけません」


 背後で聞こえる声。

 顔を見なくても誰だかわかる。

 オルガだ。

 エドウィンは肩の力を抜くと鎌を消し去った。


「失せろ」


 必死に空気を吸うリズにそう吐き捨てるとオルガを見ることもせずにその場から立ち去った。


「げほ…。はー、死ぬかと思ったぁー。ありがとう、オルガ」


 呼吸が整ったのか、立ち上がると笑顔を浮かべるリズにオルガはエドウィンと同じように冷ややかに見つめる。


「僕は貴女を助けたんじゃない。…エドウィン様の為です」


 オルガはリズに一礼をすると、エドウィンとは反対の方へと歩いていく。

 リズは一人残されると、楽しそうに笑い声をあげる。


「本当に二人とも面白いー!さて、これからどうなるかしらね?…エドウィンの後追いかけなきゃ」


 リズは全く懲りてない様子でエドウィンを追いかける。

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