罪
シャロン達と見張りを交換したアンリは眠そうに眼を擦ると、伸びをした。
隣で馬の手綱を握るシエラも欠伸をしながらため息をこぼした。
「早くリラースタンに着かねぇーかな。見張りとか気にせずおもいっきり寝たい」
「同感。旅してからあんまり寝てないし」
アンリも同意すると欠伸を噛み殺す。
「旅は楽しいか?アンリ」
シエラの言葉にアンリは頷く。
「楽しい。いろんな場所を見られるし、俺の事を知らない人に会えるから」
アンリはそう言って笑った。
「て、言ってもまだシエラ達にしか会ってないけどな」
「これからもっといろんな奴に会えるさ。リラースタンも大きな街だし、向こうに着いたら案内してやるよ。シャロンとチコも誘おうぜ。きっと楽しいぜ」
シエラの提案にアンリの表情が曇る。
「俺がいない方がいいかも。俺は買い物しないといけないし」
「…シャロンに遠慮してんのか?」
「そんなことは無いけど…」
「嘘をつけ、“顔に遠慮してます”って書いてあるぞ?お前ら一緒に旅してるのに仲悪いよな。なんか理由でもあんのか?」
「…」
アンリは黙り込み、月明かりが照らすリラースタンに繋がる道を眺めた。
どのくらいの時間が流れたのだろうか。
シエラが痺れを切らして口を開いた。
「悪い、言いにくいなら言わなくていい。俺が無神経だったな」
「いや、そうじゃなくて考えてたんだ。言うべきかどうかを。言ったらシエラに嫌われそうで怖いんだ」
アンリの言葉にシエラが大袈裟に肩を竦めた。
「俺ってそんなに酷い奴に見えるか?お前に何かあったとしても嫌いになんかならねーよ」
アンリは苦笑すると頷いた。
「そうだな。シエラは優しいからきっと嫌いにならないかもな…」
アンリはそれから少し考えた後、ようやく話始めた。
父親の事、村人達の事、シャロンの事、二人の呪いの事。
全てを話した。
「それで、シャロンはお前を避けてるって訳か。なるほどな…。村人たちも辛かっただろうけど、お前も辛かったよな…。よく村から逃げださなかったな。俺なら逃げてる」
自分以外全員敵の村なら真っ先に逃げてる。
アンリは首を横に振った。
「逃げるなんて、考えなかった。ただ耐えるだけで精一杯だったし。それに罪も償わなきゃいけなかったし」
「罪?」
「そう、父親の罪は俺の罪。だから、罪を償わないと。村人を恨まなかったって言ったら嘘になるけど、今はどうしたら罪を償えるんだろうって考えてる」
アンリはため息をついてシエラの顔を見て自嘲気味に笑った。
「で、罪を償う第一歩として守護者になりたかったんだ。一人でも多くの人を助けることができたら罪が軽くなるような気がして」